何が起きたか
XiaomiがByteDanceのロボット部門の創設者である孔涛氏を2025年夏に獲得していたことが、2026年8月10日に21世紀経済報道が報じたことで明らかになった。孔氏はXiaomiのロボット部門内で基盤モデルチームを率いており、その組織は社内でも秘匿され、専用オフィスを使用し、全社役員会議でも顔を出さなかったとされる。Xiaomiのロボット部門は約200人規模で、部門内でも他チームの情報にはアクセスできない徹底した情報管理が行われている。
詳細
孔涛氏は清華大学でコンピューターサイエンスの博士号を取得し、2019年にByteDanceに入社して同社初のロボット研究チームを設立した。当初は本人とインターン1人だけだったが、2024年までに約100人規模に成長させた。博士論文は中国人工知能学会の優秀論文賞にノミネートされ、ロボット関連論文の被引用数は1万5000回を超える。孔氏は2024年にByteDanceを退社したが、これは同社がロボットチームを中核AI研究組織「Seed」チームに統合した後のことだった。Xiaomi移籍後、ByteDance時代の元スタッフも多数合流したとされる。Xiaomiは2026年2月と7月にロボット基盤モデル「Xiaomi-Robotics-0」と「Xiaomi-Robotics-1」を発表しており、これらは孔氏がByteDanceで追求していた「大脳+小脳」アーキテクチャを継承したと分析されている。
Key Facts
| XiaomiはByteDanceのロボット部門責任者だった孔涛氏を2025年夏に獲得し、ロボット部門の基盤モデルチームを率いさせている(21世紀経済報道、2026年8月10日)。 | [1] |
| 孔涛氏は2019年にByteDanceに入社し、同社初のロボット研究チームを設立。2024年までに約100人規模に成長させた。 | [1] |
| Xiaomiのロボット部門は約200人規模で、部門内でも他チームの情報にアクセスできない徹底した情報管理が行われている。 | [1] |
| Xiaomiは2026年2月と7月にロボット基盤モデル「Xiaomi-Robotics-0」と「Xiaomi-Robotics-1」を発表した。 | [1] |
| ByteDanceは孔氏の流出後、Xiaomiからハードウェア・運動制御の専門家を多数引き抜き、DeepSeekの中核研究者・郭大雅氏もSeedチームに迎えた。 | [1] |
本紙の見方
今回の報道で注目すべきは、Xiaomiがロボットの「頭脳」にあたるAIモデル開発の弱点を、ByteDanceの中核人材の獲得によって補おうとした点だ。Xiaomiは2020年からロボット事業に参入し、2021年から2023年にかけて「CyberDog」「CyberOne」「CyberDog 2」を発表してハードウェアと量産能力を示したが、ロボットの「頭脳」となるAIモデル開発では相対的に弱みがあった。孔氏の獲得は、この弱点を直接的に補強する動きであり、Xiaomiがロボット事業を単なるハードウェア展示から、AI基盤モデルを含む垂直統合型の事業へと転換させようとしていることを示唆する。 本紙が既報の通り、Xiaomiは2026年7月15日に具身智能向け統一生成モデル「Xiaomi-Robotics-U0」を発表し、380億パラメータで4種の生成タスクを統合した。今回の報道で、このモデルが孔氏の「大脳+小脳」アーキテクチャを継承したと分析されている点は、XiaomiのロボットAI戦略が孔氏の技術路線に沿って進んでいることを示す。また、Xiaomi、具身智能向け統一生成モデル「Xiaomi-Robotics-U0」を発表・公開 380億パラメータで4種の生成タスクを統合で報じた通り、同モデルはWorldArenaベンチマークで総合1位を獲得しており、孔氏の技術が実際に成果に結びつき始めている。 さらに、この人材獲得は中国のAI業界における人材争奪戦の構造を浮き彫りにする。ByteDanceは孔氏を失った後、Xiaomiからハードウェア・運動制御の専門家を大量に引き抜き、DeepSeekからも中核研究者を獲得した。一方、DeepSeekもByteDanceのSeedチームから約70人を引き抜いており、TencentもSeedチームから4人の中核研究者を獲得している。このように、中国の大手テック企業間で人材の引き抜きが応酬し、報酬も高騰している。中国の就職プラットフォーム「脈脈」によると、2025年7月時点でAI関連の新規求人は前年比10倍以上に増加し、平均月収は4万7000〜7万8000元(約6970〜1万1570ドル)に達した。清華大学のコンピューターサイエンス博士課程修了者には年収600万元(約88万9785ドル)を超える初任給を提示するケースもあるという。 この人材争奪戦は、ロボット産業の商業化元年とされる2026年において、各社が量産能力とAIモデルの両方を備える必要性に迫られていることを反映している。中国国家発展改革委員会によると、現在中国には150社以上のヒト型ロボット完成品メーカーが存在する。XiaomiはCyberOneをテスラのOptimusより2か月早く発表した先発の優位性を持ちながら、その後の商業化で苦戦してきた。孔氏の獲得で技術的な弱点を補い、ロボット市場での主導権を再び握れるかが焦点となる。 一方で、未確定の論点も残る。孔氏が率いる基盤モデルチームの具体的な規模や、ByteDanceから移籍した元スタッフの人数は明らかにされていない。また、Xiaomiのロボット基盤モデルが実際に量産ロボットに搭載され、商業的な成果を上げるかどうかは、今後の製品発表と市場での受容性を確認する必要がある。
なぜ重要か
XiaomiによるByteDance中核人材の獲得は、中国のロボット産業がハードウェア競争からAI基盤モデルを含む総合競争へ移行したことを象徴する。人材の引き抜き合戦と報酬の高騰は、中国のAI・ロボット産業の競争構造そのものを変えつつあり、今後の製品開発と市場競争の行方を左右する。
日本への影響
中国のAI人材争奪戦の激化は、日本のロボット産業にとって、AI基盤モデル開発における人材確保の重要性を示す。日本はハードウェアと運動制御に強みを持つが、AIモデル開発では中国勢に遅れを取る可能性があり、産学連携や海外人材の受け入れを含む戦略的な人材育成が課題となる。