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人型ロボットは「動く」から「働く」へ — Unitree G1の全身制御・最新20研究を徹底解説

遅延中央値65msでボールを捕るHuMiT、腕と胸で箱を抱え運ぶWhole-Body Dexterity(実機90%)、力制御でボードを拭くFLORE(実機80%)、カメラなしでスケートボードに乗るBlind Dexterity、500時間人間データのλ₀、スマホ3D再構成のZero-HLM、単一H100・3時間で学習するSuperMimicまで、2025〜2026年10月の20研究を体系順に完全解剖する。

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執筆・編集責任:日本フィジカルAI新聞 編集部

2025年から2026年10月にかけて、中国のUnitreeが開発した人型ロボット「Unitree G1」(本体29駆動自由度構成)を共通の実験プラットフォームとして、全身制御(Whole-Body Control:WBC)と全身移動操作(Loco-Manipulation)の研究が爆発的に進展した[1,3,15]。 本稿では、人間が投げたボールの瞬時キャッチ(遅延中央値65ミリ秒)[6]、腕と胸を使った箱の抱え込み運搬(実機タスク成功率90%)[11]、接触力制御によるボード拭き・箱回転(30試行中24回=80%成功)[13]、カメラなしの関節エンコーダ履歴のみによるスケートボード搭乗[14]、さらには単一H100 GPU・約3時間での高速学習[19]まで、最重要の20研究・公開プロジェクトを発表順ではなく「技術進化の因果が自然に理解できる体系順」で徹底解剖する。あわせて「遠隔操作(テレオペ)と自律作業の違い」「シミュレーション成功率と実機成功率の厳密な区別」から、人型ロボットが「動く」段階から「働く」段階へ移行する現在地を整理する。

20研究4大潮流で体系化
2025〜2026年10月のUnitree G1全身制御・主要研究&公開基盤
65 ms遅延中央値
HuMiTの全身テレオペ遅延(同研究内比較:SONIC 245ms / TWIST2 120ms)
90% / 80%G1実機成功率
Whole-Body Dexterity(抱え運搬90%)/ FLORE(力制御作業80%)
1 GPU・3時間H100単一GPU学習
SuperMimicがSONIC公開モデル(128 GPU×7日規模)の追従指標を超過

1. なぜ人型ロボットの「全身操作(Whole-Body Control)」は難しいのか#

人間が床に落ちた箱を拾うとき、膝を曲げ、腰を落とし、重心を移動させながら両手で箱を持ち上げ、箱が重ければ上体を後ろへ傾け、大きければ胸と腕で抱え込む。人間にとっては無意識の一連動作だが、従来のロボット工学では「二足歩行(Locomotion)」「腕の軌道制御(Arm Manipulation)」「ハンドの把持(Grasping)」を別々の制御系として開発するのが一般的だった。これに対し、全身を一つの統合システムとして扱うのが全身制御(Whole-Body Control:WBC)である[1,3]。

人型ロボットの全身操作には、同時に解かなければならない3つの物理的難題が存在する。

全身制御の3大難題物理・制御上のボトルネックUnitree G1における具体例と解決アプローチ
① 高自由度の協調制御独立して動く関節方向(自由度:DoF)が多く、目標手先位置に対する姿勢が一意に決まらないG1研究で標準的な本体29駆動自由度に加え、多指Inspireハンド(計12自由度)を統合すると計41自由度を同時に調整する必要がある[15]
② 動的バランスの維持腕を伸ばす・しゃがむ・歩くたびに全身の重心(CoM)と慣性モーメント、床反力が変化し転倒リスクが生じる静的な足裏支持多角形だけでなく、歩行・跳躍・外乱時の速度・角運動量・床反力を考慮して一歩踏み出す動的安定化が不可欠[3,10]
③ 接触と力の制御物体に触れた瞬間に外力と拘束条件が急変し、「位置の制御」だけでは重さや摩擦に対応できないドアを開ける・ボードを拭く・重い箱を抱えるには、位置追従だけでなくコンプライアンス(しなやかさ)や明示的な接触力制御が必要[10,11,13]

