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分析10

ROBOTIS と DYNAMIXEL — 1999年創業の部品会社が、ロボット学習の配線を決めた

LeRobot が Koch v1.1 の組み立てで最初に入れさせるのは DYNAMIXEL SDK である。韓国ROBOTIS社の沿革と創業者・金炳秀の経歴、そして研究室の標準になった通信プロトコル(1.0/2.0)を、公式仕様から確かめる。公式の沿革ページは現在空である。

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ロボット学習の論文やリポジトリを開くと、関節の型番に XL330XM430 が 並んでいることがある。DYNAMIXEL(ダイナミクセル)という韓国ROBOTIS社のスマートアクチュエータで、 Hugging Face の LeRobot が対応する Koch v1.1 も、組み立てに DYNAMIXEL SDK の導入を求める[5]。 この会社を1999年に立ち上げ、いまも代表を務めるのが金炳秀(キム・ビョンス)である[6]。 沿革・経歴・そして「なぜ研究室の標準になったのか」を、公式仕様と公開情報の範囲で確かめる。

沿革 — 教育用キットからフィジカルAIへ

ROBOTIS は1999年3月、金炳秀が設立した[6,7]。 2003年に自社開発のロボット専用スマートアクチュエータ「DYNAMIXEL」を投入し、これが以後の 主力製品になる[7]。2018年10月26日、技術特例で KOSDAQ に上場した[6]

できごと
1999金炳秀が設立(3月)[6,7]
2003ロボット専用スマートアクチュエータ DYNAMIXEL を発表[7]
2018KOSDAQ 上場(10月26日、技術成長企業)[6,7]
2019ソウル・麻谷地区で屋外自律配送ロボットの規制サンドボックス承認[7]
2024屋外移動ロボットの安全性認証を国内で初取得(GAEMI-1、1月31日)[7]
2025自律走行ロボット事業を物的分割し子会社 ROBOTIS AI を設立(6月2日)[7]
2025作業型ヒューマノイド「AI Worker」で物流自動化に参入[9]

現在の製品ラインは、DYNAMIXEL の Q/Y/P/X 各シリーズと旧来の AX・MX 系、 そしてヒューマノイド基盤の AI Sapiens、作業型の AI Worker、マニピュレータ OMX/OMY、 ロボットハンド HX5-D20、配送ロボット GAEMI で構成される[4]。 公式サイトは自社を「Smart Actuators for Humanoid Innovation」と規定しており[4]、 教育用キットの会社から、ヒューマノイド部品の会社へと看板を掛け替えている。

金炳秀(キム・ビョンス) — 競技会からの起業

1969年8月19日生まれ[6]。高麗大学校電気工学科を1993年に卒業し、 起亜情報システムに1993年から1997年まで在籍した(兵役特例)[6]。 在学中の1995年に移動ロボットコンテストで優勝し、日本のマイクロマウス大会やロボットワールドカップにも 出場している[6]。創業後に学位を足しており、2009年に漢陽大学校大学院で知能ロボット工学の 修士、2016年に高麗大学校大学院でMBAを取得した[6]

経歴
19698月19日 生まれ[6]
1993高麗大学校 電気工学科 卒業[6]
1993–1997起亜情報システム(兵役特例)[6]
1999ROBOTIS 創業[6,7]
2009漢陽大学校大学院 知能ロボット工学 修士 / 韓国ロボット大賞 大統領賞[6]
2015韓国ロボット大賞 産業褒章[6]
2016高麗大学校大学院 MBA[6]
2018KOSDAQ 上場を主導[6]

韓国ロボット産業協会理事、韓国ロボット学会理事、STEAM教育協会の会長も務める[6]。 創業から27年、同一人物が代表を続けている点は、部品メーカーとしての製品系列の一貫性 ——後述する通信プロトコルの後方互換——と無関係ではない。

DYNAMIXEL Protocol — 1本のバスに全関節を並べる

DYNAMIXEL が研究用途で広まった理由は、モータ単体の性能よりも配線と制御の作法にある。各アクチュエータが ID を持ち、 TTL のマルチドロップ・バスに数珠つなぎ(デイジーチェーン)できる[3]。 腕1本の全関節が1本のバスに載るので、関節ごとにドライバとケーブルを引き回す必要がない。 そのバス上のやりとりを定めたのが DYNAMIXEL Protocol である。

Protocol 1.0 と 2.0

項目Protocol 1.0[2]Protocol 2.0[1]
ヘッダ0xFF 0xFF0xFF 0xFF 0xFD 0x00(第4バイトの予約値で版を区別)
ID0–253、ブロードキャストは 254(0xFE)0–252、ブロードキャストは 254(0xFE)
誤り検出チェックサム ~(ID+Length+Instruction+Params) の下位1バイトCRC 16ビット(ヘッダからパラメータまで)を上下2バイトで格納
命令Ping/Read/Write/Reg Write/Action/Factory Reset/Reboot/Sync Write/Bulk Read の9種上記に加え Sync Read(0x82)、Bulk Write(0x93)、Clear(0x10)
エラー通知8ビットに要因を割当(電圧・角度制限・過熱・範囲・チェックサム・過負荷・命令)bit7 がハードウェア警報、bit6–0 がエラーコード(0x01–0x07)
データ透過性バイトスタッフィング。データ中に 0xFF 0xFF 0xFD が出てもヘッダと誤認しない

