何が起きたか
Seres(601127.SS)の子会社である賽力斯科技は2026年6月9日夜、新AI自動車ブランド「AIVA」とコンセプトカー「AIVA Origin Concept」を発表した。量産第1弾「AIVA ME7」は年内に20万元(約2万9500米ドル)超の市場をターゲットに投入予定。AIVAの自動運転システムは華為技術の「乾崑ADS」を使用せず、ByteDance傘下のVolcano Engineと共同定義し、Doubao大規模言語モデルを中心としたインテリジェントコックピット体験の構築に注力する。自動運転ソリューションではDeepRoute.aiとの提携が取り沙汰されている。
詳細
賽力斯科技の前身は2023年に設立された藍電(Landian)ブランドで、2026年5月25日に約66.7億元(約9億8430万米ドル)の増資を完了。重慶の地方政府系プラットフォームである沙磁智遠が34.3億元(約5億660万米ドル)を出資し、34.5%の筆頭株主となった。Seresの出資比率は32.96%に低下し、第2位株主となった。5月29日に重慶賽力斯科技に社名変更。AIVAブランド名は「Artificial Intelligence Voyage Ahead」の頭文字。AIVAプレジデント兼プロダクトマネージャーの李博氏は「AIは人と車の関係を変え、車を道具から理解者へと変える」と述べた。Volcano Engine副社長の楊麗偉氏は「AIVAはVolcano Engineと手を組み、AI自動車体験を共同定義・共同設計・共創する」と述べ、Doubao大規模言語モデルやインテリジェントコックピットソリューションなどの技術サービスを提供するとした。2025年10月にはSeres子会社の重慶鳳凰科技がVolcano Engineと身体化知能事業で枠組み合意を締結していた。ByteDanceは6月6日、自動車製造の計画はなく、賽力斯科技との資本関係もないと明確化した。
Key Facts
| Seres子会社の賽力斯科技は2026年6月9日、新AI自動車ブランド「AIVA」とコンセプトカー「AIVA Origin Concept」を発表した。 | [1] |
| 量産第1弾「AIVA ME7」は年内に20万元(約2万9500米ドル)超の市場をターゲットに投入予定。 | [1] |
| AIVAの自動運転システムは華為技術の「乾崑ADS」を使用せず、ByteDance傘下のVolcano Engineと共同定義し、Doubao大規模言語モデルを中心としたインテリジェントコックピット体験の構築に注力する。 | [1] |
| 2026年5月25日、藍電科技は約66.7億元(約9億8430万米ドル)の増資を完了し、重慶の地方政府系プラットフォーム沙磁智遠が34.5%の筆頭株主となった。Seresの出資比率は32.96%に低下。 | [1] |
| ByteDanceは6月6日、自動車製造の計画はなく、賽力斯科技との資本関係もないと明確化した。 | [1] |
本紙の見方
今回の発表の核心は、Seresが華為技術との5年にわたる蜜月関係を経て、独自の「王国」構築を急いでいる点にある。AIVAブランドの立ち上げは、華為技術との協業で成功を収めたAITOブランドに続く、Seresの自立化戦略の一環とみられる。特に注目すべきは、自動運転システムに華為技術の「乾崑ADS」を採用せず、ByteDance傘下のVolcano Engineと共同定義する点だ。これは、華為技術への依存度を下げ、新たなテクノロジーパートナーを迎えるという、Seresの明確な方向転換を示している。 本紙が既報の通り、Seresは2025年10月にByteDanceと身体化知能で提携し、枠組み合意を締結している。今回のAIVAブランドは、その提携を具体化したものと言える。また、Seresが6月10日にAIVAを発表したことは、本紙の過去報道と一致する。 業界構造への含意として、Seresが華為技術から離れ、ByteDanceという新たなテック大手と組むことで、中国のEV市場における「華為技術陣営」と「非華為技術陣営」の再編が進む可能性がある。華為技術は現在、AITO、Luxeed、Stelato、Maextro、Shangjieの「五界」体制を敷いており、Seresの「独占パートナー」としての希少価値は低下している。一方、ByteDanceは自動車製造には参入せず、技術提供に徹する姿勢を示しており、Seresにとっては主導権を握りやすいパートナーと言える。 未確定の論点としては、AIVAの自動運転ソリューションが実際にDeepRoute.aiと提携するかどうか、また、量産第1弾「AIVA ME7」の具体的な販売台数や、Volcano Engineとの協業がどの程度の深さになるかが挙げられる。さらに、Seresが華為技術との関係を完全に断ち切るのか、それともAITOブランドを維持しつつAIVAを並行展開するのかも、今後の焦点となる。
なぜ重要か
SeresのAIVAブランド立ち上げは、中国EV市場における華為技術への依存からの脱却という構造転換を示す。ByteDanceという新たなテック大手との提携は、自動車産業におけるテクノロジー企業の役割を再定義し、今後の競争構図に影響を与える可能性がある。
日本への影響
Seresが華為技術から離れ、ByteDanceと組むことで、中国EV市場におけるテクノロジー企業の影響力が再編される可能性がある。日本企業にとっては、華為技術陣営と非華為技術陣営のどちらと協業するかが戦略的判断となる。特に、自動運転やインテリジェントコックピット分野での技術供給元の多様化は、日本部品メーカーの供給先選択に影響を与える可能性がある。