IFR統計で読むロボット2024 — 世界54万台、日本は稼働2位で新設は減少
国際ロボット連盟の World Robotics 2025 によれば、2024年の新規設置は542,076台、稼働台数は466万台。中国が設置の54%を占め、日本は稼働2位・密度4位ながら新規設置は4%減。公表資料の数字だけで現在地を確かめる。
ヒューマノイドの動画は毎週流れてくるが、世界の工場に実際に何台のロボットが置かれているかを 答えられる人は少ない。国際ロボット連盟(IFR)の年次統計 World Robotics 2025 によれば、 2024年の新規設置は542,076台、稼働台数は4,663,698台[1]。 フィジカルAIが降りていく先はこの数字の上であり、日本はそこで 「稼働台数2位・ロボット密度4位、しかし新規設置は減少」という位置にいる。 公表資料に書かれた数字だけを並べて、現在地を確かめる。
設置・稼働台数は World Robotics 2025[1]、密度は IFR プレスリリース(2026年4月8日)[2,3]。
2024年の世界: 史上2番目の設置台数で高止まり
2024年の産業用ロボットの新規設置は542,076台。過去最高は2022年の552,946台で、 2023年は前年比2%減の541,302台だった。つまり直近3年は50万台の水準で高止まりしている状態にある[1]。 年間50万台を初めて超えたのは2021年で、それ以前は30万台前後だった。
稼働台数(operational stock)は4,663,698台で前年比9%増。2019年以降は年平均11%で増え続けている[1]。 新規設置が横ばいでも、廃棄より導入が上回る限り稼働台数は積み上がる。 フィジカルAIの文脈で重要なのは後者で、すでに466万台の産業用ロボットが世界の工場で動いているという土台の上に、新しい制御方式が乗っていくことになる。
地域: アジアが74%、欧州と米州は減少
| 地域 | 2024年の設置台数 | 前年比 | 備考 |
|---|---|---|---|
| アジア(豪州・NZ含む) | 401,665台 | +5% | 世界の新規設置の74%(2023年は70%) |
| 欧州 | 85,006台 | −8% | 史上2番目。2023年は92,393台で過去最高 |
| 米州 | 50,077台 | −10% | ピークは2022年の55,880台 |
欧州の内訳はドイツ26,982台(−5%)、イタリア8,783台(−16%)、スペイン5,086台(+1%)。 スペインがフランスを抜いて欧州3位になった。米州は米国34,164台(−9%)、メキシコ5,594台(−4%)、 カナダ3,787台(−12%)[1]。
5カ国で世界の80%
中国・日本・米国・韓国・ドイツの5カ国だけで、世界の設置台数の80%(431,240台)を占める[1]。 フィジカルAIの企業がどこを見て製品を作るかは、この分布から離れられない。
| 国 | 2024年の設置 | 前年比 | 世界シェア | 稼働台数 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 中国 | 295,045台 | +7% | 54% | 2,027,190台(世界の43%) |
| 2 | 日本 | 44,453台 | −4% | 8% | 450,530台(世界の10%) |
| 3 | 米国 | 34,164台 | −9% | 6% | — |
| 4 | 韓国 | 30,596台 | −3% | 6% | — |
| 5 | ドイツ | 26,982台 | −5% | 5% | — |
稼働台数で見ると、中国が2,027,190台で世界の43%を占め、2位の日本(450,530台・10%)の約4.5倍[1,2]。 欧州全体が821,384台、米州が542,464台なので、中国1国で欧州と米州の合計を上回っている。 2013年以降、中国は一貫して世界最大の市場である。
需要産業: 電機・電子が自動車を再逆転
長らく産業用ロボットの投資動向は自動車産業の設備投資が決めていたが、2024年は 電機・電子産業が首位に戻った。差は約2,800台しかない[1]。
目を引くのは金属・機械が前年比16%増の88,777台と過去最高になったことで、 2019年からの年平均成長率は12%。自動車偏重だった構造が崩れ、 一般産業へ広がっている。食品・飲料も14,685台から20,792台へ伸びた。 逆に自動車は126,088台で7%減。内燃機関から電動化への投資は続くものの、 EV需要の鈍化が能力増強の必要性を抑えている、というのがIFRの説明である[1]。
ロボット密度: 日本は世界4位の446台
ロボット密度は「製造業の従業員1万人あたりの稼働台数」で、国の規模を揃えて自動化度を比べる指標。 2026年4月8日のIFRプレスリリースによれば、上位10カ国は次のとおり[2,3]。
