何が起きたか
全日本空輸は2026年8月21日、関西空港にいる自社グループ職員が広島空港に配置したアバターロボットを介して乗客に搭乗手続きなどを案内するサービスを開始した。ロボットは全日空グループ発のベンチャー企業アバターインが開発した「newme」で、広島空港に2台設置。10月末までに小松、鳥取、長崎、対馬の各空港にも1~2台を順次配備し、関西空港の職員が常時2~3人で遠隔対応する。
本紙の見方
今回の全日空の取り組みは、空港業務における遠隔操作型アバターロボットの実用化という点で、国内航空業界では先行事例となる。従来の空港案内は現地スタッフが担うのが一般的だったが、関西空港の職員が広島空港のロボットを遠隔操作することで、人材を物理的な配置から解放し、インバウンド需要の高い空港に言語対応力のある職員を「仮想的に」配置できるようにした。これは、空港運営の労働力不足への一つの解となり得る。 本紙は2026年8月21日、農業用ドローン販売のALLYNAV AG/JAPANの記事を報じた。同社は自動操舵から農業用ドローン、農業ロボティクスへと事業領域を広げており、遠隔操作や自動化技術を異なる産業に応用する動きが加速している。全日空のアバターロボットも、遠隔操作技術をサービス業に応用した点で共通する。ただし、ALLYNAVの場合は農業という生産現場での効率化が目的であるのに対し、全日空は顧客サービスと人材活用の効率化が主眼であり、応用領域の違いが明確だ。 また、アバターインは全日空グループ発のベンチャーであり、大企業が社内ベンチャーを通じて新技術を実用化するモデルは、近年の日本企業に広がりつつある。例えば、JR東日本は駅業務に遠隔操作ロボットを導入しており、同様の動きが交通インフラ各社で見られる。全日空の今回の取り組みは、こうした流れの中で、空港という不特定多数の顧客が利用する公共空間での実証として位置づけられる。 一方で、今回のサービスはあくまで実証段階であり、効果検証が今後の焦点となる。具体的には、①遠隔操作による案内の品質が対面と同等かどうか、②導入コストに見合う人員削減効果が得られるか、③障害発生時の対応体制が整備されているか、の3点を確認する必要がある。特に、ロボットの操作に慣れていない乗客が戸惑う可能性や、通信障害時のバックアップ体制は、実運用上の課題として挙げられる。 さらに、今回の導入は広島空港の2台から始まり、10月末までに4空港に拡大する計画だが、その後の全国展開は未定である。全日空がこのサービスを本格導入するかどうかは、実証結果次第とみられる。また、アバターインが他社の空港や鉄道、商業施設などに同様のサービスを展開する可能性もあり、今後の動向が注目される。
なぜ重要か
空港業務への遠隔操作ロボット導入は、人手不足に悩む地方空港にとって、人材を物理的に配置せずにサービス品質を維持する手段となる。全日空の取り組みが成功すれば、他の航空会社や空港運営会社にも波及し、空港サービスの標準的な形が変わる可能性がある。
日本への影響
日本の空港ではインバウンド需要の増加に伴い、多言語対応スタッフの不足が課題となっている。今回の遠隔操作システムは、都市部の空港にいる多言語対応可能な職員を地方空港に仮想的に配置できるため、地方空港のサービス向上に寄与する可能性がある。また、アバターインのようなベンチャーが生まれることで、日本のロボット産業の新たな市場が開けるとみられる。