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分析13

ロボットハンドの駆動方式を整理する — 腱・リンク・ギアと、劣駆動の違い

Tendonは力の伝達方式、劣駆動は入力と自由度の関係。RUTH、Shadow、LEAP Hand V1などを例に、伝達機構・独立制御・駆動源を分けて比較し、必要腱張力の計算から実タスクでの選定まで整理する。

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ロボットハンドは、「どう力を指に伝えるか」「どの関節を独立に動かせるか」「何で駆動するか」を分けると比較しやすい。 Tendonは力の伝達方式である腱駆動を指し、劣駆動は入力と自由度の関係を指す。 この区別を出発点に、腱、リンク、ギア、ねじ、ベルト、DD・QDDの設計と、選定時に測りたい項目を整理する。

方式は組み合わせられる。RUTHは、腱で動かす劣駆動の指に、形状を変えられるリンク式の掌を組み合わせたハンドだ。 指で把持を保ちながら掌を変形させることで、手の中の物体を動かす。指と掌が異なる役割を受け持つ実例である。[2]

力を伝える機構と、減速比を整理する

次の表は排他的な分類ではなく、よく使われる実装パターンの比較だ。 腱やベルトは伝達経路、関節内蔵モーターは配置、DD・QDDは主に減速の程度を表す。 例えば、低減速のモーターから腱を引く構成もあり、名称だけで設計全体は決まらない。

機構の特徴と設計上の確認点。代表例は各出典に基づき、本紙が比較軸を整理。
方式力の伝え方狙える利点確認点・代表例
腱・ワイヤ駆動紐やワイヤを引き、プーリーなどを介して関節を曲げるモーターを指の外へ置き、指を細く軽くできる摩擦、伸び、緩み、張力調整、腱の交換。Shadow Hand。[3]
リンク駆動棒やクランク、閉リンクで押し引きを伝える両方向の力を伝える構成や、剛性を確保する設計が可能収まり、可動域、姿勢による伝達比の変化。ILDA Hand。[4]
関節内蔵モーター+ギア関節付近に減速機付きモーターを置く関節単位の独立制御、モジュール化指の厚さと重量、放熱、衝撃時のギア損傷。LEAP Hand V1。[5,6,7]
ねじ・直動+リンク回転を直線運動へ変換し、リンクで指を曲げる小型モーターから大きな押し引き力を得る構成摩擦、速度、ストローク、リンクの幾何。送りねじ・四節リンク・ガスばねを使う研究例。[8]
ベルト駆動ベルトとプーリーで離れた軸へ回転を伝えるモーター配置の自由度、他の機構との組み合わせ幅、張力、プーリー配置。DLR/HIT Hand IIは複数の伝達要素を組み合わせる。[9]
DD/QDD減速機なし、または低減速比で駆動する外力で押し戻せる性質を得やすく、接触力を扱う設計に向く同じモータートルクなら、高減速ほどの出力トルク増幅は得られない。QDDの2指ハンドに研究例。[10]

低減速なら必ず安全、リンクなら必ず高精度、という結論にはならない。 接触時の応答には摩擦や制御器が関わり、位置精度にはガタや変形も影響する。方式名は、次に何を測るかを決める手掛かりである。

腱駆動の中にも異なる設計がある

腱は基本的に引く力を伝える。曲げた指を戻すために何を使うか、入力をどう分配するかで、制御と整備の課題が変わる。

構成仕組み利点と確認点
片引き+ばね復帰腱で曲げ、弾性要素で伸ばす駆動を簡素化できるが、曲げる際には復帰力にも逆らう。能動屈曲・受動伸展を採る研究例がある。[18]
拮抗腱曲げる側と伸ばす側の腱を設ける両方向の能動駆動を構成できる。Shadowの記載モデルは1モーターで2本の腱を駆動し、荷重を計測する。[3]
差動分配可動プーリーなどで入力を複数の指へ分ける一部の指が接触しても他の指が閉じ続けられる。Yale OpenHand Model T。[11]
Bowden cable外側のチューブ内に腱を通す駆動部を遠ざけられるが、経路の曲がりに伴う摩擦や往復応答の違いを扱う必要がある。[12]
撚り紐駆動紐をねじると短くなる作用で直動を得る小型の回転・直動変換に使えるが、変位と伝達比は非線形。ハンドへの実装研究がある。[13]

