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分析9一部データはDBと連動

ロボット基盤モデル勢力図

π、GR00T、Gemini Robotics、Helix、GO-1。誰が重みを公開し、誰が囲い込むのか。ライセンスと配布形態で4つの陣営に分けて読む。

ロボット基盤モデルの勢力図は、性能ではなく重みの配りかたで分けると見通しがよくなる。 誰でもダウンロードできるモデル、APIでしか触れないモデル、自社ロボットの中にしか存在しないモデル。 この違いが、そのままロボットメーカーの戦略の選択肢を決めている。

23
本紙DBの登録モデル数
15
重みが公開されているもの
7
API提供・自社限定
20,854時間
GR00T N1.7の一人称動画学習量

登録数は本紙AIモデルDBの現在値(自動更新)。学習時間はNVIDIA[3]

四つの陣営

1. 重みを公開する — NVIDIA、Physical Intelligence(π0まで)、大学系

NVIDIAのGR00T N1.7は、2026年4月17日に公開された30億パラメータのVLAで、 Cosmos-Reason2-2Bをバックボーンに32層のDiTで低レベル制御を出力する。 重みはHugging Face、コードはGitHubにあり、商用利用が可能なライセンスで配布されている[3]。 Physical Intelligenceもπ0のコードと重みをopenpiとして公開している[2,5]。 OpenVLA、Octo、SmolVLA、RDT-1B、Diffusion Policyといった大学・コミュニティ発のモデルもこの陣営に属する。

この陣営が存在することの意味は大きい。ロボットメーカーは、自前でモデルを一から学習しなくても、 公開された重みを自社ハードにファインチューニングして製品化できる。日本のスタートアップの多くが取れる現実的な戦略は、いまのところこれである。

2. APIで貸す — Google DeepMind

Gemini Roboticsは重みを配らず、モデルへのアクセスを提供する形を取る。 オンデバイス版も発表されており、ネットワークに依存せずローカルで動く構成が示されている[7]。 検索やクラウドで確立した「モデルは自社が持ち、能力だけを貸す」という構造を、そのままロボットに持ち込んだ形だ。

3. 自社ロボットに閉じる — Figure、そしてπ0.5以降

FigureのHelixは自社ヒューマノイド専用で、外部への配布はない。 注目すべきは、Physical Intelligenceも新しい世代では公開範囲を絞り始めていることだ。 π0とπ0.5はopenpiに重みが置かれている[2,6]一方、 2026年4月のπ0.7は公式ブログに重み・コードの公開に関する記述がなく、論文へのリンクと問い合わせ先だけが示されている[1]。 「最新は出さず、一世代前を公開する」という、言語モデルの世界で見慣れた形に近づいている。

4. 一部公開 — 中国勢

AgiBotのGO-1は一部が公開されている。ハードウェアの量産で先行する中国勢が、 モデル側でどこまで開くかは、2026年後半の焦点のひとつである。

登録モデル一覧(自動更新)

以下は本紙AIモデルDBの登録内容をそのまま表示している。 陣営の割り当てのみ編集部が付与した。

公開モデル開発種別配布形態
2026年4月NVIDIA Isaac GR00T N1.7NVIDIAVLA・ヒューマノイド基盤(推論強化・指制御・商用可)重み公開
2026年4月Physical Intelligence π0.7Physical Intelligence汎用VLA(操作可能・創発的な合成汎化)自社限定
2025年9月Gemini Robotics 1.5Google DeepMindVLA + ER(身体的推論)API提供
2025年6月Meta V-JEPA 2世界モデル(動画自己教師)重み公開
2025年6月SmolVLA小型・省コストVLA重み公開
2025年5月NVIDIA Isaac GR00T N1.5NVIDIAVLA・ヒューマノイド基盤(2段階System1/2)重み公開
2025年4月Physical Intelligence π0.5Physical IntelligenceVLA(オープンワールド汎化)重み公開
2025年3月OpenVLA-OFTUC BerkeleyOpenVLAの微調整強化版重み公開
2025年3月NVIDIA Isaac GR00T N1NVIDIAVLA・ヒューマノイド基盤モデル重み公開
2025年3月Gemini Robotics / Robotics-ERGoogle DeepMindVLA(Gemini基盤・空間推論ER)API提供
2025年3月AgiBot GO-1 (Genie Operator-1)AgiBotViLLA(Vision-Language-Latent-Action)一部公開
2025年2月Figure HelixFigureVLA (humanoid)自社限定
2025年1月NVIDIA CosmosNVIDIA世界基盤モデル(物理シミュ生成)重み公開
2024年12月Google DeepMind Genie 2Google DeepMind世界モデル(操作可能な環境生成)API提供
2024年10月Physical Intelligence π0 (pi-zero)Physical Intelligence汎用VLA(フローマッチング)重み公開
2024年10月RDT-1B (Robotics Diffusion Transformer)Tsinghua University拡散ベース双腕VLA重み公開
2024年6月OpenVLAUC BerkeleyVLA (open)重み公開
2024年5月OctoUC Berkeleygeneralist policy重み公開
2023年10月Open X-Embodiment / RT-XGoogle DeepMind大規模横断データセット+汎用方策重み公開
2023年7月Google RT-2Google DeepMindVLA自社限定
2023年4月LeRobot ACTimitation policy重み公開
2023年3月Diffusion PolicyUC Berkeley拡散モデルによる行動生成重み公開
2022年12月Google RT-1Google DeepMindロボットTransformer(初代)自社限定

競争の土台は、データの共有にある

この分野が短期間で立ち上がった理由のひとつは、データを共有する文化が最初にできたことだ。 2023年のOpen X-Embodimentは、21機関が参加し、22種類のロボットから527のスキル、 16万266のタスクを集めた共同データセットである[4]。 異なるロボットのデータで学習したモデルが、互いの性能を押し上げるという結果が示されたことで、 「一社では集めきれない」という前提が業界の共通認識になった。

ここから先は編集部の評価

勢力図として見たとき、実は「重み公開」陣営を支えているのはNVIDIA一社に近い。 大学発モデルは規模で見劣りし、Physical Intelligenceは最新世代を出していない[1]。 GPUを売る立場のNVIDIAにとって、ロボット基盤モデルを無料で配ることは合理的だが、 それは同社の事業戦略が変われば止まりうるということでもある。

ロボットメーカーの側から見た実務的な結論はこうだ。 いま公開モデルの上に製品を組むのは正しい。ただし、モデル供給者が一社に偏っている前提でリスクを見積もるべきである。 自社の現場データが、供給者を乗り換えられる形で手元に残っているか—— それが、この勢力図のなかで唯一コントロールできる変数になる。

出典

  1. 1.π0.7: a Steerable Model with Emergent Capabilities Physical Intelligence(公式ブログ)、2026-04-16一次情報
  2. 2.Physical-Intelligence/openpi(π0 のコードと重み) GitHub / Physical Intelligence一次情報
  3. 3.NVIDIA Isaac GR00T N1.7: Open Reasoning VLA Model for Humanoid Robots NVIDIA(Hugging Face 公式ブログ)、2026-04-17一次情報
  4. 4.Open X-Embodiment: Robotic Learning Datasets and RT-X Models arXiv:2310.08864、2023-10-13一次情報
  5. 5.π0: A Vision-Language-Action Flow Model for General Robot Control arXiv:2410.24164、2024-10-31一次情報
  6. 6.π0.5: a Vision-Language-Action Model with Open-World Generalization arXiv:2504.16054、2025-04-22一次情報
  7. 7.Google DeepMind introduces on-device Gemini AI model for robots The Robot Report
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