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MELFAとは — 三菱電機の産業用ロボットを公式カタログで読む

MELFAは三菱電機の産業用・協働ロボットのブランド。RV-FR/RH-FRH/CR/ASSISTAの全機種仕様を公式カタログから並べ、型番の読み方、導入時に見るべき5点、そして三菱電機がAIをどこに入れているかを整理する。

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MELFA(メルファ)は三菱電機の産業用・協働ロボットのブランド名である。 フィジカルAIの話題はヒューマノイドと基盤モデルに集まるが、 日本の工場で実際に物を動かしているのは、こうした垂直多関節ロボットとスカラロボットだ。 新しい制御方式が降りていく先を知るために、公式カタログに書かれた数値だけを使って MELFAのラインアップと、三菱電機がAIをどこに入れているかを整理する。

3〜80kg
垂直多関節(RV-FR)の可搬質量レンジ
±0.02mm
RV-2/4/7FRの位置繰り返し精度
5.5kg
協働ロボット ASSISTA の最大可搬質量
910mm
ASSISTA の最大リーチ径

いずれも三菱電機のカタログ記載値[1,2]

MELFAとは何か

MELFAは、三菱電機が展開する産業用ロボットのブランドである[5]。 1つの機種名ではなく、垂直多関節ロボット・水平多関節ロボット(スカラ)・協働ロボットを含む 製品群全体の呼び名で、シーケンサやサーボモータといった同社のFA機器と 組み合わせて使うことを前提に設計されている。 カタログでも「シーケンサ、GOT、サーボモータなど、当社FA機器との高い親和性」が FRシリーズの特長として挙げられている[1]

ここが、ロボット単体の性能で選ばれることの多い他社製品との性格の違いになる。 MELFAを検討する場面は、多くの場合「三菱電機のFA機器で構成された生産ラインに、 ロボットを足す」という文脈にある。

ラインアップは大きく3系統

現行のカタログは、性格の違う3つの系統で構成されている[1]

系統シリーズカタログでの位置づけ
FRシリーズRV-FR(垂直多関節)
RH-FRH(水平多関節)
フラッグシップ。「業界最高クラスの速度・精度と豊富な知能化オプション」。新制御 MELFA High Drive に対応
CRシリーズRV-CR(垂直多関節)
RH-CRH(水平多関節)
「実用性を追求したシンプルなロボット」。コストパフォーマンス重視、単純な搬送作業向け
ASSISTARV-5AS-D協働ロボット。接触を検知して自動停止(ISO/TS 15066準拠)。ダイレクトティーチングに対応

型番の読み方

カタログの並びからは、型番の付け方に一貫した規則があることが読み取れる。RV が垂直多関節、RH が水平多関節。続く数字が可搬質量(kg)の目安で、L が付くとロングアーム(同じ可搬質量でリーチが伸びる)、LL はさらに長い。FR / CR がシリーズ名にあたる。 たとえば RV-7FRL は「垂直多関節・可搬7kg・FRシリーズ・ロングアーム」となる。

RV-FRシリーズ(垂直多関節)の全機種仕様

6軸の垂直多関節ロボット。可搬3kgから80kgまで14の型式がある[1]

形名可搬質量[kg]最大リーチ半径[mm]位置繰り返し精度[mm]本体質量[kg]環境仕様/保護等級
RV-2FR最大3(定格2)504±0.0219標準 IP30
RV-2FRL最大3(定格2)649±0.0221標準 IP30
RV-4FR最大4(定格4)514.5±0.0239標準 IP40/オイルミスト IP67/クリーン ISOクラス3
RV-4FRL最大4(定格4)648.7±0.0241同上
RV-7FR最大7(定格7)713.4±0.0265同上
RV-7FRL最大7(定格7)907.7±0.0267同上
RV-7FRLL最大7(定格7)1503±0.02130同上
RV-13FR最大13(定格12)1094±0.05120同上
RV-13FRL最大13(定格12)1388±0.05130同上
RV-20FR最大20(定格15)1094±0.05120同上
RV-20FRL最大20(定格15)1388±0.05130同上
RV-35FR352100±0.06560手首IP67相当・本体IP65相当/オイルミスト時 全身IP67相当
RV-50FR502100±0.06560同上
RV-80FR802100±0.06560同上

可搬質量の「最大」はメカニカルインタフェースを下向き(鉛直に対し±10°)にした制限下の値、 と注記されている。斜めや横向きに使う場合はこの値では判断できない[1]

RH-FRHシリーズ(水平多関節・スカラ)

4軸のスカラロボット。上から下ろして置く動作に特化しており、 カタログは「高速動作が要求される食品・薬品の大量生産」を用途に挙げている[1,5]。 Zストロークは機種により150〜450mmの範囲でバリエーションがある。

