何が起きたか
研究チームは2021年1月2日、受付ロボット向けのオープンソースの頭脳基盤「DEVI」をarXivで公開した。試作ロボットを製作し、音声認識・合成、顔認識による個人識別と新規登録、身振りを伴う道案内などの機能を実証した。
詳細
DEVIは、受付ロボットの頭脳として機能するソフトウェア基盤で、研究者がコストや外観、処理能力に応じてカスタマイズした受付ロボットを容易に構築できるようにすることを目的とする。論文では、DEVIを用いた物理ロボットの試作実装についても報告している。試作ロボットは、音声認識・合成システムによる基本的な問い合わせ応答、顔認識による既知人物の認識と挨拶、自己学習ニューラルネットワークによる新規人物のデータベース登録、物理的な身振りを伴う方向案内が可能とされる。実験により有効性を示したとしている。
Key Facts
| DEVIはオープンソースの受付ロボット向け頭脳基盤であり、研究者が要件(コスト、外観、処理能力)に応じてカスタマイズした受付ロボットを構築できる。 | [1] |
| 試作ロボットは、音声認識・合成による基本的な問い合わせ応答、顔認識による既知人物の認識と挨拶、自己学習ニューラルネットワークによる新規人物の登録、身振りを伴う方向案内が可能。 | [1] |
| 既存の受付ロボットシステムは高コストであり、内部アーキテクチャを公開していないため、研究者によるさらなる開発が困難であると論文は指摘する。 | [1] |
| DEVIはシンハラ語で「女性」を意味する。 | [1] |
本紙の見方
今回のDEVIの公開は、受付ロボット分野における「オープンソース化」という点で一つの節目となる。従来の受付ロボットは、高コストで内部構造が非公開であることが多く、研究者が独自に改良や応用を進める際の障壁となっていた。DEVIはこの課題に対し、頭脳部分をオープンソース化し、研究者が自由にカスタマイズできる道を開いた。これは、特定のハードウェアに依存しないソフトウェア基盤を提供することで、研究コミュニティ全体の底上げを狙うものとみられる。 本紙の過去報道との関連では、[本紙の関連記事]に挙げられた過去報道が存在しないため、直接の連続性を論じることはできない。しかし、ロボット分野におけるオープンソース化の流れは、例えばROS(Robot Operating System)の普及に見られるように、研究開発の民主化を促進してきた経緯がある。DEVIも同様の流れに位置づけられるが、受付という特定の用途に特化している点が特徴的である。 業界構造への含意としては、受付ロボット市場は、これまで高価な専用機が中心であったが、DEVIのようなオープンソース基盤の登場により、低コストで参入するプレイヤーが増える可能性がある。特に、中小企業や研究機関が独自の受付ロボットを開発する際のハードルが下がることで、多様な外観や機能を持つロボットが登場する土壌が整うとみられる。また、顔認識や自己学習ニューラルネットワークといった技術は、プライバシーやデータ管理の観点から議論の余地があり、実用化には倫理的なガイドラインの整備が求められるだろう。 今後確認すべき点としては、第一に、DEVIのライセンス形態とコミュニティの活性度である。オープンソースといっても、商用利用の可否や開発の継続性が不明であり、実際にどの程度の研究者が採用するかが鍵となる。第二に、試作ロボットの性能評価の詳細である。論文では「有効性を示した」とあるが、具体的な認識精度や応答時間などの数値が公開されておらず、実用化に向けた性能の検証が待たれる。第三に、DEVIが想定するハードウェア構成とコストである。論文では「低コスト」を謳うが、具体的な部品構成や価格帯が示されておらず、実際にどの程度の予算で再現可能かは不明である。これらの点が明らかになることで、DEVIの受付ロボット分野における影響力がより明確になるだろう。
なぜ重要か
受付ロボットの開発コストを引き下げる可能性を持つオープンソース基盤の登場は、研究コミュニティや中小企業にとって参入障壁を下げる意味で重要である。また、顔認識や自己学習機能の実装は、今後のサービスロボットの倫理的な設計にも一石を投じるものと言える。