何が起きたか

株式会社ZEALS(ジールス)は、医療法人桂名会 重工大須病院(名古屋市中区、250床)において、2026年8月26日から28日までの3日間、準国産コンパクトヒューマノイド「D1」を用いた実証実験(PoC)を実施した。検証したのは①来院者の案内、②軽量物運搬、③配茶機を用いたお茶の準備、④下膳補助、⑤体操進行の5業務で、人との接触およびD1の転倒はゼロで完了した。D1は全高約129.3cm、走行ベース幅約48cmで、価格は1体500万円から。2026年8月5日より導入相談・販売受付を開始している。

詳細

実証は、株式会社CUCの協力のもと、医療法人桂名会 重工大須病院で実施された。1日目はD1の搬入、ネットワーク接続、院内マップ作成、ナビゲーション調整、案内タスクの事前テスト。2日目は案内、軽量物運搬、下膳、配茶機操作を個別に検証し、3日目に最終検証とデータ収集を行った。配茶業務では、操作パネルの「とろみなし・薄い・中間・濃い」の文字読み取り、音声指示によるボタン選択を試行し、遠隔操作を併用した。下膳補助では、トレーの把持・水平保持・下膳車への積み込みに加え、カメラとマルチモーダルAIによる食事残量確認機能を検証した。体操進行では、患者が模倣しやすい動作速度・大きさを調整しながら複数の体操動作を実施した。D1は、世界水準の技術・部品を取り入れつつ、AI、ソフトウェア、制御、組立、導入・運用をジールスが国内主導で進める「準国産」と位置づけられる。

Key Facts

ジールスは2026年8月26日から28日まで、重工大須病院で準国産ヒューマノイド「D1」を用いた実証実験を実施し、5つの院内業務を検証した。[1]
検証した業務は、来院者の案内、軽量物運搬、配茶機を用いたお茶の準備、下膳補助、体操進行の5つ。[1]
3日間を通じて人との接触およびD1の転倒はゼロで、所定の検証項目を完遂した。[1]
D1は全高約129.3cm、走行ベース幅約48cmのコンパクト設計で、価格は1体500万円から。2026年8月5日より導入相談および販売の受付を開始している。[1]
ジールスは2026年3月に筑波大学附属病院で「Unitree G1」に「Omakase OS」を搭載した実証実験を実施し、2026年6月には「Galaxea R1 Pro」を用いた検証を行った。[1]

本紙の見方

今回の実証は、ジールスがこれまで取り組んできたOS(Omakase OS)とAIモデル(Omakase Zen)に加え、ハードウェアまで自社開発した「D1」を初めて実際の医療現場に投入した点で、同社の戦略が「ソフトウェア提供」から「ハードウェア一体型の垂直統合」へと移行したことを示す。2026年3月の筑波大学附属病院での実証では市販機「Unitree G1」にOSを搭載し、同年6月には双腕モバイルマニピュレーター「Galaxea R1 Pro」でマニピュレーション知能基盤を検証してきた。今回のD1は、これらの知見を統合し、日本の狭い屋内環境を想定した国産ハードウェアとして開発された。 注目すべきは、D1の価格設定と販売開始時期である。1体500万円からという価格は、産業用ロボットと比較して低価格帯に位置し、2026年8月5日から販売受付を開始している。これは、実証実験の段階を超えて、商用化を見据えた動きとみられる。ただし、今回の実証では配茶・下膳などの双腕を用いる業務で遠隔操作を併用しており、自律性の精度向上が課題として残る。 業界構造への含意として、ジールスが「準国産」を標榜し、AI・ソフトウェア・制御・組立・導入運用を国内主導で進める方針は、中国製ヒューマノイド(Unitreeなど)が台頭する中で、日本国内でのサプライチェーン構築を意識したものとみられる。特に、医療現場という規制が厳しく、安全性が最優先される領域での実証データは、他社が容易に模倣できない参入障壁となる可能性がある。 一方で、今回の実証は3日間という短期間であり、5つの業務それぞれの検証項目は限定的である。特に、配茶・下膳での遠隔操作の併用は、実用化に向けては自律化の度合いが焦点となる。また、D1の量産体制や、実際の導入先での運用コスト、医療従事者以外の担い手による運用可能性などは、今回の発表からは明らかでない。今後の検証では、これらの点が問われることになる。

なぜ重要か

ジールスが自社開発ハードウェア「D1」を医療現場に投入し、5つの業務を検証したことは、ヒューマノイドの社会実装が「ソフトウェア単体」から「ハードウェア一体型」へと進む転換点を示す。医療現場での実証データは、今後のヒューマノイドの安全性・信頼性の基準づくりに影響を与える可能性があり、国内ロボット産業の競争構図を変える一歩となる。

日本への影響

ジールスが「準国産」を掲げ、AI・ソフトウェア・制御・組立を国内主導で進める方針は、日本の狭い屋内環境に適したヒューマノイドの開発を促進する。医療現場での実証は、日本の医療機関が抱える人手不足という固有の課題に直結しており、国内での需要が見込まれる。一方で、主要部品の多くを海外に依存する現状では、部品の内製化や国内サプライチェーンの構築が今後の競争力の鍵となる。