中国QDD関節モジュール主要8社を比較する
峰値1N·mあたりの単価はDAMIAOの1.20ドルからCubeMarsの15.07ドルまで12倍ひらく。だがトルク密度で最上位に立つ機種は、実は減速比48:1でQDDですらない。8社の公式仕様書と流通価格を突き合わせ、減速比・定格トルク密度・通信・入手経路で分解する。
ヒューマノイドの原価のうち、関節モジュールは最大の一項目である。 そして中国には、その関節を単品でカタログ販売しているメーカーが十数社ある。 RobStrideは峰値120N·mの関節を1,199元で売り、CubeMarsは峰値53N·mを798.90ドルで売っている。 同じ「QDD」で括られるこの2つは、トルクあたりの単価で10倍以上ひらいている。 本稿は各社の公式仕様書だけを突き合わせ、その差が何から来ているのかを分解する。
まず「QDD」には規格がない
QDD(Quasi-Direct Drive/準直駆)は、高トルク密度のモータに低い減速比の遊星減速機を組み合わせ、 出力軸から逆に回せる性質(バックドライバビリティ)と、電流からトルクを推定できる性質を残した関節設計を指す。 高価なトルクセンサを省けること、遊星減速機が調和(ハーモニック)減速機のおよそ5分の1のコストで済むことが、 この方式が中国で急速に広がった理由である[28]。
ただし「減速比がいくつ以下ならQDD」という国際規格は存在しない。 メーカーは自社製品を広くQDDと呼ぶ。そこで本紙は、実際のカタログ値をもとに次の3帯に分けて読むことにした。 以降の比較はこの区分に従う。
| 区分 | 減速比 | 性格 | 該当する主な機種 |
|---|---|---|---|
| 狭義のQDD | 6〜10:1 | 逆駆動しやすい。衝撃を関節が吸収する。歩行・跳躍向き | Unitree GO-M8010-6(6.33)[12]、DAMIAO J8009/J10010(9/10)[1]、 RobStride RS03/04/06(9)[7]、CubeMars AK10-9(9)・AKEシリーズ(8)[14,17] |
| QDD寄り | 12〜22:1 | 逆駆動性を一部犠牲にトルクを稼ぐ。腰・肩など高負荷関節向き | ENCOS EC-A13715(12.67)[9]、MyActuator X8-120/X12-320/X15-450(19.61/20/20.25)[4]、 DAMIAO J10422P(22)[2] |
| 高減速 | 28:1以上 | もはやQDDではない。保持力は高いが逆駆動は困難 | MyActuator X2-7(28.17)/X4-36(36)[4]、 DAMIAO J4340(40)/J6248P(48)[1] |
主要8社 — 代表機種の公式値
各社が公表している代表機種を並べる。定格・峰値はいずれもメーカー公式の値で、 公表がない項目は—とした。価格欄はメーカーが公表している建値のみで、販売店の掲示価格は後段で別に扱う。
| メーカー/所在 | 代表機種 | 定格/峰値 | 減速比 | 重量 | 通信 | メーカー建値 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| DAMIAO 達妙/深圳 | DM-J10422P-2EC | 100/400 N·m[2] | 22:1[2] | — | CAN FD 5Mbps[2] | — |
| MyActuator 脈塔/蘇州 | RMD-X15-450 | 145/450 N·m[4] | 20.25:1[4] | 3.50kg[4] | CAN+EtherCAT[4,5] | — |
| ENCOS 因克斯/南京 | EC-A13715-P1-12.67 | —/320 N·m[9] | 12.67:1[9] | 2.5kg[9] | — | — |
| RobStride 霊足時代/北京 | RS04 | 40/120 N·m[7] | 9:1[7] | 1,420g[7] | CAN系[7] | 1,199元[7] |
| Unitree 宇樹/杭州 | M107(H1搭載・非外販) | —/360 N·m[10] | — | — | — | — |
| CubeMars/南昌 | AK10-9 V3.0 KV60 | 18/53 N·m[14] | 9:1[14] | 940g[14] | CAN(servo/MIT)[14] | 798.90ドル[15] |
| SteadyWin | GIM10015-10-DE | 25/— N·m[18] | 10:1[18] | 1.5kg[18] | CAN/RS485[18] | — |