形名可搬質量[kg]最大リーチ半径[mm]繰り返し精度 X-Y合成[mm]本体質量[kg]
RH-3FRH3515/12C最大3(定格1)350±0.01029
RH-3FRH4515/12C最大3(定格1)450±0.01029
RH-3FRH5515/12C最大3(定格1)550±0.01232
RH-6FRH35XX最大6(定格3)350±0.01036
RH-6FRH45XX最大6(定格3)450±0.01036
RH-6FRH55XX最大6(定格3)550±0.01237
RH-12FRH55XX最大12(定格3)550±0.01265
RH-12FRH70XX最大12(定格3)700±0.01567
RH-12FRH85XX最大12(定格3)850±0.01569

このほか RH-20FRH(可搬20kg、リーチ850/1000mm)と、天吊り用の RH-3FRHR(可搬3kg、リーチ350mm)がある[1]。 スカラは可搬質量の「定格」と「最大」の差が大きい(RH-12FRH は最大12kg・定格3kg)。 連続運転で使えるのは定格側であることに注意がいる。

CRシリーズ(実用重視)

カタログが「コストパフォーマンスに優れる、実用性を追求したモデル」と位置づける系統[1]。 FRシリーズと違い、可搬質量の定格と最大の開きが大きい機種が多い。

形名可搬質量[kg]最大リーチ[mm]Zストローク本体質量[kg]環境仕様/保護等級
RV-8CRL(垂直)最大8(定格7)93141オイルミスト(IP65)
RV-12CRL(垂直)最大12(定格12)1504110オイルミスト(IP65)
RH-3CRH4018(水平)最大3(定格1)400180mm14標準(IP20)
RH-6CRH6020/7020(水平)最大6(定格2)600/700200mm17/18標準(IP20)
RH-10CRH60/70/80XX(水平)最大10(定格5)600/700/800200/300mm20/21標準(IP20)
RH-20CRH8542/10042(水平)最大20(定格10)850/1000420mm54/57標準(IP20)

この表がCRシリーズの性格をよく表している。RH-3CRH は最大3kgでも定格は1kg、 RH-6CRH は最大6kgで定格2kg[4]。連続して回す前提なら定格側で設計しなければならず、 カタログ表紙の数字と実際に運べる質量は3倍違うことになる。

位置繰り返し精度は RV-8CRL が ±0.02mm、RV-12CRL が ±0.04mm[4]。 同じ垂直多関節でも、リーチが1504mmまで伸びる RV-12CRL は精度が倍粗くなる。 また垂直のCRシリーズは標準でIP65(オイルミスト)に対応する一方、 水平のCRHシリーズは標準IP20。同じ「実用重視」の系統でも防塵防滴の前提が違う[1,4]

協働ロボット ASSISTA

RV-5AS-D の1機種。人と同じ空間で柵なしに動かすことを前提にした6軸ロボットで、 カタログ記載の主要諸元は次のとおり[2]

項目RV-5AS-D
動作自由度6軸
可搬質量定格 5kg/最大 5.5kg(メカニカルインタフェース下向き±10°以内)
最大リーチ径(P点)910mm
位置繰り返し精度±0.03mm
本体質量32kg
最大合成速度高速運転 1,000mm/s / 協働運転(標準) 250mm/s / 協働運転(低速) 50mm/s
周囲温度0〜40℃
環境仕様オイルミスト(IP54)
供給エア圧力0.54MPa

注目すべきは速度の3段構えである。高速運転では1,000mm/s出るが、 人と協働する運転では標準250mm/s、低速では50mm/sに制限される[2]。 協働ロボットは「柵がいらないぶん遅い」という原理的なトレードオフを抱えており、 カタログの最高速度だけを見てタクトタイムを見積もると必ず外れる。

安全性能

ASSISTAが適合を掲げる規格は EN ISO 10218-1:2011、ISO/TS 15066:2016、EN ISO 13849-1:2015、 IEC 61800-5-1:2007、EN 61800-5-2:2017。安全レベルは SIL2(IEC 61508:2010)、 カテゴリ3・PL d(EN ISO 13849-1:2015)で、MTTFd=24年、DC=90%、PFH=3.42×10⁻⁷[1/時間]と記載されている[2]

三菱電機はAIをどこに入れているか

MELFAでAIが使われているのは、動作そのものを学習させる部分ではなく、これまで人が手で詰めていた調整パラメータを自動で決める部分である。 「MELFA Smart Plus」というオプション(コントローラにカードを挿して機能を有効化する方式)に、 次の機能がまとめられている[3]

機能カタログでの説明
力覚センサ拡張機能力覚動作の最適なパラメータをAIが自動調整する。嵌合・位相合わせ挿入・接触検知といった動作を対象とする
3Dビジョン認識パラメータ自動調整AI専門知識が必要な難易度の高いセンサパラメータの調整作業を自動化する
2Dビジョンセンサ拡張機能ビジョンアライメントの容易化、二次元ビジョンの立ち上げの容易化
予知保全機能/予防保全機能駆動波形から故障に起因する特徴的な波形を高速に抽出する独自のAI技術

