何が起きたか
日本経済新聞は2026年11月7日、国内スタートアップの資金調達をまとめ、BionicMの7.1億円とクアドリティクスの6億円を取り上げた。BionicMはシリーズBラウンドの1st Closingとして7.1億円を調達し、エクイティと助成金を含む累計調達額は25.8億円となった。クアドリティクスは第三者割当増資と転換社債で6億円を調達し、累計調達額は13億2,000万円となった。
詳細
BionicMは調達資金を、2027年の米国市場投入を予定する次世代パワード義足「ASISTA」の生産体制と、米国でのマーケティング・セールス基盤の強化に充てる。同社によると、ASISTAは膝の曲げ伸ばしを補助する「屈曲・伸展アシスト機能」を備える。米国市場での販売に向けた製品開発と事業基盤の整備を並行させる計画だ。 クアドリティクスは調達資金を、心拍変動(HRV)計測・解析技術の研究開発、てんかん発作兆候検知の開発・国際展開、品質保証や薬事などの事業基盤強化に使う。開発中の発作警告器は、ウェアラブル心電計で自律神経の変化を捉え、機械学習による異常検知を組み合わせる仕組みで、同社は発作の数分前の警告を目指すとしている。
Key Facts
| BionicMはシリーズBラウンドの1st Closingで7.1億円を調達し、エクイティと助成金を含む累計調達額は25.8億円となった。 | [1] |
| BionicMは調達資金を、2027年の米国市場投入を予定する「ASISTA」の生産体制と米国でのマーケティング・セールス基盤の強化に充てる。 | [1] |
| クアドリティクスは第三者割当増資と転換社債で6億円を調達し、累計調達額は13億2,000万円となった。 | [2] |
| クアドリティクスは調達資金をHRV解析、てんかん発作兆候検知の開発・国際展開、品質保証や薬事などの体制強化に活用する。 | [2] |
| クアドリティクスの発作警告器は開発中で、日本国内で薬機法上の承認を取得した製品ではない。 | [2] |
本紙の見方
今回の資金調達で対照的なのは、BionicMが2027年の米国投入を見据え、生産と販売の準備を資金使途に掲げる一方、クアドリティクスは心拍変動解析や発作兆候検知の研究開発に加え、薬事・品質保証の体制づくりを進める点だ。前者は製品の市場投入に向けた製造・販売準備、後者は開発中の医療機器を実用化するための技術・制度面の準備が中心であり、同じ調達額の大小だけでは両社の事業段階を比較できない。 BionicMの「ASISTA」は、義足を身体を支える装具にとどめず、膝の屈曲と伸展をアシストする設計だと同社は説明する。今回の資金使途に生産体制だけでなく米国のマーケティング・セールス基盤が含まれることから、技術開発に加え、医療機器としての製品供給と市場開拓を同時に整える局面にあるとみられる。2027年の米国市場投入に向け、計画どおりの製造体制構築と販売基盤整備が進むかが、資金の事業化への接続を測る材料になる。 クアドリティクスはウェアラブル心電計による自律神経変化の計測と機械学習を組み合わせ、発作の兆候を検知するプログラム医療機器を開発中だ。資金使途には解析技術だけでなく臨床開発、国際展開、薬事・品質保証も含まれており、信号処理の性能だけでなく、医療機器としての評価や各地域での規制対応が事業化の要件となる。発作の数分前に警告するという目標は同社の説明であり、実際の検知性能や臨床上の有用性を示す結果とは区別して見る必要がある。 本紙が報じた小売ロボットの導入事例である MUSE、米国ニューヨークのFoodcellar Marketでストアロボット「Armo」の導入開始や、稼働台数を伝えたSimbeのTally、累計3,000台に到達とは、用途も事業段階も異なる。これらが店舗での導入・台数を示すのに対し、BionicMは米国投入前の生産・販売準備、クアドリティクスは医療機器の開発・実用化準備を示す資金調達である。共通の導入実績として扱うのではなく、身体に作用する機器では製造や臨床・規制対応が商用化の条件として加わる点を見分ける必要がある。今後確認すべきなのは、ASISTAの投入時期と実際の供給体制、クアドリティクスの臨床評価・薬事上の進展、そして発作警告器の検知性能を裏付けるデータである。
なぜ重要か
BionicMの調達は、2027年に米国投入を予定する「ASISTA」について、生産体制と米国でのマーケティング・セールス基盤を同時に整える計画に結び付く。クアドリティクスの調達は、開発中の発作警告器について、HRV解析だけでなく臨床開発や薬事・品質保証も資金使途としており、医療機器の実用化に必要な工程の広さを示している。
日本への影響
BionicMは東京大学での研究成果を基にパワード義足を開発し、ASISTAの米国市場投入に向けて生産体制と現地のマーケティング・セールス基盤を整える計画だ。日本発のロボティクス技術を米国の医療機器市場へ展開する際、技術開発に加えて製造・販売準備が必要となる具体例といえる。