拮抗腱が2本あることと、モーターが2個あることは同じではない。 Shadowの構成はこの違いを示している。[3]入力が1つなら、関節角度とは独立に両側の張力を自由に指定できるとは限らない。剛性まで調整したい場合は、入力数と張力調整機構を確認する必要がある。

細い指ほど、腱の必要張力を計算する

単純な1関節モデルで、指先に必要な力を20N、関節からその力の作用線までの垂直距離を60mm、腱のモーメントアームを5mmと仮定する。 摩擦と復帰ばねを無視した静的な釣り合いは、次のようになる。

同じ指先力でも、腱のモーメントアームを小さくすると必要張力は増える。 設計時には腱の強度だけでなく、固定端、プーリー軸、軸受にかかる荷重を見たい。 多関節の指では姿勢や接触点が変わるため、この単純計算だけで全動作域の性能は決まらない。

小型化の評価には、最大張力に加え、繰り返し負荷後の伸び、位置ずれ、調整時間も含めたい。 モーターを指の外へ移しても、前腕側の駆動部を含む重量と重心は、アームへの取り付けに影響する。

完全駆動・固定連動・劣駆動を分ける

関節の数を数えるだけでは、ハンドが自由に指定できる動きは分からない。 機械的な拘束を考慮した自由度と、独立した駆動入力を確認する必要がある。

構成意味制約と使いどころ
完全駆動独立した自由度に対応する駆動入力を備える関節姿勢を個別に指定する構成に向く。LEAP Hand V1では各関節にモーターを配置。[6]
固定連動複数の関節が決まった関係で動く連動する関節を別々には指定できない。DLR/HIT Hand IIには末端側関節の機械的連動がある。[9]
劣駆動独立した機械的自由度より駆動入力が少ない接触や弾性によって動きを分配できる一方、任意の関節姿勢を直接指定できるとは限らない。Model Tが例。[11]

固定連動では機械的拘束そのものが独立自由度を減らす。そのため、関節数よりモーターが少ないという理由だけで、すべてを同じ劣駆動として扱うと比較を誤る。

qb SoftHand Researchの掲載仕様は、19自由度に対して駆動入力1つだ。 形状に沿わせて把持する構成であり、19軸の姿勢を個別に指令するものではない。[14]一方、RUTHは劣駆動の指で把持しつつ、掌の再構成を使って手内操作を行う。劣駆動という分類だけで、操作能力の有無までは決まらない。[2]

駆動源と、力の伝達方式は組み合わせられる

電動モーターが腱を引く構成も、流体圧を使うアクチュエーターが腱を引く構成もある。 「人工筋肉」という呼び方も一つの作動原理を指すわけではない。エネルギーの供給方法まで見る必要がある。

駆動源仕組み・研究例選定で確認すること
電動モーター腱、ギア、ねじなどを駆動。Shadow、LEAP V1。[3,5]配置、減速比、電流、熱、連続保持時の負担
空気圧圧力で柔らかい指などを変形。RBO Hand 3。[15]コンプレッサー、バルブ、配管を含む構成と応答
液圧・油圧液圧アクチュエーターで腱を引く研究例がある。[16]ポンプ、配管、漏れ対策を含む重量と保守
形状記憶合金(SMA)通電加熱に伴う変形を利用。内部冷却流路を持つ指の研究例。[17]加熱・冷却の時間、温度、繰り返し動作
HASELなどの電気油圧人工筋肉静電力で封入液体を移動させて変形。腱を介した人型ハンドへの実装報告。[18]高電圧の絶縁、出力力、可動域、駆動部の体積

柔らかい指を使う構成でも、必要な付帯設備は方式ごとに異なる。 指先の動画だけで比較せず、電源、圧力源、制御装置まで含めたシステムとして評価したい。

指の関節と掌にも、設計の選択肢がある

関節はピンで回す構成のほか、柔軟な部材を曲げるflexure jointでも作れる。 Yale OpenHand Model Tは柔軟関節を使い、設計オプションとしてピン関節との組み合わせも示す。[11]HASELを使ったハンドの研究には、転がり接触する関節を腱で駆動する例もある。[18]

このため、腱駆動かどうかと、関節が硬いか柔らかいかは別に確認する必要がある。 弾性を利用すると接触に沿いやすくなる一方、荷重による変形を含めて位置や力を推定する課題が生まれる。