韓国が1,220台で突出し、シンガポールが818台で続く。この2国は製造業の従業員数が相対的に少ないため、 密度が高く出やすい構造にある。日本は446台で世界4位、3位ドイツ(449台)とはわずか3台差。 日本の密度は2019年以降、年5%のペースで伸びている[2]。
一方で中国は166台、世界22位・アジア6位にとどまる(前年比17%増)[2]。 設置台数と稼働台数で世界を圧倒しながら密度が低いのは、製造業の従業員数が桁違いに多いためで、中国の自動化にはまだ相当の伸びしろがあることを意味する。 世界平均は132台、EU-27は231台[2,3]。
IFR自身の見通し: 2028年に70万台、日本からの成長寄与は見込まない
IFRは2025年の設置台数を6%増の575,000台と見込み、2028年までに70万台を超えるとしている。 地域別では、アジアが約435,000台で成長を牽引し、北米は約43,500台で横ばい、 欧州は79,000台を下回るところまで落ちると予想する[1]。
日本に関する記述は短く、そして厳しい。「日本や韓国からの意味のある成長の勢いは期待されない」(No relevant growth impetus is expected from Japan or the Republic of Korea)と書かれている[1]。 インドが中国の代替あるいは補完として存在感を増す、という見立ても併記されている。
もう一つ、IFRが繰り返し指摘しているのが中小企業への普及の壁である。 補助金や税制優遇は「すでにロボットを解決策として認識している企業」にしか届かず、 実際のボトルネックは、視覚や工程設計まで含めた周辺技術を担うシステムインテグレータの層の厚さにある—— 政府の支援はこの種のインフラに向けるべきだ、というのがIFRの主張だ[1]。
本紙の見方
この統計を読むと、フィジカルAIをめぐる議論と、自動化が実際に起きている場所の間にある距離が見える。
1. 語られている場所と、動いている場所が違う
報道の量はヒューマノイドに集中しているが、2024年に据え付けられた542,076台の大半は、 従来型の垂直多関節ロボットとスカラロボットである。フィジカルAIが最初に効くのは 新しい機体の登場ではなく、すでに466万台が動いている現場で、これまで人手が残っていた工程だと考えるほうが、 数字とは整合する。金属・機械が16%増で過去最高になったこと、食品・飲料が伸びたことは、 自動車と電機以外の「多品種で置き方が一定しない」現場が動き始めた兆候として読める。
2. 日本の位置は「厚い基盤・細い新規」
日本は稼働台数で世界2位(450,530台)、密度で世界4位(446台)という厚い基盤を持つ。 同時に、新規設置は44,453台で4%減、IFRは今後の成長寄与を見込んでいない。 国内市場が伸びないという前提で、日本のロボット産業がどこに勝ち筋を置くのか—— 輸出か、基盤モデルなどのソフトウェア層か、システムインテグレーション能力の輸出か——が問われる局面にある。 本紙が日本企業の動きを企業DB(日本)で追っているのはこのためだ。
3. ボトルネックはモデルではなくインテグレーション
IFRが「システムインテグレータの層がボトルネック」と明言している点は、 フィジカルAIの事業を考えるうえで見落とせない。汎用性の高いモデルが出れば導入が進む、という筋書きは、 導入を止めているのがモデルの性能である場合にしか成り立たない。実際に止めているのが 工程設計・治具・周辺機器・保守の担い手不足であるなら、そこを埋める仕組みのほうが先に必要になる。
4. 中国の密度166台という数字の意味
世界の設置台数の54%を占めながら、密度では世界22位。これは中国市場が飽和からほど遠いことを示す。 中国国内でのロボット国産化率が上がり続けるとIFRが予想していることと合わせると、 今後数年の産業用ロボットの数量は中国国内メーカーが取り、 日欧のメーカーは付加価値の高い領域へ押し上げられていく、という圧力が続く。 本紙が中国のロボット企業と量産動向を継続して追う理由もここにある。
出典
- 1.World Robotics 2025 – Industrial Robots, Executive Summary(PDF) — International Federation of Robotics(IFR)統計部 / VDMA Services GmbH、2025一次情報
- 2.欧州、アジア、米州におけるロボット密度の急伸長(日本語プレスリリース・PDF) — 国際ロボット連盟(IFR)、2026-04-08一次情報
- 3.Robot Density Surges in Europe, Asia, and Americas(英語プレスリリース) — International Federation of Robotics(IFR)、2026-04-08一次情報
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