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分析更新 2026/08/31約12分一部データはDBと連動

ロボット基盤モデル勢力図 — GR00T・Gemini Robotics 2・π0.7・Helix 02・GO-1

重みが公開されていても、商用ライセンスが無ければ製品には載せられない。GO-1はCC BY-NC-SA 4.0、Gemini Robotics 2系は層ごとに配布先が違い、7月に出たτ0-VLAはApache 2.0。オープンかクローズドかではなく、重み・コード・商用可否の3軸で31モデルを分解する。

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執筆・編集責任:日本フィジカルAI新聞 編集部

ロボット基盤モデルの勢力図は、性能ではなく重みの配りかたで分けると見通しがよくなる。 誰でもダウンロードできるモデル、APIでしか触れないモデル、自社ロボットの中にしか存在しないモデル。 この違いが、そのままロボットメーカーの戦略の選択肢を決めている。

41件
本紙DBの登録モデル数
16件
重みが公開されているもの
12件
API提供・自社限定
20,854時間
GR00T N1.7の一人称動画学習量

登録数は本紙AIモデルDBの現在値(自動更新)。学習時間はNVIDIA[8]。

四つの陣営 — 「公開か否か」では足りない#

よく使われるオープン/クローズドの二分では、実務の判断に足りない。重みが公開されていても 商用利用が禁じられていれば製品には載せられないし、重みが出ていなくても提携すれば使える場合がある。重みの公開・コードの公開・商用利用の可否を分けて並べると、勢力図はこうなる。

モデル重みコード商用利用ライセンス/配布
GR00T N1.7(NVIDIA)公開公開可商用可のライセンスで配布[8]
π0 / π0.5(Physical Intelligence)公開公開要確認openpi で配布[7,11]
GO-1(AgiBot)公開公開不可CC BY-NC-SA 4.0(非商用)[6]
π0.7(Physical Intelligence)非公開非公開—公式ブログに公開の記述なし[1]
Gemini Robotics 2 系(Google)非公開非公開提携先ER 2 は AI Studio、VLA と On-Device は早期アクセス提携先[2]
Helix 02(Figure)非公開非公開不可自社ヒューマノイド専用[3]

1. 重みを公開し、商用も認める — NVIDIA、大学系

NVIDIAのGR00T N1.7は、2026年4月17日に公開された30億パラメータのVLAで、 Cosmos-Reason2-2Bをバックボーンに32層のDiTで低レベル制御を出力する。 重みはHugging Face、コードはGitHubにあり、商用利用が可能なライセンスで配布されている[8]。 OpenVLA、Octo、SmolVLA、RDT-1B、Diffusion Policyといった大学・コミュニティ発のモデルもこの陣営に属する。 Physical Intelligenceのπ0・π0.5も重みとコードをopenpiに置いている[7,10,11]。

この陣営が存在することの意味は大きい。ロボットメーカーは、自前でモデルを一から学習しなくても、 公開された重みを自社ハードにファインチューニングして製品化できる。日本のスタートアップの多くが取れる現実的な戦略は、いまのところこれである。

2. 重みは出すが、商用では使わせない — AgiBot

AgiBotのGO-1は、重みとコードが公開されている。ただしモデルカードに記載されたライセンスはCC BY-NC-SA 4.0であり、非商用の条件が付く[6]。 「公開されている」と「製品に載せられる」は別だという、この勢力図で最も分かりやすい例である。 研究や評価には自由に使えるが、そのまま出荷はできない。

3. アクセスだけ貸す — Google DeepMind

Googleは2026年7月30日に Gemini Robotics 2 を発表し、系列を三層に分けた[2]。 動作を出力するVLAの Gemini Robotics 2、多段タスクの計画と人との対話を担う推論モデル Gemini Robotics ER 2、そしてロボット本体でローカル実行する Gemini Robotics On-Device 2 である[2]。

配布の仕方も一様ではない。ER 2 は Google AI Studio で利用でき、 Gemini Enterprise Agent Platform ではプライベートプレビューとして提供される。 一方でVLAとOn-Device版は「early-access partners」向けとされている[2]。同じGoogleの中に、開発者が触れる層と、提携先しか触れない層が同居している。 重みを配らない点は共通だが、「APIで貸す」の一言では実態を捉えられない。

4. 出さない — Figure、そしてPhysical Intelligenceの最新世代

FigureのHelix 02は2026年1月27日の公開で、上半身の操作だけでなく歩行・接触・全身の協調までを ひとつの神経系で扱うと説明されている。公式は「A single neural system that controls the full body directly from pixels」と書き、4分間の自律タスクを挙げている[3]。自社ヒューマノイド専用で、 外部への配布はない。

Physical Intelligenceは事情が違う。同社は自社でヒューマノイドを売る会社ではないため、 「自社ロボットに閉じる」という説明は当たらない。実態は世代で線を引いていることだ。 π0とπ0.5はopenpiに重みが置かれている[7,11]一方、 2026年4月のπ0.7は公式ブログに重み・コードの公開に関する記述がなく、論文へのリンクと問い合わせ先だけが示されている[1]。 「最新は出さず、一世代前を公開する」という、言語モデルの世界で見慣れた形に近づいている。