近年のブレイクスルーは、物理シミュレータ内の仮想空間で何百万回もの試行錯誤を行う強化学習(Reinforcement Learning)によって、状態から関節指令を直接出力するニューラルネットワークの方策(Policy)を訓練し、摩擦・モーター個体差・通信遅延を乗り越えて実機へ転移するSim-to-Realが実用域に入ったことにある[1,3,19]。ただし、論文やデモ映像を見る際には「人間が操作しているのか(テレオペ)、AIが自律判断しているのか」「シミュレーションでの数値か、G1実機での数値か」を厳密に区別しなければならない。

2. 人間の動きをロボットへ移す基盤:TWIST・TWIST2・NVIDIA SONIC#

2-1. TWIST(2025年):単一ポリシーで全身を模倣する出発点

TWIST(Teleoperated Whole-Body Imitation System)は、人間の全身動作を遠隔操作(テレオペレーション)によってUnitree G1へリアルタイムに再現させる基盤研究である[1]。人間とG1では身長・リンク長・関節可動域が異なるため、人間の関節角度をそのまま流し込むと届かない、あるいは転倒する。そこで人間の動作をロボットの身体構造に合わせて変換するリターゲティング(Retargeting)を行い、強化学習で訓練した単一の全身コントローラで追従させることで、しゃがむ・箱を持ち上げる・物を運ぶ・脚でドアを動かすといった全身動作をG1実機で実証した[1]。腕と脚を別個のロボットとして切り離さず、単一方策で全身を制御する現在の潮流の出発点となった研究である。

2-2. TWIST2:可搬型VRテレオペと能動首機構による学習データ収集

TWIST2は、全身テレオペを「高価な光学式モーションキャプチャ室での実験」から「どこでも使える学習データ収集手段」へと進化させたシステムである[2]。PICOのVRヘッドセットと少数トラッカーによる持ち運びやすい構成を採用し、さらにG1に後付けできる能動的な首機構を開発した[2]。人間が棚の上の物を取るときに視線と頭部を動かすように、ロボット視点のカメラ映像と全身動作を同期記録し、長時間の作業データから視覚ベースの自律制御を学習する枠組みを提示している[2]。

2-3. NVIDIA SONIC & BONES-SEED:14万2千動作・288時間を学ぶ汎用運動基盤

NVIDIA GEAR-SONIC(GR00T-WholeBodyControl)は、個別の動作ごとに制御器を作るのではなく、大量の人間モーションデータを追従(モーショントラッキング)する強化学習によって、歩行・走行・しゃがみ・ジャンプ・床に手をついての立ち上がりまでを単一の汎用AIでこなす基盤モデルである[3]。2026年には、約14万2,000件の人間動作・合計約288時間を収録した大規模モーションデータセットBONES-SEEDが公開され、学習コード・G1実機推論環境・VRテレオペ環境に加えて、応答性を高めたLow-Latency版(SONIC-LL)や手首動作強化版も公開された[3]。ただし、「人間の箱を持ち上げるフォームを空中で再現できること(モーション追従)」と「実際の箱の重さ・摩擦に打ち勝って箱を持ち上げられること(作業の成功)」は別問題であり、このギャップを埋めるために次節以降の研究が展開された。

3. 少ないセンサー入力と機体横断で全身を動かす:AnyBody・Beyond Retargeting・HuMiT・X-WBC・HoloMotion#

3-1. AnyBody(2026年):身体の一部を指定するだけで全身を協調させる

AnyBodyは、「全身を動かすために全関節の目標を与える必要はない」という発想から、胴体のみ・手首のみ・足首のみ、あるいはそれらの任意の組み合わせといった部分的なキーポイント指定だけで残りの全身動作を自動補完する手法である[4]。何千種類もの人間ポーズの特徴を圧縮した潜在表現(Latent Representation)を用いることで、空中に文字を書く動作や障害物を避けながら手を伸ばす動作など、少数の目標点から自然な全身協調運動を生成する[4]。

