何が起きたか
ノースカロライナ州立大学(NC State)の研究チームは2026年8月28日、赤外光にさらされている限り跳び続ける涙滴型ソフトロボットを発表した。このロボットは液晶エラストマー製のリボンを涙滴型にし、一端にV字型のアルミニウム管を備える。赤外光で表面が収縮してねじれが蓄積し、臨界点で解放されることで跳躍する。設計変更により、V字の角度が120度なら這行、90度なら前方跳躍、50度なら垂直跳躍となる。実証試験では、斜面やハードル、草、砂、岩、マルチなどの多様な地形を跳躍できた。
詳細
ロボットは液晶エラストマー製のリボンを涙滴型にし、一端にV字型のアルミニウム管を備える。赤外光を当てるとリボン表面が収縮して回転し、V字が回転を妨げることでねじれが蓄積。臨界点でエネルギーが解放され、V字が地面を叩いて跳躍する。エネルギー解放後は元の形状に戻り、光が当たっている限り自己リセットして繰り返す。V字の角度を120度にすると這行、90度で前方跳躍、50度で垂直跳躍となる。また、涙滴の丸い端に少量の重りを追加すると重心が変わり、より力強く安定した前方運動になる。赤外光の強度は跳躍に十分な強さが必要だが、強すぎると不規則な方向に跳躍する。実証試験では、斜面、ハードル、草、砂、岩、マルチなどの多様な地形で跳躍できた。最適化設計では、垂直跳躍が80体長超、前方跳躍が3体長超を達成した。論文はPNASに掲載され、DOIは10.1073/pnas.2607940123。研究は米国科学財団(NSF)の助成金(2329674、2445551、2527304)による。
Key Facts
| NC Stateの研究チームは、赤外光にさらされている限り跳び続ける涙滴型ソフトロボットを開発した。 | [1] |
| ロボットは液晶エラストマー製のリボンとV字型アルミニウム管で構成され、ねじれで弾性エネルギーを蓄え自己リセットする。 | [1] |
| V字の角度を120度にすると這行、90度で前方跳躍、50度で垂直跳躍となる。 | [1] |
| 最適化設計では、垂直跳躍が80体長超、前方跳躍が3体長超を達成した。 | [1] |
| 論文はPNASに掲載され、DOIは10.1073/pnas.2607940123。 | [1] |
本紙の見方
今回の成果は、ソフトロボティクスにおける自己リセット型の連続跳躍という新機構を実証した点で画期的だ。従来のソフトロボットの跳躍は、外部からのリセットや複雑な制御が必要だったが、この設計はねじれによる弾性エネルギーの蓄積と解放を利用し、光が当たっている限り自動的に繰り返す。この単純さは、環境適応型の移動手段として有望であり、特に不整地での探査や群ロボティクスへの応用が期待される。 本紙の過去記事では、Boise State大学の月面ロボット「Bender 5.0」が2027年のNASA Lunabotics Challengeに向けて開発されていることを報じた。月面のような過酷な環境では、エネルギー効率と自己リセット能力が重要であり、今回の光駆動型ソフトロボットは、太陽光を利用した持続的な移動手段として、将来の宇宙探査に応用できる可能性がある。ただし、現時点では実用化には程遠く、光強度の制御や耐久性など課題も多い。 業界構造への含意としては、ソフトロボティクスの分野で、エネルギー供給と自己リセットの簡素化が進めば、従来のモーターやバッテリーに依存しない新しい駆動方式が生まれる可能性がある。特に、光エネルギーを直接利用する方式は、配線や充電の制約から解放されるため、小型化や軽量化に寄与する。また、設計パラメータの変更で移動モードを切り替えられる点は、多様な地形に対応するロボットの設計自由度を高める。 未確定の論点としては、実用化に向けた耐久性や光強度の制御、さらにはスケールアップの可能性が挙げられる。また、今回の研究は基礎的な段階であり、具体的な応用先はまだ示されていない。今後は、実際の環境での長期間運用試験や、他の駆動方式との比較検証が待たれる。
なぜ重要か
この研究は、ソフトロボットの自己リセット機構という根本的な課題に対する新しい解決策を示した。光エネルギーだけで連続的に跳躍できることは、エネルギー供給の制約を減らし、環境モニタリングや災害救助など、長時間の自律運用が求められる分野での応用可能性を広げる。
日本への影響
日本のロボット産業は、精密なモーター制御やセンサー技術に強みを持つが、今回のような光駆動型ソフトロボットは、従来のアクチュエータに依存しない新しい駆動方式として、日本の部品メーカーにとっては脅威となる可能性がある。一方で、液晶エラストマーなどの材料技術や、光制御技術においては、日本の材料メーカーが貢献できる余地がある。