実務で効くのは Sync WriteSync Read である。 同じアドレスに対して複数IDぶんの値を1パケットで送受信できるため[2,1]、 6軸の目標角度を6回に分けて書くのではなく、1回のパケットで同時に書ける。 関節ごとに送っていては指令のタイミングがずれ、動きがぎくしゃくする。 Bulk Read/Write はアドレスや長さが機種ごとに違う場合に使う[1]

2.0 で追加された CRC とバイトスタッフィングは、要するに 「長いデイジーチェーンで、しかも高いボーレートで回しても化けない」ための備えである。 1.0 のチェックサムは加算の補数にすぎず、複数ビットの誤りをすり抜ける。 後方互換のために 1.0 は今も残っており、旧AX系は 1.0、X系は既定で 2.0 を使う[2,3]

数字で見るXL330-M288

0.52N·m
停動トルク(5.0V時)
103rpm
無負荷回転数(5.0V時)
18g
質量
288.4:1
減速比

いずれも ROBOTIS 公式マニュアルの記載[3]。動作電圧は 3.7〜6.0V(推奨5.0V)、 通信は TTL マルチドロップ(3.3Vロジック・5V互換)で 9,600bps〜4Mbps[3]

18グラムで 0.52 N·m という値そのものより、ここではEEPROM と RAM に分かれたコントロールテーブル[3]が要点になる。 ID・ボーレート・動作モードは電源を切っても残る EEPROM に、目標位置や現在電流は RAM に置かれる。 つまりモータ側が設定を保持するので、上位のコントローラは「どのIDにいくつ書くか」だけを知っていればよい。 LeRobot の組み立て手順が、最初に一度だけモータのIDとボーレートを書き込ませてから 数珠つなぎにさせるのは、この構造に沿っている[5]

研究室の標準になった理由と、その足元

LeRobot が Koch v1.1 を扱う手順は、pip install -e ".[dynamixel]" で DYNAMIXEL SDK を入れるところから始まる[5]。 リーダー・フォロワー方式の遠隔操作でデータを集め、模倣学習に流すという昨今の定番構成は、 「同じ型番のモータを2本の腕に並べ、同じプロトコルで読み書きする」ことで初めて素直に書ける。 位置指令が同じ単位で往復するので、リーダーの現在位置をそのままフォロワーの目標位置にできるからだ。

ただし足元は安泰ではない。LeRobot の主力アームである SO-101 は DYNAMIXEL ではなく、 Feetech STS3215(減速比1/345)を採用しており、キットは約199ドルから提供されている[8]。 DYNAMIXEL が築いた「IDを持つスマートサーボをバスに並べる」という作法はそのままに、 価格帯だけが下から置き換えられつつある。

本紙の見方

ここから先は編集部の評価

ROBOTIS の資産は、モータの性能ではなく27年分の互換性だと考える。 2003年の DYNAMIXEL から現在のX系まで、IDとコントロールテーブルという同じ考え方が続き、 Protocol 1.0 は 2.0 が出たあとも捨てられていない。 研究室が古い腕を残したまま新しい腕を足せるのは、この一貫性のおかげである。 創業者が代表を続けていることと、この保守性は切り離せない。

一方で、その作法は模倣可能だった。SO-101 が示したのは、 プロトコルの設計思想が広く受け入れられた結果として、 より安い実装が同じ生態系に入ってこられるということである。 ROBOTIS が AI Sapiens や AI Worker といった完成品側[4,9]へ 軸足を移しているのは、部品だけでは守り切れないという判断だろう。 ヒューマノイド向けに Q シリーズを立てた[4]のも同じ流れに見える。

確認できなかった点も書いておく。公式の沿革が空である以上、 本稿の年表は二次情報の突き合わせにとどまる。売上・従業員数・受注残といった経営数値、 および 2026年のヒューマノイド計画の具体像は、本稿では扱えなかった。 監査済みの開示(DART)に当たり直したうえで、改めて数字で追いたい。

出典

  1. 1.DYNAMIXEL Protocol 2.0 ROBOTIS e-Manual(公式仕様)一次情報
  2. 2.DYNAMIXEL Protocol 1.0 ROBOTIS e-Manual(公式仕様)一次情報
  3. 3.XL330-M288-T ROBOTIS e-Manual(公式仕様)一次情報
  4. 4.ROBOTIS 公式サイト(製品ラインナップ) ROBOTIS(公式)一次情報
  5. 5.Koch v1.1 — LeRobot Documentation Hugging Face(公式ドキュメント)一次情報
  6. 6.[Who Is ?] 김병수 로보티즈 대표이사 Business Post(韓国)
  7. 7.로보티즈 ウィキペディア(韓国語版)
  8. 8.SO-101 Low Cost AI Arm Kit Pro Seeed Studio(販売元の製品ページ)
  9. 9.로보티즈, 작업형 휴머노이드 AI Worker로 물류자동화 본격화 월간로봇기술(韓国)
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本コラムは編集部が執筆しています。掲載した数値・固有名詞は原典で照合し、確認できないものは掲載していません。 誤りの指摘は歓迎します。関連する自動生成のニュースはニュースへ。