3-2. Beyond Retargeting(2026年10月):オンライン逆運動学(IK)の撤廃

2026年10月発表のBeyond Retargeting(arXiv:2610.07891)は、従来オンラインで実行していた逆運動学(IK)などのリターゲティング計算そのものを省き、人間の動作情報からG1の関節指令を直接予測する方式を提案した[5]。人間の動作を再利用可能な小さな動作パターンとして学習しておくことで、計算遅延や物理的に無理な姿勢の生成を防ぎ、欠損やノイズを含む入力に対してもG1実機およびシミュレーションで安定した全身制御を実現している[5]。

3-3. HuMiT(2026年):遅延中央値65ミリ秒で飛んでくるボールを捕る

HuMiTは、人間が投げたボールをG1実機が瞬時にキャッチするデモで注目を集めた低遅延全身テレオペ研究である[6]。飛んでくるボールを捕るには、人間の動きがロボットへ伝わるまでの通信・計算遅延(レイテンシ)が致命的となる。HuMiTはロボットへ渡す入力を「胴体の高さと速度」「左右の手首と足首の位置・姿勢」に絞り込み、複雑なオンラインリターゲティングや未来フレーム待機を省くことで、人間からロボット動作までの遅延中央値65ミリ秒(0.065秒)を達成した[6]。

同研究グループが同一実験条件で計測した比較では、通常のSONICが245ミリ秒、低遅延版SONIC-LLが145ミリ秒、TWIST2が120ミリ秒であり、HuMiTが最も低い遅延を示した[6]。一方で、論文内では膝立ち姿勢や精密な物体配置が難しいケースも率直に報告されており、測定条件を超えた万能な順位ではなく「反応速度に特化した設計と精密作業のトレードオフ」として理解する必要がある[6]。

3-4. X-WBC(2026年9月)と HoloMotion(2026年10月):複数機体への共有とOSS実装

X-WBC(arXiv:2609.15213)は、「ロボット1機種ごとに制御AIをゼロから作り直す」コストを解消するため、人間動作に共通する運動特徴とロボットごとの身体構造差を分離して学習する手法である[7]。シミュレーション上で9種類のロボット構成を扱い、実機でもUnitreeのG1・R1・H1-2・H2の4機種で検証を行った[7]。また、Horizon Roboticsが公開するHoloMotionは、全身モーション追従の学習・推論・実機デプロイを一貫整備するオープンソース基盤であり、2026年10月には身体の1点または5点トラッキングによるG1実機テレオペの初期実証と、後述するSuperMimicを用いた高速学習サポートを追加している[8]。

4. 歩行と作業を一体化する自律制御:Workhorse・OCLO#

4-1. Workhorse(2026年10月):5点表現で「視覚プランナー」と「全身トラッカー」をつなぐ

2026年10月発表のWorkhorseは、遠隔操作の再生ではなく、G1自身がカメラ映像を見て手や足で箱を仕分けたり、スーツケースを倒して乗り越えたりする自律動作を実証した研究である[9]。システムは、カメラ映像から次の身体目標を予測する上位の視覚プランナー(Visual Planner)と、その目標を実現するよう関節を駆動する下位の全身トラッカー(Whole-Body Tracker)の2階層で構成される[9]。

最大の特徴は、人間に装着した5つのトラッカー(胴体・左右の手・左右の足)とカメラで収集した作業データをそのまま中間表現として使い、従来の一対一関節リターゲティングを不要にした点にある[9]。人間が途中で箱を動かしたりロボットを押したりする外乱への適応も実機で示されたほか、シミュレーション上の箱仕分けタスクでは通常条件で成功率77%が報告されている(ただし77%はシミュレーション評価値であり、実機のあらゆる作業での成功率ではない点に留意が必要)[9]。