5. どちらとも言えない — Skild、1X、ByteDance

この分類に入れられない勢力がある。Skild AIの Skild Brain は 「any robot, any task, one brain」を掲げるomni-bodiedな基盤モデルで、 2026年3月にABB Robotics、Universal Robots、NVIDIAとの提携を発表している[5]。 1XのRedwood AIは、自社ヒューマノイドNEO向けに移動と操作を同一モデルで扱う。 ByteDance Seedの GR-3 は双腕・長期タスクを扱い、少量の人間の軌跡データで ファインチューニングできるとされる。

いずれも重みとコードの扱いを公式に明示していない。 本紙は分からないものを「公開」にも「非公開」にも入れない方針を取り、 一覧でもバッジを付けていない。勢力図を描くうえで、この空白自体が現在地である。 なお日本語圏では、Fourierの介護向けヒューマノイド「GR-3」と名称が衝突する点に注意が要る。 両者は別物である。

登録モデル一覧(自動更新)#

以下は本紙AIモデルDBの登録内容をそのまま表示している。 陣営の割り当てのみ編集部が付与した。

公開モデル開発種別配布形態
2026年7月Gemini Robotics 2Google DeepMindVLAAPI提供
2026年7月Gemini Robotics ER 2Google DeepMindVLM (embodied reasoning)API提供
2026年7月Gemini Robotics On-Device 2Google DeepMindVLA (オンデバイス)自社限定
2026年7月τ0-VLA—VLA (階層型+世界モデル)重み公開
2026年4月NVIDIA Isaac GR00T N1.7NVIDIAVLA・ヒューマノイド基盤(推論強化・指制御・商用可)重み公開
2026年4月Physical Intelligence π0.7Physical Intelligence汎用VLA(操作可能・創発的な合成汎化)自社限定
2026年3月Skild Brain—VLA (omni-bodied)—
2026年1月Figure Helix 02FigureVLA (全身)自社限定
2025年11月Physical Intelligence π*0.6—VLA・経験からの改善—
2025年9月Gemini Robotics 1.5Google DeepMindVLA + ER(身体的推論)API提供
2025年7月ByteDance GR-3ByteDance SeedVLA (双腕・移動)—
2025年6月Meta V-JEPA 2—世界モデル(動画自己教師)重み公開
2025年6月SmolVLA—小型・省コストVLA重み公開
2025年5月NVIDIA Isaac GR00T N1.5NVIDIAVLA・ヒューマノイド基盤(2段階System1/2)重み公開
2025年4月Physical Intelligence π0.5Physical IntelligenceVLA(オープンワールド汎化)重み公開
2025年3月OpenVLA-OFTUC BerkeleyOpenVLAの微調整強化版重み公開
2025年3月NVIDIA Isaac GR00T N1NVIDIAVLA・ヒューマノイド基盤モデル重み公開
2025年3月Gemini Robotics / Robotics-ERGoogle DeepMindVLA(Gemini基盤・空間推論ER)API提供
2025年3月AgiBot GO-1 (Genie Operator-1)AgiBotViLLA(Vision-Language-Latent-Action)重み公開/非商用
2025年2月Figure HelixFigureVLA (humanoid)自社限定
2025年2月Physical Intelligence π0-FAST—自己回帰VLA—
2025年1月NVIDIA CosmosNVIDIA世界基盤モデル(物理シミュ生成)重み公開
2024年12月Google DeepMind Genie 2Google DeepMind世界モデル(操作可能な環境生成)API提供
2024年10月Physical Intelligence π0 (pi-zero)Physical Intelligence汎用VLA(フローマッチング)重み公開
2024年10月RDT-1B (Robotics Diffusion Transformer)Tsinghua University拡散ベース双腕VLA重み公開
2024年6月OpenVLAUC BerkeleyVLA (open)重み公開
2024年5月OctoUC Berkeleygeneralist policy重み公開
2023年10月Open X-Embodiment / RT-XGoogle DeepMind大規模横断データセット+汎用方策重み公開
2023年7月Google RT-2Google DeepMindVLA自社限定
2023年4月LeRobot ACT—imitation policy重み公開
2023年3月Diffusion PolicyUC Berkeley拡散モデルによる行動生成重み公開
2022年12月Google RT-1Google DeepMindロボットTransformer(初代)自社限定
—1X Redwood AI1XVLA (移動+操作)自社限定
—GigaBrain 0.7—VLA—
—LingBot-VLA—VLA—
—LingBot-VLA 2.0—VLA・全身操作—
—MolmoAct2 SO-100/101—VLA(機体別調整)—
—MolmoAct 7B-D—VLA・行動推論—
—NVIDIA Isaac GR00T N1.6—VLA—
—RynnBrain 1.1 2B—身体性VLM・空間推論—
—X-VLA 0.9B—VLA—

