何が起きたか

leaderobot.comは2026年10月29日、前阿里巴巴達摩院の具身平台責任者・陳明修氏が離職して起業し、Physical RSIを掲げる動きを報じた。

本紙の見方

起業の報道が示すのは、人材の移動と新会社の方向性であり、技術の実装成果や事業の進捗そのものではない。個人の経歴や掲げる領域を、そのままロボットの能力向上や製品化の証拠として扱わないことが、今回の動きを読む出発点となる。leaderobot.comの記事の詳細は原典を参照されたい。 本紙関連記事では、智元の仿真プラットフォームを巡り、4種類のロボットと22項目のタスクで実機との得点相関が96.7%とされた報道を紹介した智元、Genie Simを更新 柔軟物体の仿真と実機との相関を報道。また、世界モデルの予測と実機動作を照合する評価では、7モデルを対象に腕と物体の動きで予測精度に差があったと報じたWorldOracle、世界モデルの予測を実機の動作と照合するベンチマークを公開。これらは評価対象も方法も異なるため、起業の報道と並べて一つの性能尺度にまとめることはできない。 この区別は、Physical RSIを掲げる企業を評価する際にも重要になる。シミュレーションと実機の相関、モデルの予測精度、実環境でタスクを継続的に改善できるかは別の問いであり、いずれか一つの結果だけでは残りを裏付けない。さらに、評価対象となったロボット、タスク、実行条件が異なれば、数値の単純比較もできない。したがって、技術の進展を論じるには、会社の設立や人材移動ではなく、再現可能な試験条件と実機上の結果を照合する必要がある。 業界構造の面では、創業者の移動が研究開発の組織形態に変化をもたらす可能性はあるものの、今回の報道だけから、元の組織の技術が新会社に移った、あるいは新会社が特定の製品や顧客向けに開発を進めるとは言えない。次に確認すべきなのは、公開される技術仕様、実機評価の方法と結果、継続的な改善を示す再現可能なデータである。記事にない組織構成や事業実績を推測で補わず、報道された起業と公開検証の進展を別々に追うべきだ。

なぜ重要か

Physical RSIを掲げる起業の報道は、具身知能の評価で、人材や組織の動きとロボットの実環境での能力を区別する必要性に関わる。仿真と実機の相関や世界モデルの予測評価を扱った本紙関連記事が示すように、評価対象・方法の異なる結果を同一視しないことが重要だ。