4-2. OCLO(2026年):人間モーション事前分布を使わず、手先目標とコンプライアンスで姿勢を決める

OCLO(Object-Centric Loco-Manipulation)は、人間のモーションデータを一切使わずに全身移動操作を学習するアプローチである[10]。床近くの箱に両手を伸ばす際、手先の目標位置だけでは膝をどれだけ曲げるか、腰をどれだけ落とすかは一意に決まらない。OCLOは手先目標から腰の高さや胴体の向きをオンラインで計算・調整し、さらに物体から予想外の反力を受けても転倒しないよう手先目標からの適度なずれを許容するコンプライアンス(Compliance:しなやかさ)を組み込んでいる[10]。G1実機で低姿勢歩行や床からの箱拾いなど7種類の移動操作タスクを実証し、姿勢生成部を既存のSONICと組み合わせた実験でも一部課題での性能改善を報告した[10]。

5. 手以外の全身接触と「力」を使う技術:Whole-Body Dexterity・PanTact・FLORE・Blind Dexterity#

5-1. Whole-Body Dexterity(2026年10月):箱を脇と胸で抱えて運ぶ(実機成功率90%)

人間が大きなダンボールを運ぶときは指先だけでなく腕・胸・胴体で箱を抱え込む。2026年10月発表のWhole-Body Dexterity(arXiv:2610.22184)は、ロボットの腕や胴体そのものを物体支持の接触面として活用する研究である[11]。シミュレーション上で多様な全身保持姿勢と姿勢間遷移を学習し、複数の専門方策を単一方策へ蒸留することで、G1実機がバスケットボールや箱を身体の周りで持ち替えたり、箱を脇に抱えて棚から机へ運搬したりする動作を実証した[11]。

論文で設定されたG1実機の全身物体操作タスクにおいて、同手法は成功率90%を記録した一方、比較対象の直接リターゲティング方式は18%、汎用全身コントローラは4%にとどまった[11]。なお、粗い動作目標自体は人間の操作者が与えているため「完全自律の汎用運搬」ではないものの、手先以外の身体表面を使った物体操作を実機90%の精度で成立させた意義は極めて大きい[11]。

5-2. PanTact(2026年):身体装着パッチで「どこをいつ接触させたか」を転移する

PanTactは、人間が作業する際に身体に装着した接触センサーパッチから「どの身体部位が、いつ、どこに接触したか」を記録し、ロボットへ転移する研究である[12]。人間とロボットで骨格寸法が異なっていても、「肩や胴体で荷重を受け止めながら押す」といった接触関係(Contact Semantics)を合わせる設計により、G1実機での全身支持・押し・掃き・荷重分担を実現している[12]。

5-3. FLORE(2026年10月26日):位置だけでなく「加える力」を予測・制御(実機成功率80%)

2026年10月26日発表のFLOREは、ホワイトボードを拭く・箱を回す・重い構造物を押すといった作業において、手の位置軌道だけでなく接触力(Force)を明示的に予測・フィードバック制御する研究である[13]。G1実機での3種類の作業・合計30試行の評価において、力を扱うFLOREは24回成功(成功率80%)を達成したのに対し、位置のみを扱う比較方式は30回中8回成功(成功率26.7%)にとどまった[13]。30試行という小規模実験ではあるが、「見た目のフォーム追従だけでは接触作業は成立せず、力の制御が不可欠である」ことを鮮明に実証している[13]。

5-4. Blind Dexterity(2026年8月):カメラも触覚センサーも使わずスケートボードに乗る

Blind Dexterity(arXiv:2608.29487)は、カメラ、触覚センサー、力覚センサーを一切使わず、G1自身の関節回転を測るエンコーダの時系列変化(固有受容感覚:Proprioception)のみから外部環境との接触を検知して全身操作を行う異色の研究である[14]。人間が目を閉じて足先で床の物を探るように、接触によって生じる関節軌道の微小な偏差から物体の存在と反力を推定し、足で転がるボールを止める、スーツケースの取っ手を探り当てて持ち上げる、さらにはスケートボードに乗ってバランスを取る動作まで実証した[14]。

