何が起きたか

中国のロボット企業・星動紀元(Xingdong Era)は、エンドツーエンドのロボット大規模モデル「ERA-42」を発表した。同社の自社開発5本指器用ハンド「XHAND1」と組み合わせることで、100種類以上のタスクを完了できるとしている。

本紙の見方

今回の発表は、ロボット基盤モデルと器用ハンドの組み合わせという点で、Physical IntelligenceやGenesis AIなどが進める「基盤モデル+巧緻操作」の流れに連なるものだ。本紙が2026年7月24日に報じたPhysical Intelligenceの「RLT」は、オンライン強化学習で精密操作を高速化する手法であり、2025年2月4日には基盤モデルπ0のコードと重みをオープンソース化している。一方、星動紀元はエンドツーエンドの大規模モデルを自社製ハンドと一体化させる垂直統合型のアプローチを取る。この違いは、ロボットの知能を「ソフトウェアの汎用性」で競うか、「ハードウェアとの密結合」で競うかの分岐を示す。 また、2025年7月29日付の本紙記事が指摘したように、ロボティクス分野のスタートアップ資金調達は2025年に60億ドルを超え、ヒューマノイド以外にも資金が流れている。星動紀元のような中国勢の動きは、この資金流入の一環とみられるが、中国市場では政府の支援もあり、部品の内製化が進む可能性がある。 業界構造への含意として、エンドツーエンドの大規模モデルは、従来のモジュール式制御(認識→計画→制御)を置き換える可能性がある。これにより、ロボットメーカーはソフトウェア開発力とデータ収集力が競争軸となり、ハードウェアの差別化は薄まるかもしれない。一方で、器用ハンドのようなハードウェアは依然として重要であり、星動紀元のように自社で両方を開発する垂直統合が有利になる場面もある。 今後確認すべき点は、第一にERA-42の技術詳細(パラメータ数、学習データ、推論速度など)が公開されるかどうか。第二に、XHAND1の量産体制と価格、そして実際の導入事例が示されるかどうか。第三に、他社製ハンドやロボットへの対応(オープンソース化やAPI提供)が行われるかどうかだ。これらの情報が明らかになれば、星動紀元の戦略が業界に与える影響をより正確に評価できる。

なぜ重要か

ロボット基盤モデルと器用ハンドの組み合わせは、汎用ロボットの実用化に向けた重要な一歩であり、中国勢の動きは世界の競争構図を変える可能性がある。今後の技術公開と量産動向が、業界の標準を左右するだろう。