何が起きたか

ブリュッセル自由大学(VUB)は2026年8月18日、自己修復機能を持つソフトロボットを開発する欧州プロジェクト「RESSORT」を発表した。4年間のHorizon Europeプロジェクトで、ベルギー、デンマーク、ドイツ、ギリシャ、ノルウェー、スウェーデン、スイスの7カ国・14機関が参画する。プロジェクトは2026年8月に開始され、医療、食品産業、産業点検の3分野で実証機を開発する。

詳細

RESSORT(Resilient Efficient Soft and Sustainable Optimized Robotics Technology)は、VUBのBram Vanderborght教授が主導する。プロジェクトは、埋め込みセンサーによる損傷検知、特許取得済みの自己修復材料、タスクに応じて軟らかい状態と硬い状態を切り替える可変剛性構造を組み合わせる。自己修復技術にはVUBのスピンオフ企業Valence TechnologiesのHEALANT技術を採用する。3次元触覚センサーはベルギーのチップメーカーMelexisと共同開発する。実証機は、リハビリ用のパーソナライズドソフト外骨格、食品産業向けの適応型ロボットシステム、変形可能なドローン(インフラ点検用)の3つ。VUBはJ. Schmalz GmbHとともに自己シール式吸盤の開発と自己修復材料のロボットシステムへの統合を進める。

Key Facts

VUBは2026年8月18日、自己修復ソフトロボット研究プロジェクト「RESSORT」を発表した。[2]
RESSORTはHorizon Europeの資金提供を受け、4年間のプロジェクトで、ベルギー、デンマーク、ドイツ、ギリシャ、ノルウェー、スウェーデン、スイスの14機関が参画する。[1]
プロジェクトはVUBのBram Vanderborght教授が主導し、2026年8月に開始される。[1]
自己修復技術にはVUBのスピンオフ企業Valence TechnologiesのHEALANT技術を採用する。[2]
3次元触覚センサーはベルギーのチップメーカーMelexisと共同開発する。[1]

本紙の見方

今回の発表は、ソフトロボットの実用化に向けた欧州の研究開発の一環と位置づけられる。従来のソフトロボットは、柔軟性による安全性が評価される一方、耐久性やセンシング、製造、信頼性の課題から実験室の域を出なかった。RESSORTは、自己修復材料、可変剛性構造、3次元触覚センサー、環境適応型AI、多材料3Dプリンティングを組み合わせ、これらの課題を克服しようとする点で、既定路線の延長線上にあるが、損傷の検知から修復、機能回復の検証までを一貫して行う「損傷から回復までの完全サイクル」を掲げる点に新規性がある。 本紙の過去報道との接続では、imecが参画している点が注目される。本紙は2026年8月21日に、ティアフォーがimecのAutomotive Chiplet Programに加盟したと報じた。imecは自動運転向けチップレット技術の開発を進めており、今回のRESSORTでは触覚センサーや自己修復材料の統合に貢献する。自動運転とソフトロボティクスは異なる分野だが、imecがセンサー技術と半導体製造の知見を両方に提供する構図は、欧州の半導体研究機関がロボティクス分野でも中核的な役割を担うことを示す。 業界構造への含意としては、自己修復材料と可変剛性構造の組み合わせが、ロボットの運用コストと耐久性に影響を与える可能性がある。特に、食品産業向けのロボットは、柔らかい物体を傷つけずに扱うことが求められ、触覚センサーの精度が鍵となる。Melexisとの共同開発は、センサーの低コスト化と量産化につながる可能性があり、ソフトロボットの普及を後押しする。また、J. Schmalz GmbHとの自己シール式吸盤の開発は、真空吸着技術を持つ同社の強みを活かしたもので、産業用ロボットのグリッパー市場に影響を与える可能性がある。 未確定の論点としては、自己修復材料の実用化時期とコスト、触覚センサーの性能(感度や耐久性)、3つの実証機の具体的な性能目標が挙げられる。また、プロジェクトの成果がどのように商業化されるかも不明である。Valence TechnologiesのHEALANT技術は特許取得済みだが、そのライセンス供与や量産体制は今後の課題となる。

なぜ重要か

RESSORTは、ソフトロボットの耐久性と信頼性を向上させることで、医療、食品、インフラ点検といった分野での実用化を目指す。自己修復技術と触覚センサーの進展は、ロボットの安全性と運用効率を高め、人間とロボットの協働を拡大する可能性がある。欧州が主導するこのプロジェクトは、ソフトロボティクス分野における欧州の競争力を強化する一歩となる。

日本への影響

日本のロボット産業は、産業用ロボットで強みを持つが、ソフトロボティクスや自己修復材料の分野では欧州が先行している。RESSORTの成果は、食品産業や介護分野での応用が期待され、日本の製造業や介護ロボット市場に影響を与える可能性がある。特に、触覚センサーや自己修復材料の技術は、日本の部品メーカーにとって新たなビジネス機会となる一方、欧州勢の技術優位が進めば、日本のロボットメーカーは技術提携やライセンス導入を検討する必要が出てくる。