何が起きたか

国際ロボット連盟(IFR)が2023年3月22日に発表したところによると、世界の自動車産業で稼働する産業用ロボットの台数が初めて100万台を突破した。

本紙の見方

IFRの発表は、自動車産業がロボット導入の最前線であり続けていることを改めて示す。ロボット密度の国際比較では、韓国が従業員1万人あたり2,867台で首位、以下ドイツ1,500台、米国1,457台、日本1,422台と続く。一方、世界最大の自動車生産国である中国は密度772台と依然低いものの、2021年の新規設置台数は61,598台と前年からほぼ倍増し、世界全体の新規設置台数119,405台の52%を占めた。この急増は、中国政府が2035年までに新車販売の全てを「新エネルギー車」とする目標を掲げるなど、電動化政策が生産設備の刷新を促しているためとみられる。 本紙はこれまで、IFRの見解として、AIとロボットの融合が産業の価値創造の場を変える可能性を報じてきた。今回の100万台突破は、そうした構造変化の基盤となる「量」の指標であり、自動車産業が依然としてロボット需要の最大の牽引役であることを示す。特に、内燃機関から電動パワートレインへの移行は、従来の製造方法を根本から変えるものであり、ロボットによる自動化がその移行を支えるというIFR会長マリーナ・ビル氏の指摘は、単なる台数の記録以上の意味を持つ。 業界構造への含意として、中国の新規設置の急増は、世界のロボットサプライチェーンの重心が中国にシフトしつつあることを示唆する。中国のロボット密度は依然低く、今後のさらなる導入余地が大きい。これは、日本のロボットメーカーにとっては、中国市場での競争が一層激化することを意味する。また、EVシフトに伴う製造ラインの変更は、従来の溶接・組立に加え、バッテリーやモーターの組み立てなど新たな工程でのロボット需要を生む。 未確定の論点としては、100万台という数字の内訳(年次別の稼働台数や、EV関連工程でのロボットの比率)が公開情報からは不明であり、今後の詳細な統計が待たれる。また、中国の新規設置の急増が持続するかどうかも、政策動向と生産計画次第であり、注視が必要だ。詳細はIFRの公式発表を参照されたい。

なぜ重要か

自動車産業でのロボット稼働台数100万台突破は、ロボット産業全体の規模感を示す重要な節目である。EVシフトという構造転換期において、自動化投資が引き続き拡大することを示すとともに、中国の存在感の高まりが世界のロボット市場の競争構図を変える可能性を示唆している。

日本への影響

日本のロボット密度は1,422台で世界4位と依然高い水準にあるが、中国の急追が鮮明だ。日本のロボットメーカーにとって、中国市場での競争激化は避けられず、EV関連工程向けの高付加価値ロボットの開発が競争力の鍵となる。