何が起きたか
国際ロボット連盟(IFR)は2021年3月16日、米自動車産業のロボット密度が1万従業員あたり1287台に達し、世界7位になったと発表した。これはドイツ(1311台)、日本(1248台)と同水準で、中国は938台で12位。IFRのミルトン・ゲリー会長は、2008年金融危機後の回復期にGM、フォード、フィアット・クライスラー、テスラがロボットと自動化に大規模投資し、数千の雇用を生んだと述べた。
本紙の見方
今回のIFR発表は、米自動車産業のロボット密度が世界7位という位置づけを示すと同時に、自動車産業を超えた一般産業へのロボット普及の兆しを浮き彫りにした。注目すべきは、米国で2020年に非自動車部門のロボット注文が初めて自動車部門を上回った点だ。ライフサイエンス72%増、食品・消費財60%増という伸びは、パンデミック下での自動化需要の高まりを反映している。IFR会長が2008年金融危機後のGM、フォード、フィアット・クライスラー、テスラの投資を成功例として挙げたのは、今回の危機後の回復でも同様の投資が成長の鍵になるとの認識を示す。 本紙の過去報道では、2025年の米国ロボット市場で食品業界の導入が30%増加し、自動車業界が最大セクターを維持したと報じた。今回の2020年データは、その前段階として非自動車部門の躍進が始まっていたことを示す。自動車産業のロボット密度がドイツ、日本と同水準にある一方、中国が12位と低いのは、中国の自動車産業がまだロボット導入の途上にあることを示唆する。 業界構造への含意として、自動車産業のロボット密度が高い水準にあることは、テスラやフォルクスワーゲンなどがEV生産を拡大する中で、自動化投資が競争力の源泉であり続けることを意味する。一方、一般産業の密度が139台と低いことは、ロボットメーカーにとって非自動車分野が成長市場であることを示す。 未確定の論点としては、今回のIFRデータは2020年時点のものであり、2021年以降のパンデミック回復期に自動車産業のロボット投資がどのように変化したかは、今後のIFR統計で確認する必要がある。また、中国の自動車産業のロボット密度が今後どの程度上昇するかも焦点だ。
なぜ重要か
米自動車産業のロボット密度が世界7位という事実は、自動化が自動車産業の競争力を左右する重要な指標であることを再確認させる。同時に、非自動車部門でのロボット需要の急増は、ロボット産業の成長が自動車産業に依存しなくなった転換点を示しており、今後の市場構造を占う上で重要な意味を持つ。
日本への影響
日本の自動車産業のロボット密度は1248台で、米国(1287台)とほぼ同水準。IFRのデータは、日本が依然として世界トップクラスの自動化水準にあることを示す。一方、米国で非自動車部門のロボット需要が拡大していることは、日本のロボットメーカーにとって、自動車以外の分野(食品、ライフサイエンスなど)での需要開拓が今後の成長機会となる可能性を示唆する。