6. 指先まで含めた41自由度の協調:WEAVE・DexWeave#

全身移動と多指ハンドによる精密把持を統合したのが、ともに2026年9月に発表されたWEAVEとDexWeaveである[15,16]。

WEAVEは、29自由度のUnitree G1本体と、左右合計12自由度で駆動する2つの多指Inspireハンド(合計41自由度)を単一の統合方策で制御し、物体の3次元形状および指先との接触関係を考慮した強化学習を行う[15]。9種類の物体を用いたシミュレーション評価では、学習済み動作系列で約92.5%、未学習の動作系列で約65%の成功率を報告している(主としてシミュレーション上の評価値)[15]。

一方のDexWeaveは、人間の指とロボットの多指ハンドの構造差によって生じる「関節角度を合わせると物が滑り落ちる問題」に対し、リターゲティング段階で物体との接触関係を維持する補正を入れたうえで全身+指の強化学習方策を訓練し、Inspireハンド搭載G1実機での展開を示した[16]。

7. 自律作業の学習データをどう集めるか:λ₀(Lambda Zero)・Zero-HLM#

7-1. λ₀(Lambda Zero, 2026年):500時間の人間作業データ「HumanVerse」と全身VLA

ロボット自身を何百時間もテレオペして実機データを集めるボトルネックに対し、λ₀(Lambda Zero)は人間にカメラと身体トラッカーを装着して収集した約500時間の人間作業データHumanVerseとロボット実演データを組み合わせて、視覚・言語・行動モデル(VLA:Vision-Language-Action)を学習した[17]。上位のVLAがカメラ映像と言語指示から行動目標を生成し、下位のSONIC系全身制御基盤が身体を駆動する階層構成により、G1実機の4種類の評価タスクで40試行中25回成功(成功率62.5%)を報告している[17]。

7-2. Zero-HLM(2026年10月26日):スマホ撮影から3D物理環境を再構築し4,800件のデモを自動生成

2026年10月26日公開のZero-HLMは、スマートフォンで撮影した実環境の映像から部屋の3次元形状と物体配置を再構築(Real-to-Sim)し、仮想空間内で物理的に成立する全身動作を調整して4,800件の検証済みデモンストレーションを自動生成した[18]。この合成データで訓練したGR00T N1.7をUnitree G1実機へ展開(Sim-to-Real)した結果、実機3タスクの平均成功率は66.7%となり、比較対象の実機データ学習方式(46.7%)を上回った(ただし両者はデータ量や生成条件が異なるため、特定条件下での有効性実証として読むべきである)[18]。

8. 学習の劇的な高速化と動作のトークン化:SuperMimic・Stochastic Motion Tokenization#

8-1. SuperMimic(2026年10月20日):微分可能ワールドモデルで「128 GPU×7日」から「1 GPU×3時間」へ

全身強化学習の最大の参入障壁であった計算コストに風穴を開けたのが、2026年10月20日公開のSuperMimicである[19]。物理シミュレータのデータから「関節を少し変えると次の瞬間の身体姿勢がどう変化するか」を微分可能な形で予測する微分可能ワールドモデル(Differentiable World Model)を学習し、勾配情報を使って制御方策を効率的に改善する[19]。

研究グループは、NVIDIA H100 GPUをわずか1枚・約3時間使用した学習だけで、比較対象であるSONIC公開モデル(128枚のGPUで7日間規模の学習)の動作追従評価スコアを上回ったと報告した[19]。ハードウェア構成や学習条件が完全に同一ではなく、あくまで動作追従ベンチマークでの比較である点には注意が必要だが、HoloMotionが2026年10月にSuperMimic連携をサポートしたことで、研究室やスタートアップが単一GPUでG1の全身制御を訓練する道が現実のものとなった[8,19]。

8-2. Stochastic Motion Tokenization(2026年10月27日):全身動作を「言語トークン」のように扱う

2026年10月27日公開のStochastic Motion Tokenization(arXiv:2610.36452)は、大規模言語モデルが文章をトークンに分割して扱うように、連続的な全身関節運動を圧縮された離散トークン列として表現する手法である[20]。G1実機において、ダンス・歩行・格闘動作の生成や、格闘からダンスへ滑らかに切り替わる約35秒間の連続動作系列を実証しており、将来の上位AIが関節角度を毎フレーム直接出力する代わりに「動作トークン」で全身へ指示を出す共通インターフェースとして注目される[20]。