| HighTorque 高擎動力/広州 | HTM-5047 | —/16 N·m[26] | — | — | FDCAN(64バイト)[26] | — |
トルク密度は、減速比とセットでしか意味がない
関節モジュールの比較で最もよく使われる指標が峰値トルク密度(峰値トルク÷重量)である。 だがこの数字は、減速比を上げれば簡単に大きくできる。 それを示す最良の例が、DAMIAOの選型手册にある同一メーカー内の比較だ[1]。
J6248P-2ECは峰値97N·mを628gで出す[1]。 峰値トルク密度は154N·m/kgで、この表のなかで最も高い部類に入る。 しかし減速比は48:1である[1]。トルク密度で最上位に来る機種が、QDDではないという逆転がここで起きている。 逆駆動性を求めて関節を選んだつもりが、保持力型の高減速機を掴んでいたということになりかねない。
同じDAMIAOのJ8009-2EC(9:1)は峰値40N·m/896gで44.6N·m/kg[1]。 減速比を5倍にすると、より軽い筐体で2.4倍のトルクが出る。 これは技術的な優劣ではなく、単に減速比というつまみをどちらに回したかの違いである。 カタログのトルク密度ランキングは、この差を隠してしまう。
順位は「定格」で見ると入れ替わる
峰値トルクは数秒しか出せない値である。腕を上げたまま保持する、上体を支え続けるといった用途で効くのは定格(連続)トルクのほうだ。 公式値がそろっている機種について、本紙が定格トルク密度(定格÷重量)を算出した。
高減速のJ6248Pを除くと、先頭はMyActuatorのX15-450(41.4N·m/kg)である[4]。 峰値トルク密度では128.6N·m/kgで、峰値400N·mを謳うDAMIAOの最上位機に見劣りするように見える機種が、 連続負荷の指標では最上位に来る。X12-320も85/320N·m・2.37kgで35.9N·m/kg[4]と高い。
逆に、狭義QDD(9〜10:1)の機種は定格密度が19〜28N·m/kgの帯に集まる。 これは各社の実力差というより、低い減速比で連続トルクを出そうとすると発熱で頭打ちになるという物理の帰結である。 RobStride RS04が定格を「40/35 N·m @ 50rpm」と2つの値で併記している[7]のは、 この条件依存性を示している。
価格 — 建値と流通価格は別物である
RobStrideは全機種の価格を仕様書に併記して公開している[7]。 これ自体がこの業界では珍しい。
| 機種 | 定格/峰値 | 減速比 | 重量 | 価格 | 峰値1N·mあたり |
|---|---|---|---|---|---|
| RS05 | 1.8/5.5 N·m | 7.75:1 | 191g | 499元 | 90.7元 |
| RS00 | 5/14 N·m | 10:1 | 310g | 598元 | 42.7元 |
| RS02 | 7/17 N·m | 7.75:1 | 380g | 699元 | 41.1元 |
| RS06 | 11/36 N·m | 9:1 | 621g | 849元 | 23.6元 |
| RS03 | 21/60 N·m | 9:1 | 900g | 999元 | 16.7元 |
| RS04 | 40/120 N·m | 9:1 | 1,420g | 1,199元 | 10.0元 |
仕様・価格はいずれもRobStride公式の製品仕様書(2026年7月13日版)[7]。 右端の単価は本紙が価格÷峰値トルクで算出した。IP67仕様のRS02-IP67(490g・999元)も併売されている[7]。
RobStride以外のメーカーは建値を公表していない。 しかし海外の販売店は掲示価格を出しており、そこから実勢をうかがうことはできる。ただしこれはメーカー建値ではなく、輸出マージンを含んだ小売価格である。 土俵を揃えるため、米国の販売店に並んでいる価格だけで比較する。
| 機種 | 峰値 | 掲示価格 | 峰値1N·mあたり | 出所 |
|---|---|---|---|---|
| DAMIAO DM-J10422P-2EC | 400 N·m | 480ドル〜[19] | 1.20ドル | 販売店 |
| DAMIAO DM-J10010-2EC | 150 N·m | 455ドル〜/357ドル[19,23] | 3.03/2.38ドル | 販売店2社 |
| RobStride RS04 | 120 N·m | 320ドル[24] | 2.67ドル | 販売店 |