掌を動かすRUTHは、把持と操作を分担する設計の例だ。[2]YaleのStewart Handも、並列機構を用いた手内操作の設計例である。[1]必要なのが持ち上げと保持なのか、把持後の向き変更なのかを先に決めれば、指ごとの自由度を増やす案と掌を変形させる案を、同じ作業で比較できる。

ここから先は編集部の評価

取り付けるアームと実タスクから候補を絞る

本紙は、商用の把持・搬送、多指の学習研究、細く軽い指による操作を、初期の比較目的として分けることを勧める。 以下は性能の絶対順位ではなく、試作で比較を始めるための案である。

目的比較を始める案測る項目
2〜3指でつかむ・保持する・運ぶねじ+リンク、ギア+リンク連続保持力、指先交換時間、ガタの増加、停止時の保持
多指の学習・操作研究関節ごとの減速機付きモーター関節状態の取得、衝突後の復帰、温度、指単位の修理性
細く軽い多指掌内モーター+短い腱経路張力調整・腱交換の時間、負荷時の位置ずれ、指先力の推定

後付けハンドでは、指だけの重量より、モーター、基板、取付部、配線を含む重量と重心が効く。 駆動部を前腕へ逃がす案では、その場所を既存アームに確保できるかも確認したい。 同じ対象物、姿勢、保持時間で試験し、最大力だけでなく連続稼働と保守にかかる時間を比較する。

学習用途では、指令値と実測関節位置、接触情報をどこまで記録できるかも重要だ。 腱の伸びや連動関節を含む機構では、モーター角だけから分かる状態に限界がある。実機RLのコラムで扱った行動と結果の対応づけは、ハンドの伝達機構とセンサー配置から始まる。

腱で指を軽くする、リンクで動きを決める、関節モーターで独立制御を組む、低減速で接触を扱いやすくする。 得たい利点を定めたうえで、そのために引き受ける摩擦、重量、発熱、整備工数を実タスクで比較することが、方式選定の出発点になる。

関連コラム:DYNAMIXELの選び方

出典

  1. 1.Yale OpenHand Project — Stewart Hand Yale GRAB Lab一次情報
  2. 2.The RUTH Gripper: Systematic Object-Invariant Prehensile In-Hand Manipulation via Reconfigurable Underactuation Robotics: Science and Systems一次情報
  3. 3.Dexterous Hand — Motor Unit Shadow Robot Company一次情報
  4. 4.Integrated linkage-driven dexterous anthropomorphic robotic hand Nature Communications一次情報
  5. 5.LEAP Hand V1 — Parts LEAP Hand研究チーム一次情報
  6. 6.LEAP Hand V1 — Assembly LEAP Hand研究チーム一次情報
  7. 7.XC330-M288-T — Specifications ROBOTIS e-Manual一次情報
  8. 8.Three-Fingered Robot Hand with Gripping Force Generating Mechanism Using Small Gas Springs Junya Tanaka / Journal of Robotics and Mechatronics一次情報
  9. 9.Multisensory Five-Finger Dexterous Hand: The DLR/HIT Hand II DLR・HIT / IROS一次情報
  10. 10.Development of a Novel Impedance-Controlled Quasi-Direct-Drive Robotic Hand 研究チーム / arXiv一次情報
  11. 11.Yale OpenHand Project — Model T Yale GRAB Lab一次情報
  12. 12.Antagonistic Bowden-Cable Actuation of a Lightweight Robotic Hand 研究チーム / arXiv一次情報
  13. 13.Designing Anthropomorphic Robot Hand with Active Dual-Mode Twisted String Actuation Mechanism and Tiny Tension Sensors KAIST研究業績データベース一次情報
  14. 14.qb SoftHand Research — 製品掲載情報 FANUC America / qbrobotics一次情報
  15. 15.RBO Hand 3 — A Platform for Soft Dexterous Manipulation 研究チーム / arXiv一次情報
  16. 16.A Robot Hand Driven by Hydraulic Cluster Actuators 著者公開論文 / Carnegie Mellon University一次情報
  17. 17.Shape memory alloy tube actuators inherently enable internal fluidic cooling for a robotic finger under force control Ades et al. / Smart Materials and Structures一次情報
  18. 18.A Sensorless, Inherently Compliant Anthropomorphic Musculoskeletal Hand Driven by Electrohydraulic Actuators 研究チーム / arXiv一次情報
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