何が起きたか

V3D Asia株式会社は2026年8月27日、土木用途に特化した3Dコンクリートプリンター(土木3DCP)の開発を本格始動すると発表した。土木・技術パートナー第1号として、佐賀市で1979年創業の特殊土木企業・株式会社富士建(代表取締役社長:角和樹)を迎える。初期の現場実証は佐賀県内をはじめとする九州の現場を中心に実施し、国土交通省の新技術情報提供システム「NETIS」への登録を目指す。

詳細

V3D Asiaは3DCPのプリンター、材料、造形・制御等のコア技術と事業化を担い、富士建は特殊土木、建設機械・ロボティクス及び現場実装の知見を基に、土木用途の要求条件、施工性、安全性及び現場適合性について技術的に参画する。開発は4段階で進め、第1段階で適用候補・要求条件・実証条件を設定、第2段階で実証仕様を策定、第3段階で実証と検証、第4段階でNETIS登録に向けた申請準備を進める。各段階の開始時期、実証場所、適用対象、評価方法などの詳細は、関係者との調整後に順次公表する。富士建の角和樹社長は、建設機械遠隔操縦システム「KanaTouch(カナタッチ)」を展開するカナモトのニュープロダクツ室技術顧問を務めている。

Key Facts

V3D Asiaは2026年8月27日、土木3DCPの開発を本格始動すると発表した。[1]
土木・技術パートナー第1号として、佐賀市の株式会社富士建(1979年創業)を迎えた。[1]
初期の現場実証は佐賀県内をはじめとする九州の現場を中心に実施し、NETIS登録を目指す。[1]
富士建の角和樹社長は、カナモトの建設機械遠隔操縦システム「KanaTouch」の技術顧問を務めている。[1]
開発は4段階で進め、第4段階でNETIS登録に向けた申請準備を進める。[1]

本紙の見方

今回の発表は、V3D Asiaがアジアで培ってきた3DCP技術を日本の土木現場に適合させるための第一歩と位置づけられる。特筆すべきは、単なる技術供与ではなく、現場知見を持つ富士建を「土木・技術パートナー」として開発プロセスに組み込んだ点だ。V3D Asiaはプリンター・材料・造形技術を、富士建は特殊土木の施工経験と建設機械・ロボティクスの知見を提供し、両社の専門領域を接続する体制を取る。これは、技術起点ではなく現場課題起点の開発を目指す姿勢の表れであり、土木現場の固有の制約(地形、気象、施工ヤード、搬入・設置、品質管理、周辺作業との干渉)を開発要件に反映させる狙いがある。 本紙の過去報道では、UBTECHが医療分野でのヒューマノイド応用を進める一方、IFRはロボットが雇用に与える影響について「単純に労働者を置き換えるものではない」とするポジションペーパーを公表している。今回の土木3DCP開発は、建設現場の担い手不足への対応や安全性向上を掲げており、ロボット技術が労働力不足を補完するというIFRの主張と軌を一にする。また、EE Times Asiaが指摘した「物理AI時代の到来」は、建設現場におけるデジタル設計データと造形プロセスの統合という形で具体化されつつある。 業界構造への含意として、建設業界では3DCPの導入が建築分野から土木分野へ広がる兆しが見える。土木現場は建築と異なり、法面保護や地盤改良、維持補修など多様な工種があり、それぞれに異なる要求仕様が求められる。V3D Asiaは今後、工種・技術領域および地域に応じて複数の建設会社との連携を拡大する方針であり、パートナー企業のネットワークが競争力の鍵を握る。富士建の角和樹社長がカナモトの技術顧問を務めている点も、建設機械の遠隔操縦技術との連携可能性を示唆しており、サプライチェーン全体での技術統合が進む可能性がある。 一方、未確定の論点も多い。NETIS登録は本発表時点では完了しておらず、実証結果に応じて仕様や評価方法を改善するとしている。具体的な実証場所や適用対象、評価方法は「関係者との調整後に順次公表」とされ、現時点では明らかでない。また、土木3DCPの造形サイズや層厚、施工速度などの具体的な性能値も未公表であり、今後の実証を通じて明らかになる見込みだ。さらに、NETIS登録が国による性能保証や採用保証を意味しない点も留意が必要で、実用化には実証データの蓄積が不可欠となる。

なぜ重要か

建設業界の担い手不足と安全性向上が喫緊の課題となる中、3DCP技術の土木分野への適用は、施工プロセスのデジタル化と機械化を促進する可能性がある。V3D Asiaと富士建の連携は、技術と現場知見の融合モデルとして、今後の建設ロボティクス開発の方向性を示す一例となる。

日本への影響

日本の建設現場は、地形や気象条件が多様で、建築分野とは異なる制約が存在する。V3D Asiaが富士建の現場知見を開発に組み込むことで、日本の土木現場に適した3DCP技術の確立が期待される。また、富士建が持つ建設機械の遠隔操縦・ロボティクスの知見は、カナモトの「KanaTouch」のような遠隔操縦システムとの連携可能性を示唆しており、日本の建設機械産業とのシナジーが生まれる可能性がある。