これらは三菱電機のAI技術ブランド「Maisart」として括られている[3]。 加えてラインアップカタログには、ティーチング不要で経路をリアルタイム生成する RapidPlan、 設計段階で動作を最適化する MELSOFT Gemini + クラウドAI(Resolver)、 そしてROS 2 Driver への対応が記載されている[1]

速度・精度の側では MELFA High Drive という制御が入っており、カタログは 「ON時の500mm/sの軌跡誤差と、OFF時の200mm/sの軌跡誤差はほぼ同一」と説明している[1]。 軌道精度を落とさずに速度を上げられる、という主張である。

導入を検討するときにカタログのどこを見るか

「MELFA 導入事例」を探している段階の読者に向けて、仕様表の読み方を挙げておく。 事例の写真より、この5点のほうが導入可否を早く判定できる。

  • 可搬質量は「定格」を見る。RH-12FRH は最大12kg・定格3kg のように4倍の開きがある[1]。 さらにエンドエフェクタの質量はここから引かれる。
  • リーチは最大リーチ半径であって作業範囲ではない。実際に届く範囲は関節の可動域と 干渉で決まる。同じ可搬質量で L 付きの型式があるかを先に確認する。
  • 環境仕様を最初に絞る。切削油があるならオイルミスト仕様(IP67)、 クリーンルームならISOクラス3対応の型式に限られる。RV-2FR は標準IP30、 水平のCRHシリーズは標準IP20と、系統によって前提が違う[1]
  • 繰り返し精度と要求精度を突き合わせる。RV-2/4/7FR は ±0.02mm、 RV-13/20FR は ±0.05mm、RV-35/50/80FR は ±0.06mm[1]。大型ほど精度は落ちる。
  • 力覚センサが要る作業かを判断する。嵌合や挿入のように押し当てが伴う作業なら、 位置制御だけでは組み上がらない。Smart Plus の力覚拡張機能が対象にしているのはこの領域である[3]

機種別・オプション別のカタログはすべて三菱電機のサイトから無償でダウンロードできる[6]。 価格は公表されていないため、本稿では扱っていない。

ここから先は編集部の評価

本紙の見方

1. 学習は「動作」ではなく「段取り」から入っている

MELFAのAI機能は、力覚パラメータの自動調整、ビジョンの自動調整、予知保全に集中している。 つまりロボットの動き方を学習させるのではなく、人が調整に費やしていた時間を削る方向だ。 これは保守的に見えるが、産業用ロボットに求められるのが再現性と説明可能性であることを考えれば、 合理的な入り方でもある。学習した方策が「なぜその動きをしたか」を説明できないままでは、 止まったときに誰も復旧できない。

2. ROS 2 対応が意味するもの

ラインアップカタログに ROS 2 Driver 対応が明記されていることは見逃せない[1]VLAのような学習ベースの方策の多くは、研究段階ではROSの上で動いている。産業用ロボットの側がROS 2の口を開けたということは、 研究側の成果を実機に載せる経路が、少なくとも配線としては用意されたということだ。Sim2Realの出口として国産の産業用アームが選べるかどうかは、 日本の研究環境にとって小さくない条件になる。

3. フィジカルAIが置き換えるのはMELFAではない

RV-2FRの繰り返し精度±0.02mm、ASSISTAの安全レベルSIL2/PL d といった数字は、 学習ベースの制御がすぐに肩を並べられるものではない。同じ物を同じ位置で扱う工程で、 これらの機体が置き換わる理由は当面ない。フィジカルAIの出番は、品目や置き方が毎回変わるためにティーチングが割に合わなかった工程であり、 そこはこれまで自動化の対象にすらなっていなかった領域だ。 MELFAの仕様表を読むことは、その境界線がどこにあるかを確かめる作業でもある。

出典

  1. 1.三菱電機 産業用・協働ロボット MELFAラインアップのご紹介(カタログ L(名)09094) 三菱電機株式会社一次情報
  2. 2.三菱電機 協働ロボット MELFA ASSISTA カタログ(仕様・安全性能) 三菱電機株式会社一次情報
  3. 3.三菱電機 産業用ロボット 機能拡張オプション(MELFA Smart Plus)カタログ 三菱電機株式会社一次情報
  4. 4.三菱電機 産業用ロボット MELFA CRシリーズ カタログ(RV-CR/RH-CRH 仕様) 三菱電機株式会社一次情報
  5. 5.産業用ロボット MELFA 製品情報 三菱電機FA(公式サイト)一次情報
  6. 6.産業用・協働ロボット MELFA カタログ ダウンロード一覧 三菱電機FA(公式サイト)一次情報
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