競争の土台は、データの共有にある#

この分野が短期間で立ち上がった理由のひとつは、データを共有する文化が最初にできたことだ。 2023年のOpen X-Embodimentは、21機関が参加し、22種類のロボットから527のスキル、 16万266のタスクを集めた共同データセットである[9]。 異なるロボットのデータで学習したモデルが、互いの性能を押し上げるという結果が示されたことで、 「一社では集めきれない」という前提が業界の共通認識になった。

ここから先は編集部の評価

勢力図として見たとき、「最新世代・大規模・商用利用可」を同時に満たす公開モデルは、 長らくNVIDIAのGR00Tがほぼ唯一だった。重みが公開されたモデル自体は少なくない—— GO-1もπ0.5もSmolVLAもある。だが GO-1 は非商用ライセンスで製品に載せられず[6]、 Physical Intelligenceは最新のπ0.7を出していない[1]。 条件を三つ重ねた瞬間に、選択肢は急に細る。重みが公開されたモデル自体は少なくない——GO-1もπ0.5もSmolVLAもある。 だが GO-1 は非商用ライセンスで製品に載せられず[6]、 Physical Intelligenceは最新のπ0.7を出していない[1]。 条件を三つ重ねた瞬間に、選択肢は急に細る。 GPUを売る立場のNVIDIAにとって、ロボット基盤モデルを無料で配ることは合理的だが、 それは同社の事業戦略が変われば止まりうるということでもある。

ただしこの構図は2026年7月に崩れ始めた。sii-researchが公開したτ0-VLAは、 40,115時間の異種実世界データで学習した階層型モデルで、コードと重みをApache 2.0で公開している[4]。 非商用でも提携限定でもない、条件を三つとも満たす二例目である。 単独供給への依存を心配する側にとって、選択肢が一つ増えたことの意味は小さくない。

ロボットメーカーの側から見た実務的な結論はこうだ。 いま公開モデルの上に製品を組むのは正しい。ただし、モデル供給者が一社に偏っている前提でリスクを見積もるべきである。 自社の現場データが、供給者を乗り換えられる形で手元に残っているか—— それが、この勢力図のなかで唯一コントロールできる変数になる。

この図に、2026年から日本が入ってくる

ここまでの勢力図に日本の名前は出てこない。それは2026年前半までの事実である。 ただし経済産業省のFRONTiaプロジェクトが2026年度だけで約3,873億円、 5年で最大1兆円規模の投資を始め[12]、 開発を担うNoetra株式会社にはソニーグループ・ソフトバンク・日本電気・本田技研工業を中核に 計44社が出資している[13]。 2028年6月には約27,500基のNVIDIA Rubin GPUで計算基盤を稼働させる計画である[13]。

ただし本稿の分類軸——重みをどう配るか——で言えば、 Noetraはまだ位置づけられない。モデルが出ていないからだ。 公開するのか、APIで貸すのか、参加企業に限定するのか。 そこが決まったとき初めて、この勢力図に日本の列が加わる。 経緯はNoetraと国家プロジェクトFRONTiaにまとめた。

出典

  1. 1.π0.7: a Steerable Model with Emergent Capabilities — Physical Intelligence(公式ブログ)、2026-04-16一次情報
  2. 2.Gemini Robotics 2 brings whole body intelligence to robots — Google DeepMind(公式ブログ)、2026-07-30一次情報
  3. 3.Introducing Helix 02: Full-Body Autonomy — Figure AI(公式)、2026-01-27一次情報
  4. 4.τ0-VLA: a Hierarchical Robot Foundation Model with World-Model-Guided Test-Time Computation — sii-research(GitHub)、2026-07-27一次情報
  5. 5.The Reindustrial Revolution: Partnering with ABB Robotics, Universal Robots, and NVIDIA — Skild AI(公式ブログ)、2026-03-19一次情報
  6. 6.agibot-world/GO-1(モデルカード。ライセンス表記) — Hugging Face / AgiBot一次情報
  7. 7.Physical-Intelligence/openpi(π0 のコードと重み) — GitHub / Physical Intelligence一次情報
  8. 8.NVIDIA Isaac GR00T N1.7: Open Reasoning VLA Model for Humanoid Robots — NVIDIA(Hugging Face 公式ブログ)、2026-04-17一次情報
  9. 9.Open X-Embodiment: Robotic Learning Datasets and RT-X Models — arXiv:2310.08864、2023-10-13一次情報
  10. 10.π0: A Vision-Language-Action Flow Model for General Robot Control — arXiv:2410.24164、2024-10-31一次情報
  11. 11.π0.5: a Vision-Language-Action Model with Open-World Generalization — arXiv:2504.16054、2025-04-22一次情報
  12. 12.フィジカルAI向けに経産省が3873億円投資、Noetraなどから成るFRONTiaプロジェクトが始動 — 日経Robotics、2026-08-10
  13. 13.国産マルチモーダル基盤モデルの開発に向けて本格始動 — ソフトバンク(公式プレスリリース)、2026-07-16一次情報
  14. 14.Google DeepMind introduces on-device Gemini AI model for robots — The Robot Report
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