何が起きたか

EUの研究プロジェクトCOROMA(Cognitively enhanced robot for flexible manufacturing of metal and composite parts)は、AIを搭載したロボットを開発し、金属・複合材部品の製造を自動化した。プロジェクトは2019年9月に完了し、実証実験では航空宇宙、海軍、エネルギー分野の実部品を用いて、ロボットが研削、バリ取り、超音波検査などの作業を実行した。その結果、ロボットのプログラミング時間は38%から98%削減され、製造時間は最大60%、新部品のセットアップ時間は最大85%短縮された。

詳細

COROMAプロジェクトは、EUのH2020プログラムの下で実施され、コーディネーターはスペインのIDEKO(エルゴイバル)が務めた。プロジェクトには22の参加機関が参画し、イノベーションアクション(IA)として資金提供を受けた。開発されたロボットは、ドリル加工、トリミング、バリ取り、研磨、サンディング、非破壊検査、適応型固定などの作業を自律的に実行できる。ロボットは視覚ベースのシーン理解技術を用いて作業場を移動し、部品を特定する。また、人間や他の機械と協調して作業し、センサーと機械学習アルゴリズムを通じて学習する。実証実験では、航空機エンジンの部品の研削、核燃料貯蔵用のチューブとラックのバリ取りと研削、蒸気発生器ノズルの超音波検査、大型グラスファイバーボートの船体製造用モールドのサンディング、ボートや航空機のプロファイル用複合材部品の機械加工などが行われた。プロジェクトの成果の一部は、ロボットハンドの把持ソフトウェアやレーザーベースの物体位置特定ハードウェアとして商業化されている。

Key Facts

COROMAプロジェクトは2019年9月に完了した。出典一覧
ロボットのプログラミング時間は38%から98%削減された。出典一覧
製造時間は最大60%、セットアップ時間は最大85%削減された。出典一覧
プロジェクトはH2020プログラムの下で実施され、コーディネーターはスペインのIDEKO。出典一覧
プロジェクトには22の参加機関が参画した。出典一覧

本紙の見方

COROMAプロジェクトの核心は、AIを活用したロボットの自律性向上にある。従来の産業用ロボットは反復作業に限定されていたが、COROMAは視覚ベースのシーン理解と機械学習により、環境を認識し、部品の位置を特定し、工具の摩耗を予測するなど、認知的な判断を可能にした。この点で、単なる自動化ではなく、製造プロセスにおける意思決定の一部をロボットに委ねる点が新しい。 本プロジェクトの成果は、製造業におけるAI活用の具体的な効果を示す。プログラミング時間の削減(最大98%)は、多品種少量生産への適応力を高める。従来、ロボットの導入には専門的なプログラミングが必要であり、生産ラインの変更には時間とコストがかかった。COROMAのアプローチは、作業者が簡単なコマンドを与えるだけでロボットが自律的に動作するため、中小企業を含む幅広い製造業者が柔軟な生産を実現できる可能性がある。 また、実証実験で扱われた部品は航空宇宙、海軍、エネルギー分野のものであり、これらの分野では高い品質と安全性が求められる。COROMAのロボットが非破壊検査や超音波検査を自律的に行えることは、品質管理の自動化につながる。特に、蒸気発生器ノズルの超音波検査は、原子力発電所の保守点検などでの応用が期待される。 一方で、プロジェクトの成果の商業化は部分的なものにとどまる。ロボットハンドの把持ソフトウェアやレーザー位置特定ハードウェアはすでに製品化されているが、完全なCOROMAソリューション(金属部品の研削や大型モールドのサンディング)は、まだ第三者によるターンキーソリューションとして市場に出す段階にある。また、安全モジュールは認証段階にあり、安定したロボット加工の予測や工具摩耗学習などの技術は、第三者による商業化に向けて改良中である。 今後の焦点は、これらの技術が実際の生産現場でどの程度普及するかである。特に、安全モジュールの認証が完了し、完全なソリューションが市場に出た際に、中小企業を含む製造業者がどの程度導入するかが注目される。また、COROMAの技術が他の製造工程(例えば、溶接や組立)に応用できるかも、今後の研究課題となるだろう。

なぜ重要か

COROMAプロジェクトは、AIとロボットの融合が製造業の生産性を大幅に向上させることを実証した。プログラミング時間の大幅な削減と自律的な品質検査は、多品種少量生産や高品質が求められる分野でのロボット導入のハードルを下げる。この成果は、欧州の製造業の競争力強化に寄与する可能性がある。