| DAMIAO DM-J6248P-2EC ※48:1 | 97 N·m | 265ドル〜[19] | 2.73ドル | 販売店 |
| MyActuator RMD-X15-450 | 450 N·m | 1,515ドル[21] | 3.37ドル | 販売店 |
| MyActuator RMD-X12-320 | 320 N·m | 1,090ドル[22] | 3.41ドル | 販売店 |
| ENCOS EC-A13715-P1-12.67 | 320 N·m | 2,250ドル〜[20] | 7.03ドル | 販売店 |
| CubeMars AK10-9 V3.0 | 53 N·m | 798.90ドル[15] | 15.07ドル | メーカー公式 |
| Unitree GO-M8010-6 | 23.7 N·m | 369ドル[11] | 15.57ドル | メーカー公式 |
単価は本紙が掲示価格÷峰値トルクで算出した。SteadyWin GIM10015-10-DEはAlibabaに279〜329ドル(最低発注2個)で出品されているが、 峰値トルクが非公表のため単価を出せない[25]。
この表から3つのことが読める。第一に、CubeMarsとUnitreeが突出して高い。 峰値1N·mあたり15ドル台で、DAMIAOの最上位機の12倍にあたる。 両社とも小トルク機であることを差し引いても、この差は大きい。
第二に、トルクが大きい機種ほど単価が下がる。 DAMIAOの社内で見ると、DM-J4310-2EC(峰値7N·m・125ドル)は17.9ドル/N·mだが、 DM-J10422P-2EC(峰値400N·m・480ドル)は1.20ドル/N·mになる[19]。小型関節ほどトルク単価が高くつくという構造は、手首や指の設計で効いてくる。
第三に、そして本稿の当初の見立てを修正する必要があるのだが、輸出価格で並べるとRobStrideは最安値ではない。 RS04は中国国内建値1,199元(1ドル=7.2元と置けば約167ドル)に対し、米国の販売店では320ドル[24]。 約1.9倍になっている。同じ土俵で見ると、DAMIAOのDM-J10422P-2ECが1.20ドル/N·mでRS04の2.67ドル/N·mを下回る。RobStrideの価格優位は中国国内で最も強く、輸出の段階でDAMIAOに逆転される。
通信 — CAN FDとEtherCATが分岐点になる
多自由度機では、トルクよりも先に通信が詰まる。 古典的なCAN(1Mbps・ペイロード8バイト)が運べるのは、ビットスタッフィングを含めて毎秒およそ7,000〜8,000フレームである。 30関節の機体を1kHzで回すと、指令と帰還だけで毎秒6万フレームが必要になる。1本のCANバスではまったく足りず、バスを何本にも分けることになる。 配線とコネクタが増え、故障点も増える。
※この試算は本紙による概算で、フレーム長・スタッフビット・実装により変動する。
この制約に対する各社の答えが分かれている。 DAMIAOはCAN FDに対応し、最大ボーレート5Mbpsを公称する[2]。 データフェーズの高速化とペイロード64バイト化は、この問題を正面から緩める。 DAMIAOは下位機のJ4310やJ4340でもCAN/CAN FDの両対応を明記している[3]。 HighTorqueも同じ方向で、HTM-5047はFDCANでCANと互換を保ちつつデータフレームを64バイトに拡張したと明記する[26]。CAN FDへの移行は、もはや一社の差別化ではなく業界の既定路線になりつつある。
MyActuactorはそもそも別の解を採り、CANに加えてEtherCATを標準の選択肢にしている[4,5]。 同社の型番規則は「RMD-X15-P20-450-E」の形で、末尾のEがEtherCATとCAN BUSの対応を示す[5]。 産業用モーションの世界ではEtherCATが事実上の標準であり、既存のPLCやTwinCAT資産をそのまま使える。 制御精度は0.01度未満、クロスローラベアリングと二重エンコーダを全機種に載せている[4]。
各社の性格
DAMIAO 達妙 — 高トルクと通信で攻める
深圳の達妙科技は、2025年版の選型手册で関節電機9型・分立電機・中空雲台・ハブモータまでを一枚の表にして公開している[1]。 この情報公開の姿勢自体が同社の特徴で、定格・峰値・空載回転数・額定回転数・減速比・寸法・重量・額定電力までが全機種そろっている。 最上位のDM-J10422P-2ECは定格100/峰値400N·m、減速比22:1、48V、空載最高120rpm、二重17bitエンコーダで測位精度±0.03度[2]。 ただし前述のとおり重量は非公表である。
