何が起きたか

自動運転用オープンソースソフトウェア「Autoware」を開発するティアフォー(本社:東京都品川区、CEO:加藤真平)は、2026年3月10日、ベルギー・ルーベンに本部を置く研究開発機関imecが運営するAutomotive Chiplet Program(ACP)に加盟したと発表した。加盟を通じ、高速な3次元点群処理を可能にするLiDARアクセラレーターの開発実績を基盤に、AIベースの自動運転に最適化されたAIアクセラレーターの研究を加速させる。

詳細

ACPへの加盟では、他の加盟企業と連携し、特定の機能に特化したハードウェアアクセラレーターの設計を重点領域とする。ティアフォーは、チップレット技術を活用し、認識技術における知見を他の演算ユニットとともにSoCへ直接統合することで、次世代の自動運転システムに不可欠な低遅延と高い効率性を実現する。また、ACPにおいて世界の主要企業とともに車載チップレットの共通基盤となる標準規格の策定に取り組み、The Autoware FoundationのOpen AD Kitや自社のCo-MLOpsプラットフォームで最先端の半導体技術を活用した開発を可能にする。

Key Facts

ティアフォーは2026年3月10日、imecが運営するAutomotive Chiplet Program(ACP)に加盟した。[1]
加盟により、LiDARアクセラレーターの開発実績を基盤に、AIアクセラレーターの研究を加速させる。[1]
チップレット技術を活用し、認識技術の知見を他の演算ユニットとともにSoCへ直接統合する。[1]
ACPでは、世界の主要企業とともに車載チップレットの共通基盤となる標準規格の策定に取り組む。[1]
ティアフォーは2026年8月14日、JSTの「次世代エッジAI半導体研究開発事業」への参画を発表した。[2]

本紙の見方

今回のACP加盟は、ティアフォーが自動運転ソフトウェア「Autoware」の開発主体から、半導体ハードウェアの設計領域へと戦略の幅を広げる動きと位置づけられる。従来、ティアフォーはソフトウェアとリファレンスデザインを中心にエコシステムを構築してきたが、ACPへの加盟により、チップレットアーキテクチャという半導体のモジュール化手法を自社の戦略に取り込む。これにより、自動車メーカーは特定の半導体企業に依存することなく、用途に応じて最適なプロセッサーを選択できるようになる。 本紙の過去記事(2026年8月14日付)では、ティアフォーがJSTの次世代エッジAI半導体事業に参画し、E2E自動運転AIの推論処理を効率化するAIチップの論理設計とオープンソース化を目指すことを報じた。今回のACP加盟は、その流れを補強するものだ。JST事業ではアカデミアのシーズを活用した研究開発が中心となるが、ACPではimecの半導体・システム統合の知見と、ティアフォーの自動運転ソフトウェアおよびリファレンスプラットフォームの技術力を融合させる。つまり、ティアフォーは産学連携の両輪で半導体戦略を進めているとみられる。 業界構造への含意として、チップレット技術の採用は、自動運転SoCのサプライチェーンに変化をもたらす可能性がある。従来は一社がSoC全体を設計・供給する垂直統合型が主流だったが、チップレットでは機能ごとに最適なチップを組み合わせるため、複数企業が部品単位で参入できる。ティアフォーがACPで標準規格策定に関与することで、オープンなエコシステムの形成を主導し、自社の「Autoware」が動作するハードウェアの選択肢を広げる狙いがある。 未確定の論点としては、ACP加盟による具体的なチップレット製品の量産時期や、AIアクセラレーターの性能目標(演算能力や消費電力)は今回の発表では明らかにされていない。また、JST事業との連携により、どのようなチップレット設計が実際に車載レベル4向けSoCとして実装されるのか、今後の詳細な技術ロードマップが焦点になる。

なぜ重要か

ティアフォーのACP加盟は、自動運転ソフトウェア企業が半導体設計の標準化に直接関与する事例であり、自動運転SoCの調達構造を変える可能性がある。自動車メーカーにとっては、特定の半導体ベンダーに依存しない選択肢が広がり、結果として自動運転システムのコストと柔軟性に影響を与える。

日本への影響

日本の自動車産業にとって、チップレット技術の標準化は、半導体調達の多様化につながる。ティアフォーがACPで標準規格策定に関与することで、日本の自動運転技術が国際的な半導体エコシステムに組み込まれる可能性がある。ただし、具体的な日本企業への影響は今回の発表からは明らかでない。