何が起きたか

同社は大型トラックおよび小型商用車向けに、電動化、レベル4自動運転までのADAS、ソフトウェア・ディファインド・ビークル(SDV)技術を展示する。出展ブースはハノーバー・メッセのホール20、ブース30。

詳細

ヴァレオはIAA Transportation 2026で、電動バス・トラック向けのインバータ一体型電動コンプレッサ「EDC-120」、スマートヒートポンプ、高電圧クーラントヒーター、電動推進システムなどを展示する。自動運転関連では、ADASドメインコントローラーや単一SoCによるADAS+IVI統合型、モジュール式マルチドメイン中央演算ユニットなどのコンピューティングユニット、LiDAR・カメラ用洗浄システム、ソフトウェア群「ヴァレオ anSWer」を紹介する。また、トラック用「AquaBlade™」ワイパーシステム、21.6インチ4K曲面タッチスクリーンディスプレイ、マイクロモビリティ向け「Cyclee™ by Valeo」のGO7 Gen4ドライブユニット(48Vモーターと7速オートマチックトランスミッション統合、130Nmトルク、最大1,000Wピークパワー、最大250kgの商用貨物を運搬)と新型PixelRide HMIも展示する。

Key Facts

ヴァレオは電動化、レベル4自動運転までのADAS、SDV技術におけるリーダーシップを加速するとしている。[1]
ヴァレオは「Cyclee™ by Valeo」によりラストマイル配送市場に参入し、GO7 Gen4ドライブユニットは最大250kgの商用貨物を運搬できる。[1]
ヴァレオの2025年売上高は209億ユーロ、2026年2月26日時点で約100,000名の従業員、29カ国で149カ所の生産拠点を有する。[1]
ヴァレオはリマニュファクチャリングで6,000品番以上を展開し、平均して素材の80%以上を再利用することを目指している。[1]

本紙の見方

今回の発表は、ヴァレオが商用車分野を成長の柱と位置づけ、電動化と自動運転の両軸でポートフォリオを拡充する姿勢を明確にしたものだ。注目すべきは、単なる部品供給ではなく、ADASセンサー、センサー洗浄、コンピューティング、ソフトウェア(anSWer)までを一貫して提供する「システム・オブ・システムズ」の構築を打ち出している点である。これは、自動運転の重要コンポーネントで垂直統合を進めるファーウェイの戦略と軌を一にする。本紙が既報の通り、ファーウェイは電動ブレーキとSBWに参入し、自動運転の重要コンポーネントを自社開発している。ヴァレオもまた、センサーから計算基盤、ソフトウェアまでを内製化することで、自動運転時代のサプライチェーンにおける主導権を握ろうとしているとみられる。さらに、ヴァレオは脱レアアースモーターの開発を進めている。本紙が既報の通り、ヴァレオ・ニッパツ・アステモは中国のレアアース輸出規制を受け、希土類を使わないモーター技術の開発を進めている。今回のIAA出展では電動コンプレッサや電動推進システムなど電動化製品を前面に出すが、モーターの磁石に依存しない技術は、電動トラックの量産においてサプライチェーン上のリスクを低減する鍵となる。中国のレアアース規制は、モーターだけでなく、センサーやバッテリーなど広範な部品に影響を及ぼす可能性があり、ヴァレオの脱レアアース開発は、商用車の電動化戦略を支える基盤技術として位置づけられる。業界構造への含意として、ヴァレオが商用車向けに「Truck Valeo Smart Safety 360」やADASドメインコントローラーを提供することは、トラックOEMが自動運転機能を自社開発する負担を軽減する。一方で、こうしたターンキー的なソリューションの提供は、OEMの技術的差別化を難しくする可能性もある。ヴァレオは「OEMのお客様から信頼を得てきた」と述べるが、受注増加の具体的な内訳や顧客名は明らかにされていない。未確定の論点としては、まず「Cyclee™ by Valeo」のGO7 Gen4ドライブユニットの量産規模と販売台数が挙げられる。ラストマイル配送市場での実績がまだ不明であり、既存の物流事業者への浸透度が焦点となる。また、ADASセンサーやコンピューティングユニットの具体的な搭載車種やOEMとの契約状況は公開されておらず、今後の発表が待たれる。さらに、脱レアアースモーターの実用化時期や性能(トルク密度など)も未公表であり、電動トラックの航続距離やコストに与える影響を評価するには情報が不足している。

なぜ重要か

ヴァレオの商用車向けソリューションの拡充は、自動運転トラックの実用化に向けたサプライチェーンの再編を示唆する。部品単体ではなく、センサー・計算・ソフトウェアを統合した提案が主流になれば、日本の部品メーカーは従来の強みを活かすため、システム統合能力やソフトウェア開発力の強化が求められる。

日本への影響

ヴァレオの脱レアアースモーター開発は、中国の輸出規制への対応として、日本の素材・部品メーカーとの協業を促進する可能性がある。本紙が既報の通り、ヴァレオ・大同特殊鋼・ニッパツは脱レアアースモーターの開発を進めている。日本の特殊鋼や精密部品の技術は、こうした開発において重要な役割を果たすとみられる。一方で、ヴァレオがADASやSDVでシステム提案を強化すれば、日本の部品メーカーは単品供給からシステム部品へのシフトを迫られる可能性がある。