注意すべきは、同社のラインナップが減速比で二系統に分かれていることだ。 6〜10:1の狭義QDD(J6006・J8006・J8009・J10010)と、40〜48:1の高減速機(J4340・J6248P)が同じ表に並んでいる[1]。 型番からは区別できないため、選定時は減速比の列を必ず見る必要がある。
MyActuator 脈塔 — 製品として最も完成している
蘇州脈塔智能科技。X2-7からX15-450まで6機種で、定格2.5〜145N·m、峰値最大450N·m、重量0.26〜3.50kg、電圧24〜72Vをカバーする[4]。 減速比は12.6〜36と幅があり、狭義QDDから高減速まで一社で揃う。 定格トルク密度で首位に立つのは前述のとおりで、連続負荷が問われる肩・腰で有利になる。
製品化の観点で効くのはEtherCAT対応と、SDKまわりの整備である[4,6]。 研究用の一点ものではなく、量産機の部品表に載せることを前提にした作り込みになっている。
ENCOS 因克斯 — 低減速比のまま高トルクを狙う
南京因克斯智能科技。EC-A13715-P1-12.67は二足下肢向けで、峰値320N·m、出力回転数130rpm(48V)、重量2.5kg[9]。 本紙算出の峰値トルク密度は128.0N·m/kgとなり、MyActuator X15-450(128.6N·m/kg)とほぼ並ぶ。 注目すべきはこれを12.67:1という低い減速比で達成している点で、 20:1級の機種と同等のトルク密度を、より逆駆動しやすい構成で出していることになる。 扁平化・駆制御一体設計で、力位混合制御・位置・速度・電流(トルク)・制動の各モードに対応する[9]。
ただし定格トルクを同社は公表しておらず、連続負荷の実力を判断する一次資料が足りない。 価格はメーカー建値こそ非公表だが、米国の販売店にEC-A13715-P1-12.67が2,250ドルから並んでいる[20]。 峰値1N·mあたり7.03ドルで、MyActuatorの約2倍、DAMIAO最上位機の約6倍にあたる。 低減速比で高トルクという設計は、素直に価格へ跳ね返っている。
RobStride 霊足時代 — 価格で市場を壊しに来ている
北京霊足時代科技。2023年11月に小米(シャオミ)のロボティクスチーム出身者が創業した[8]。 RS05(191g・499元)からRS04(1,420g・1,199元)まで、モータ本体・遊星減速機・二重磁気エンコーダ・ドライバを一体化した構成を、 全機種の仕様と価格を公開したうえで販売している[7]。 減速比は7.75〜10:1で、ラインナップ全体が狭義QDDに収まっている数少ないメーカーである。
Unitree 宇樹 — 部品メーカーではなく垂直統合
M107の峰値360N·m・189N·m/kg[10]は本稿で扱ったなかで最高水準だが、 これは自社ヒューマノイドH1のための関節であって、汎用部品として外販されているものではない。 外販されているのは四足ロボット由来のGO-M8010-6(峰値23.7N·m・530g・減速比6.33・最高30rad/s、369ドル)[12,11]や、 B1モータ(3,000ドル)[13]である。技術のベンチマークとして見る相手であり、部品の調達先としては別会社を当たることになる。
CubeMars — 価格ではなく流通と実績で残る
ドローン用モータのT-MOTORで知られる南昌三瑞智能科技の傘下で、 CubeMarsブランドは南昌酷徳智能科技有限公司が運営する[27]。 親会社は2026年に上場している[17]。
AKシリーズはMIT Mini Cheetah系の研究の流れで世界的に普及し、servo/MIT両モードに対応する[14]。 AK10-9 V3.0 KV60は定格18/峰値53N·m、940g、9:1、48V、空載320rpm・定格235rpm、二重エンコーダ[14]。 QDD専用のAKEシリーズは減速比8:1で、AKE90-8(連続90N·m・483.90ドル)、AKE80-8(連続40N·m・339.90ドル)、 AKE60-8(連続15N·m・218.90ドル)を揃える[17,16]。
純粋なハードウェア単価ではRobStrideに大きく劣後する。 同社の価値は、DigiKeyやRobotShopといった正規流通に乗っていること、 そして論文と公開実装の蓄積がそのまま動く点に移っている。
SteadyWin — 安価だが公表値が薄い