9. Unitree G1 全身制御・最新20研究の完全比較一覧表#

ここまでに取り上げた20件の研究・公開プロジェクトを、4つの技術潮流・入力形式・評価環境(実機/シミュレーション)・主要数値とともに一覧表に整理する。

分類研究・プロジェクト名操作・制御の方式実機 / Sim報告された主要数値・検証内容と留意点
① 全身テレオペ・運動基盤TWIST [1]テレオペ+リターゲティング+単一RLG1実機+Simしゃがみ・箱持ち上げ・運搬・足でのドア操作を単一全身方策で実証
① 全身テレオペ・運動基盤TWIST2 [2]PICO VR可搬テレオペ+能動首+視覚学習G1実機+Sim能動首機構による視線制御と長時間作業データ収集・自律制御学習を提示
① 全身テレオペ・運動基盤NVIDIA SONIC / BONES-SEED [3]大規模モーショントラッキング基盤G1実機+SimBONES-SEED(約14.2万動作・約288時間)、Low-Latency版・手首強化版・VR操作を公開
① 全身テレオペ・運動基盤AnyBody [4]任意キーポイント入力+潜在運動表現G1実機+Sim胴体・手首・足首の任意指定から残りの全身協調動作を生成(空中文字書き・障害物回避)
① 全身テレオペ・運動基盤Beyond Retargeting [5]オンラインIKなしの直接関節指令予測G1実機+Simオンライン逆運動学を省き、学習済み動作パターンからノイズ耐性の高い全身制御を実証
① 全身テレオペ・運動基盤HuMiT [6]疎な身体入力による超低遅延テレオペG1実機+Sim遅延中央値65ms(同研究内比較:SONIC 245ms, SONIC-LL 145ms, TWIST2 120ms)。G1でボールキャッチ実証
① 全身テレオペ・運動基盤X-WBC [7]共通運動特徴と機体固有差の分離学習実機4機種+Sim 9構成Sim 9構成およびUnitree G1・R1・H1-2・H2の4実機で機体横断の全身制御を検証
① 全身テレオペ・運動基盤HoloMotion [8]公開モーション追従・1点/5点テレオペ基盤G1実機+Sim1点・5点トラッキングからのG1初期実機テレオペとSuperMimic高速学習連携を公開
② 歩行×作業・自律制御Workhorse [9]視覚プランナー+5点表現+全身トラッカーG1実機+SimG1実機で自律箱仕分け・スーツケース踏破。箱仕分け成功率77%はシミュレーション評価値
② 歩行×作業・自律制御OCLO [10]人間データなしの手先目標+外力コンプライアンスG1実機+Sim手先目標から腰高さ・胴体姿勢をオンライン調整し、G1実機で低姿勢歩行・箱拾い等7タスク実証
③ 全身接触・力覚・固有感覚Whole-Body Dexterity [11]腕・胸・胴体を使う非把持抱え込み操作G1実機+SimG1実機タスク成功率90%(比較:直接リターゲティング18%、汎用WBC 4%)。粗い目標は人間が指定
③ 全身接触・力覚・固有感覚PanTact [12]身体装着パッチによる全身接触部位転移G1実機+Sim人間の接触タイミング・部位データを転移し、G1での身体支持・押し・掃き・荷重分担を実証
③ 全身接触・力覚・固有感覚FLORE [13]手先位置軌道+接触力の同時予測・制御G1実機+SimG1実機3タスク計30試行で24回成功=80%(位置のみの比較方式は8/30回=26.7%)
③ 全身接触・力覚・固有感覚Blind Dexterity [14]カメラ・触覚なしの関節エンコーダ履歴制御G1実機+Sim視覚・力覚センサーなしで足でのボール止め、スーツケース把持、スケートボード搭乗を実証
③ 全身+多指ハンド協調WEAVE [15]29自由度G1+12自由度Inspireハンド統合RL主としてSim9物体のシミュレーション評価で学習済み系列約92.5%、未学習系列約65%(Sim評価値)
③ 全身+多指ハンド協調DexWeave [16]物体接触関係を維持する多指・全身協調RLG1実機+Sim人間とロボット指の構造差を接触保持リターゲティングで吸収し、Inspire搭載G1実機へ展開
④ データ拡張・高速学習・表現λ₀ (Lambda Zero) [17]HumanVerse(約500時間)+ロボット実演VLAG1実機+SimG1実機4タスク40試行中25回成功(62.5%)。人間データとロボット実演データの双方を利用
④ データ拡張・高速学習・表現Zero-HLM [18]スマホ3D再構成+物理検証4,800デモ生成G1実機+SimGR00T N1.7を訓練しG1実機3タスク平均66.7%成功(比較の実機データ学習は46.7%)
④ データ拡張・高速学習・表現SuperMimic [19]微分可能ワールドモデルによる勾配政策学習G1実機+SimH100 GPU 1枚・約3時間でSONIC公開モデル(128 GPU×7日規模)の動作追従スコアを超過
④ データ拡張・高速学習・表現Stochastic Motion Tokenization [20]連続全身運動の離散トークン化+全身制御器G1実機+SimG1実機でダンス・歩行・格闘および格闘→ダンスの約35秒間の連続遷移を実証

