何が起きたか

NVIDIAは2024年6月2日、GTCで物理AI向けの新たな基盤モデル群を発表した。発表されたのは、世界モデル「Cosmos 3」、シミュレーションフレームワーク「Isaac」、ヒューマノイド向け基盤モデル「Isaac GR00T N1.7」など。これらを採用する企業は、産業用ロボット大手のABB Robotics、FANUC、KUKA、YASKAWA、Universal Robots、ヒューマノイド開発のFigure、Boston Dynamics、1X、Agility、NEURA Robotics、手術支援ロボットのCMR Surgical、Medtronicなど20社超に上る。

詳細

NVIDIAはGTCで、物理AI向けの新たな基盤モデル群を発表した。発表されたのは、世界モデル「Cosmos 3」、シミュレーションフレームワーク「Isaac」、ヒューマノイド向け基盤モデル「Isaac GR00T N1.7」など。これらを採用する企業は、産業用ロボット大手のABB Robotics、FANUC、KUKA、YASKAWA、Universal Robots、ヒューマノイド開発のFigure、Boston Dynamics、1X、Agility、NEURA Robotics、手術支援ロボットのCMR Surgical、Medtronicなど20社超に上る。 NVIDIAは、世界モデル「Cosmos 3」を発表した。これは、合成世界生成、視覚推論、行動シミュレーションを統合した初の世界基盤モデルとされる。また、ヒューマノイド向け基盤モデル「Isaac GR00T N1.7」は早期アクセス版が商用ライセンスで提供され、高度な巧緻動作を含む汎用ロボットスキルを提供する。さらに、次世代モデル「GR00T N2」は、新しい世界行動モデルアーキテクチャに基づき、新しい環境でのタスク成功率が主要な視覚言語行動モデルより2倍以上高いとされ、年内に提供予定。 産業用ロボット分野では、FANUC、ABB Robotics、YASKAWA、KUKAが、NVIDIA OmniverseライブラリとIsaacシミュレーションフレームワークを仮想試運転ソリューションに統合し、物理的に正確なデジタルツインで生産ライン全体を検証する。また、エッジでのリアルタイムAI推論のためにNVIDIA Jetsonモジュールをコントローラに統合する。 ヒューマノイド分野では、1X、AGIBOT、Agility、Agile Robots、Boston Dynamics、Figure、Hexagon Robotics、Humanoid、Mentee、NEURA RoboticsがCosmos世界モデル、Isaac Sim、Isaac Labを使用して開発を加速する。AGIBOT、Humanoid、LG Electronics、NEURA Robotics、Noble MachinesはIsaac GR00T Nモデルを採用し、産業展開を加速する。 医療分野では、CMR Surgicalが手術システム「Versius」の臨床展開前にCosmos-Hシミュレーションでトレーニングと検証を行う。Johnson & Johnson MedTechはIsaac SimとCosmosベースのポストトレーニングワークフローで「Monarch Platform」を検証。Medtronicは手術ロボットシステムでNVIDIA IGX Thorを検討している。

Key Facts

NVIDIAはGTCで、世界モデル「Cosmos 3」、シミュレーションフレームワーク「Isaac」、ヒューマノイド向け基盤モデル「Isaac GR00T N1.7」を発表した。[1]
採用企業はABB Robotics、AGIBOT、Agility、FANUC、Figure、Hexagon Robotics、KUKA、Skild AI、Universal Robots、World Labs、YASKAWAなど20社超。[1]
FANUC、ABB Robotics、YASKAWA、KUKAは、NVIDIA OmniverseライブラリとIsaacシミュレーションフレームワークを仮想試運転ソリューションに統合し、NVIDIA Jetsonモジュールをコントローラに統合する。[1]
1X、AGIBOT、Agility、Agile Robots、Boston Dynamics、Figure、Hexagon Robotics、Humanoid、Mentee、NEURA RoboticsがCosmos世界モデル、Isaac Sim、Isaac Labを使用してヒューマノイドを開発する。[1]
CMR SurgicalはCosmos-HシミュレーションでVersius手術システムを検証、MedtronicはNVIDIA IGX Thorを検討、Johnson & Johnson MedTechはMonarch PlatformをIsaac SimとCosmosで検証する。[1]

本紙の見方

今回の発表は、NVIDIAがロボット産業の「標準プラットフォーム」としての地位を一段と強めたことを示す。発表の主役は、個別のロボットではなく、世界モデル「Cosmos 3」と基盤モデル「GR00T N1.7」という「ロボットの脳」に相当するソフトウェア層である。産業用ロボット大手4社(FANUC、ABB、YASKAWA、KUKA)が仮想試運転にNVIDIAのシミュレーションを採用し、ヒューマノイド開発10社がCosmosとIsaacを利用するという構図は、ロボットの「頭脳」と「訓練環境」がNVIDIAに集約されつつあることを示す。 本紙の過去報道との接続では、索塔无界が「ロボットの脳」に特化し、4D世界モデルを開発している点が注目される。索塔无界はハードウェアを造らず、世界モデルによる「脳」を提供する戦略だが、NVIDIAもCosmos 3で同様の世界モデルを提供する。両者は競合関係にあるとみられるが、索塔无界は欧州のスーパー向けに特化するなど、ニッチ戦略で差別化を図る。また、NEURA RoboticsがADLATUS Roboticsを買収しPhysical AI基盤を清掃領域へ拡張したのも、NVIDIAのエコシステム内での動きと位置づけられる。 業界構造への含意として、ロボット開発の参入障壁が低下する可能性がある。NVIDIAの基盤モデルとシミュレーション環境により、ロボットメーカーは自前でAIを開発する必要がなくなり、ハードウェア設計と統合に注力できる。一方で、NVIDIAへの依存度が高まるリスクもある。特に、GR00T N1.7が商用ライセンスで提供されることは、ロボットメーカーにとってはコスト増要因となる。 未確定の論点としては、GR00T N2の提供時期(年内とされるが具体的な時期は未発表)、Cosmos 3の性能検証結果、医療分野での規制承認の行方などが挙げられる。また、NVIDIAのプラットフォームを採用しないロボットメーカー(例えば、独自のAIを開発する企業)が今後どう動くかも注目される。

なぜ重要か

NVIDIAがロボット産業の標準プラットフォームとしての地位を確立しつつある。ロボットメーカーはNVIDIAの基盤モデルとシミュレーション環境を活用することで、開発コストと時間を大幅に削減できる一方、NVIDIAへの依存度が高まる。この動きは、ロボット産業の競争構造を変え、AI開発の主導権がNVIDIAに集中する可能性を示唆する。

日本への影響

日本のロボット大手であるFANUC、YASKAWA、KUKA(独)がNVIDIAのシミュレーションとJetsonモジュールを採用することで、日本の産業用ロボットの開発プロセスがNVIDIAのエコシステムに組み込まれる。特に、FANUCとYASKAWAは世界の産業用ロボット市場で大きなシェアを持ち、NVIDIAの技術を採用することで、AI対応ロボットの開発競争で優位に立つ可能性がある。一方で、日本のロボットメーカーがNVIDIAに依存することで、独自のAI開発力が弱まるリスクも指摘できる。