何が起きたか
パナソニック オートモーティブシステムズは2026年8月3日、シリーズハイブリッド車のロードノイズとエンジンノイズの双方に対応する世界初※の統合型アクティブ・ノイズ・コントロール(ANC)を開発し、日産自動車の新型「エルグランド」に初採用されたと発表した。採用対象はXグレードとGグレードの標準オーディオ仕様で、同社によると本統合型ANCの量産車搭載は今回が初めてである。発表では、広帯域の騒音を同一システムで制御する設計が、車内静粛性の向上につながるとしている。
詳細
統合型ANCは、車両各所の加速度センサーで振動を検知し、独自の信号処理アルゴリズムで騒音を予測・演算したうえで、車載スピーカーから逆位相の制御音を放射する仕組みである。従来はロードノイズとエンジンノイズで別の制御が必要とされてきたが、今回の方式は広帯域のノイズキャンセリングと高精度なリアルタイム制御を両立したとしている。 同社は、車両開発初期段階からエンジニアが参画し、車両ごとに異なる音響特性・車体振動特性・スピーカー特性を総合的に解析すると説明している。加速度センサーやマイクの最適配置、制御設計の提案も行うとしており、車両構造やパワートレインの違いに柔軟に対応できるソリューションだと位置づけている。
Key Facts
| パナソニック オートモーティブシステムズは2026年8月3日、シリーズハイブリッド車のロードノイズとエンジンノイズ双方に対応する統合型ANCを開発したと発表した。 | [2] |
| 統合型ANCは日産自動車の新型「エルグランド」のXグレードおよびGグレードの標準オーディオ仕様に採用された。 | [2] |
| 同社は、この統合型ANCが量産車に初めて搭載されると説明している。 | [2] |
| 加速度センサーで振動を検知し、独自アルゴリズムで予測・演算した制御音を車載スピーカーから逆位相で放射する方式である。 | [2] |
| 同社は、国内外の自動車メーカー5社以上・60車種以上にANCが採用されてきたとしている。 | [2] |
本紙の見方
今回の焦点は、単なるANCの新製品化ではなく、ロードノイズとエンジンノイズを同一の制御系にまとめた点にある。従来は低周波のエンジン騒音と、路面条件で変動する広帯域のロードノイズを別々に扱う前提が強かったが、パナソニック オートモーティブシステムズは加速度センサー、信号処理アルゴリズム、車載スピーカーを束ねて一つの統合系にした。ここで新しいのは、制御対象の統合であり、既定路線の延長としては車内静粛性を高めるANCの自動車への適用拡大である。 本紙の関連記事 パナソニック、車内騒音を抑える統合型ANCを開発 が示していたのは、シリーズハイブリッド車のロードノイズとエンジンノイズを一体で制御するという方向性である。今回の発表はその方向性を、日産新型「エルグランド」のXグレードとGグレードの標準オーディオ仕様への採用という形で具体化した。つまり論点は技術の存在証明から、量産車のどの仕様にどう載るかへ移っている。今後は、この技術が単一車種の採用にとどまるのか、別車種や別パワートレインへ横展開できるのかが注目点になる。 業界構造の面では、車内音響は単独のオーディオ機能ではなく、センサー配置、車体振動特性、スピーカー特性、制御ソフトをまたぐ統合設計の領域になっていることが読み取れる。パナソニック オートモーティブシステムズは車両開発初期から関与するとしており、量産段階の部品供給だけでなく、車両設計側の判断に入り込む余地がある。これは、騒音制御が後付けの快適装備ではなく、車体・電装・音響をまたぐ開発工程の一部に組み込まれることを意味する。もっとも、今回の発表だけでは制御対象となる周波数帯の詳細な範囲、採用車種の今後の拡大、量産時の性能差は分からない。 次に確認すべき論点は、広帯域制御が実車でどの条件まで安定して働くのか、標準オーディオ仕様以外への展開があるのか、そして車両ごとの最適配置や制御設計にどの程度の開発工数が必要かである。発表は技術の成立と初採用を示したが、量産車での適用範囲と運用条件はまだ限定的にしか見えていない。
なぜ重要か
日産新型「エルグランド」のXグレードとGグレードの標準オーディオ仕様に採用されたことで、ANCが一部の上級装備ではなく量産車の標準仕様に入る段階に進んだことが分かる。パナソニック オートモーティブシステムズは、加速度センサーと車載スピーカーを統合した制御を前面に出しており、車内快適性の設計が音響機器単体ではなく車両開発全体の課題になっていることを示している。
日本への影響
日本の自動車部品メーカーにとっては、スピーカー、センサー、制御アルゴリズムを一体で設計する能力が問われる案件である。車両開発初期からの参画を前提にしているため、後付け部品よりも車両設計との接続力が競争力になりやすい。