10. 結論:人型ロボットが学ぶべきは「人間の動き」か、それとも「仕事」か#

ここから先は編集部の評価
2025年から2026年10月にかけてのUnitree G1をめぐる20研究を俯瞰すると、人型ロボット研究の重心が「人間らしいフォームを空中でなぞる段階(Motion Tracking)」から、「重力・摩擦・接触力を伴う物理環境へ働きかけてタスクを完遂する段階(Physical Work)」へと明確に移行していることが分かる[3,11,13,9]。

出典

  1. 1.TWIST: Teleoperated Whole-Body Imitation System(Unitree G1向けの全身テレオペレーション・模倣学習基盤。人間動作のリターゲティングと単一RLポリシーによる全身追従を実証) — TWIST Project / GitHub、2025一次情報
  2. 2.TWIST2: Portable Whole-Body Teleoperation and Data Collection for Humanoids(PICO VRヘッドセットとトラッカー、G1向け能動首機構を組み合わせた可搬型データ収集・視覚自律制御学習システム) — TWIST2 Project Page、2026一次情報
  3. 3.NVIDIA GEAR-SONIC / GR00T-WholeBodyControl & BONES-SEED Dataset(汎用全身モーショントラッキング基盤SONIC・Low-Latency版・手首強化版、および約14万2千動作・計約288時間のBONES-SEEDデータセット) — NVIDIA Research / NVLabs、2026一次情報
  4. 4.AnyBody: Whole-Body Control from Arbitrary Keypoints via Latent Motion Representation(胴体・手首・足首など任意の身体キーポイント指定から潜在表現を用いて全身協調運動を生成) — AnyBody Project Page、2026一次情報
  5. 5.Beyond Retargeting: Direct Human-to-Humanoid Control without Online IK(オンライン逆運動学変換を省き、学習済み動作パターンからG1の関節指令を直接予測する方式) — arXiv:2610.07891、2026-10一次情報
  6. 6.HuMiT: Low-Latency Humanoid Whole-Body Teleoperation(疎な身体入力から全身制御を行い、遅延中央値65ms[同研究内比較でSONIC 245ms、SONIC-LL 145ms、TWIST2 120ms]でG1のボールキャッチを実証) — HuMiT Project Page、2026一次情報
  7. 7.X-WBC: Cross-Embodiment Whole-Body Control for Humanoid Robots(動作の共通特徴と機体固有差を分離し、シミュレーション9構成・実機4機種[Unitree G1, R1, H1-2, H2]で全身制御を検証) — arXiv:2609.15213、2026-09一次情報
  8. 8.HoloMotion: Open-Source Whole-Body Motion Tracking Infrastructure(1点・5点トラッキングからのG1初期実機テレオペおよびSuperMimic連携学習をサポートする公開基盤) — Horizon Robotics / GitHub、2026-10一次情報
  9. 9.Workhorse: Autonomous Whole-Body Loco-Manipulation from Human 5-Point Demonstrations(胴体・両手・両足の5点表現で視覚プランナーと全身トラッカーを接続。G1実機での自律作業とSim箱仕分け成功率77%を報告) — Hybrid Robotics、2026-10一次情報
  10. 10.OCLO: Object-Centric Loco-Manipulation without Human Motion Priors(人間モーション事前分布を使わず、手先目標と外力コンプライアンスから腰高さ・胴体姿勢をオンライン調整し、G1実機7タスクを実証) — OCLO Project Page、2026一次情報