GIM10015-10-DEは定格25N·m、減速比10:1、48V・150rpm、1,200W、1.5kg、CAN/RS485[18]。 安価で種類が多い一方、峰値トルクの公称を本紙は確認できず、 定格・峰値の両輪で他社と比較することができなかった。
HighTorque 高擎動力 — 小型関節と通信で独自路線
広州高擎動力科技。行星系列・超薄系列・中空系列の3系統で関節モジュールを展開し、 自社ヒューマノイドMiniHiにも同じ関節を使う[26]。 自研のHTM-5047は関節最大トルク16N·m、19bitの出力精度、二重エンコーダのブラシレスモータ、 主制御にHPM5361を採用する[26]。 大トルク帯では他社に譲るが、小型関節と通信設計に軸足を置いている点が他社と異なる。 減速比・重量・価格は非公表で、本表では—とした。
日本から買う場合の経路
日本の開発現場から見ると、性能表よりも入手性とドキュメントの整備状況のほうが効くことが多い。 本稿の取材範囲では、次の差があった。
| メーカー | 確認できた経路 | 技術文書 |
|---|---|---|
| CubeMars | DigiKey・RobotShop等の正規流通、自社ストア[15] | 公式仕様ページ、研究コミュニティの実装が豊富[14] |
| MyActuator | Seeed Studioが取り扱い[4] | 全6機種の仕様表・入門ガイドが公開[4] |
| DAMIAO | Seeed Studioが取り扱い[3] | 選型手册(30頁)を公開[1]、Seeed WikiにSDK[3] |
| RobStride | Seeed Studioが仕様書を配布[7] | GitHubで仕様書・CANopen資料・OTAを公開[7] |
| Unitree | 公式ストアが国際発送[11,13] | GO/A1/B1向けにSDKを公開 |
| HighTorque | — | 公式サイトに製品情報あり[26]。仕様の粒度は他社に劣る |
| ENCOS | AIFITLAB等の販売店に在庫[20] | 公式サイトへの到達性が低い(本稿執筆時、en.encos.cnは名前解決不可) |
DAMIAO・MyActuator・RobStrideの3社がいずれもSeeed Studio経由で日本から入手でき、 技術文書も同じ場所に集まっているのは、選定作業のうえで大きい。 逆にENCOSは、販売店経由で入手はできるものの公式サイトに到達できず、 定格トルクを確認できないままだった。 日本から評価用に数本取り寄せて実測する、という最初の一歩の難易度がそもそも違う。
公式値だけを並べたうえで本紙が見るに、この市場は「高トルクと通信のDAMIAO」対「製品化しやすさのMyActuator」の二強に見える。 DAMIAOは400N·mとCAN FD 5Mbpsという、多自由度・高負荷の研究機が最初に欲しくなる2点を押さえている。 MyActuatorは定格トルク密度で先頭に立ち、EtherCATで既存の産業用モーション資産に接続でき、 全機種の仕様が一枚の表で公開されている。研究機ならDAMIAO、量産機ならMyActuatorという分け方は、 公表情報の範囲ではかなり素直に成立する。
ENCOSはその中間に位置し、12.67:1という低い減速比のまま320N·mを出す設計は、 逆駆動性と連続トルクの両方を要求する肩・腰にとって理屈のうえでは最も筋がいい。 しかし流通価格は峰値1N·mあたり7.03ドルとMyActuatorの約2倍で、 定格トルクが非公表のまま、この価格差を正当化する材料が本紙には見つからない。 定格が公開されれば評価は変わりうる。
RobStrideは価格で別の軸にいる。峰値1N·mあたり10元というRS04の中国国内建値は、 肘・手首・小型関節の構成を根本から書き換える。 ただし前述のとおり輸出段階で約1.9倍になり、日本から買う場合の優位はDAMIAOに対しては失われる。中国国内に開発拠点を持つかどうかで、この会社の評価は変わる。 ただし定格40N·mが放熱条件つきの値である以上、「120N·mだから肩に使える」と読むのは危険で、この一点だけは強調しておきたい。
調達戦略としては、関節ごとに最適なメーカーを混載すれば価格性能は最大化できる。 だが混載は、CANのプロトコル、設定ツール、ファーム更新手順、故障診断、予備品管理をすべて各社分だけ増やす。 量産段階でこの運用コストは効いてくるため、最終的にはMyActuatorかDAMIAOのどちらかで全関節を統一したほうが、 システム全体では安く収まる可能性が高いと本紙は見る。 混載が正当化されるのは、試作機で各社を実測して比較する段階までだろう。