  11. 11.Whole-Body Dexterity: Non-Prehensile Whole-Body Object Manipulation on Humanoids(腕・胸・胴体を接触面として箱やボールを抱え運ぶ全身操作。G1実機タスク成功率90%[比較の直接リターゲティング18%、汎用WBC 4%]) — arXiv:2610.22184、2026-10一次情報
  12. 12.PanTact: Whole-Body Contact Transfer via Wearable Tactile Patches(人間が装着した接触パッチから身体部位の接触タイミング・領域を学習し、G1の全身支持・押し・掃き・荷重分担へ転移) — PanTact Project Page、2026一次情報
  13. 13.FLORE: Force-Aware Loco-Manipulation for Humanoids(手先軌道と接触力を同時予測・制御。G1実機3タスク計30試行で成功率80%[24/30回、位置のみ比較方式は8/30回=26.7%]) — FLORE Project Page、2026-10-26一次情報
  14. 14.Blind Dexterity: Proprioceptive Whole-Body Manipulation without Vision or Tactile Sensors(カメラ・触覚・力覚センサーを使わず関節エンコーダ履歴のみからG1の足でのボール止め、スーツケース把持、スケートボード搭乗を実証) — arXiv:2608.29487、2026-08一次情報
  15. 15.WEAVE: Coordinated Whole-Body and Dexterous Hand Control(29自由度G1本体と計12自由度デュアルInspireハンドを統合制御。9物体のシミュレーション評価で既知系列約92.5%、未知系列約65%を報告) — WEAVE Project Page、2026-09一次情報
  16. 16.DexWeave: Contact-Preserving Whole-Body Dexterous Manipulation(人間と多指ロボットハンドの構造差を物体接触関係の保持で吸収し、Inspireハンド搭載G1実機での全身・多指協調を実証) — DexWeave Project Page、2026-09一次情報
  17. 17.λ₀ (Lambda Zero): Scaling Whole-Body VLA with 500 Hours of HumanVerse Data(約500時間の人間作業データHumanVerseとロボット実演を併用してVLAと全身制御基盤を統合。G1実機4タスク40試行中25回[62.5%]成功) — Lambda Zero Project Page、2026一次情報
  18. 18.Zero-HLM: Real-to-Sim-to-Real Whole-Body Manipulation from Smartphone Scans(スマホ撮影からの3D再構成と物理検証で4,800件のデモを生成しGR00T N1.7を学習。G1実機3タスク平均成功率66.7%[比較の実機データ学習46.7%]) — Zero-HLM Project Page、2026-10-26一次情報
  19. 19.SuperMimic: Differentiable World Models for Fast Humanoid Whole-Body Control Training(微分可能ワールドモデルを用い、単一H100 GPU・約3時間の学習でSONIC公開モデル[128 GPU×7日規模]の動作追従評価スコアを上回ったと報告) — SuperMimic Project Page、2026-10-20一次情報
  20. 20.Stochastic Motion Tokenization for Humanoid Whole-Body Control(連続的な全身運動を離散トークン列へ圧縮し、G1実機でダンス・歩行・格闘および約35秒間の連続遷移動作を実証) — arXiv:2610.36452、2026-10-27一次情報
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