いずれにせよ、本稿で最も伝えたい実務的な注意は2つに尽きる。減速比を見ずにトルク密度を比べないこと。そして、カタログの定格を放熱条件つきの数字として読むことである。 この2点を外すと、公表値だけで組んだ設計は実機で熱と逆駆動性の両方を落とす。
メーカー別の登録情報はUnitreeのページに、 中国勢の量産動向は中国ヒューマノイドメーカー量産台数ランキングに、 機体側の仕様比較はUnitree G1 / R1 / AgiBot G2 実機比較にまとめている。
出典
- 1.達妙科技 2025年産品選型手册(全機種の選型表) — 深圳市達妙科技有限公司(DAMIAO)、2025-06-30一次情報
- 2.DM-J10422P-2EC 製品ページ — 深圳市達妙科技有限公司(DAMIAO)一次情報
- 3.達妙系列電機(仕様表・SDK) — Seeed Studio Wiki
- 4.MyActuator 脈塔X系列電機入門指南(全6機種の仕様表) — Seeed Studio Wiki
- 5.V4-X15-450 製品ページ(型番の命名規則) — 蘇州脈塔智能科技有限公司(MyActuator)一次情報
- 6.脈塔RMD-X V4行星模組:重塑具身機器人運動基因 — 蘇州脈塔智能科技有限公司(MyActuator)、2025-04-29一次情報
- 7.RobStride Product_Information(RS全機種の仕様・価格表) — 北京霊足時代科技有限公司(RobStride Dynamics)、2026-07-13一次情報
- 8.小米機器人骨幹創業、機器人関節模組研発商「霊足時代」完成天使輪融資 — 機器人大講堂
- 9.助力人形発展、関節模組進一歩升級(EC-A13715-P1-12.67 の仕様) — 機器人大講堂
- 10.宇樹発布H1通用人形機器人 搭載大扭矩高爆発M107関節電機 — 機器人大講堂
- 11.GO-M8010-6 Motor 製品ページ(価格) — Unitree Robotics一次情報
- 12.GO電機 — 関節大扭力電機(公式仕様) — Unitree Robotics(宇樹科技)一次情報
- 13.Unitree B1 Motor 製品ページ(価格) — Unitree Robotics一次情報
- 14.AK10-9 V3.0 KV60 Robotic Actuator(公式仕様) — CubeMars一次情報
- 15.AK10-9 V3.0 KV60 販売ページ(価格) — CubeMars Store一次情報
- 16.Quasi Direct Drive Motor カテゴリ(AKEシリーズ価格) — CubeMars一次情報
- 17.2026 QDD Motors for Humanoid & Quadruped Robots — CubeMars一次情報
- 18.Planetary Gear Motor 25Nm for Robotic Joint(GIM10015) — SteadyWin一次情報
- 19.DAMIAO Motor 一覧(販売店の掲示価格) — AIFITLAB
- 20.ENCOS Motor 一覧(販売店の掲示価格) — AIFITLAB
- 21.MyActuator RMD-X15-450(販売店の掲示価格) — AIFITLAB
- 22.MyActuator RMD-X12-320(販売店の掲示価格) — AIFITLAB
- 23.DAMIAO Motor 一覧(別販売店の掲示価格) — FOXTECH ROBOTICS
- 24.Robstride RS-04 Actuator(米国販売店の掲示価格) — Silicon Valley Robotics Center
- 25.Steadywin GIM10015-10-DE 出品(MOQ2個) — Alibaba.com
- 26.高擎機電 製品ページ(HTM-5047・関節模組シリーズ) — 広州高擎動力科技有限公司(HighTorque)一次情報
- 27.南昌酷徳智能科技有限公司 出展社情報(三瑞智能傘下・CubeMars運営会社) — 2026世界機器人大会
- 28.Actuators & Motors: The Muscles of China's Robots — China Humanoid Robotics Tracker
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