何が起きたか
ジェイテクトは2026年8月25日、大型CNC円筒研削盤「G5 Series」と、レーザークラッド工法による表面被膜形成機能を搭載した複合研削盤「LC2000」を開発し、2026年10月26日より販売開始すると発表した。G5 Seriesはセンタ間距離最長4,000mm、センタ間負荷重量最大1,500kgの長尺・重量ワークに対応する。LC2000は硬質クロムめっきの代替技術として、表面処理から仕上げ加工までを1台で完結する。両製品は2026年10月26日~31日に東京ビッグサイトで開催される第33回日本国際工作機械見本市「JIMTOF2026」に出展される。
詳細
G5 Seriesは、2022年に市場投入した小型CNC円筒研削盤「G1 Series」、中型CNC円筒研削盤「G3 Series」に続く大型機で、G Seriesのラインアップを揃える。センタ間距離最長4,000mm、センタ間負荷重量最大1,500kgの長尺・重量ワークに対応し、といし軸電動機容量アップにより研削時間短縮に寄与する。といし軸には流体軸受「STAT BEARING®」を採用し、送りスライドには高級きさげを施すことで長寿命かつ高精度加工を実現する。G Series共通のユーザーインターフェース「らくらく操作」により直感的な操作と段取り時間の短縮を実現し、2種類の自動化パッケージ(自動化Aパッケージ:レスト調整・測定・形状補正の自動化、多段形状ワークの測定が可能。自動化Bパッケージ:加工中のリアルタイム径測定とフィードバック補正、ワークのたわみにレストが自動追従する最適制御)を用意する。 LC2000は、レーザー照射でワーク表面を局所的に溶融させ、金属粉末を供給して高機能な被膜を形成するレーザークラッド技術を円筒研削盤に統合した製品。六価クロムを使用しないため、硬質クロムめっきに対する各国の規制強化への対応や廃棄物処理負担の軽減に貢献する。表面処理から仕上げ加工までを1台で完結することで、従来は数週間から数カ月を要する場合もあった表面処理工程を大幅に短縮可能とし、外部委託していた表面処理工程の内製化を可能にする。また、損傷したワークの補修・再生にも適用でき、中古品やオーバーホール品の再生による製品寿命の延長とトータルコスト低減に寄与する。
Key Facts
| ジェイテクトは2026年8月25日、大型CNC円筒研削盤「G5 Series」とレーザークラッド複合研削盤「LC2000」を開発し、2026年10月26日より販売開始すると発表した。 | [1] |
| G5 Seriesはセンタ間距離最長4,000mm、センタ間負荷重量最大1,500kgの長尺・重量ワークに対応する。 | [1] |
| G5 Seriesは2022年に市場投入した小型CNC円筒研削盤「G1 Series」、中型CNC円筒研削盤「G3 Series」に続く大型機で、G Seriesのラインアップを揃える。 | [1] |
| LC2000はレーザークラッド工法による表面被膜形成機能を搭載し、硬質クロムめっきの代替技術として開発された。 | [2] |
| 両製品は2026年10月26日~31日に東京ビッグサイトで開催される第33回日本国際工作機械見本市「JIMTOF2026」に出展される。 | [1] |
本紙の見方
ジェイテクトが発表した大型CNC円筒研削盤「G5 Series」とレーザークラッド複合研削盤「LC2000」は、同社の円筒研削盤ラインアップの刷新を完成させる位置づけにある。2022年に小型機「G1 Series」、中型機「G3 Series」を投入してきた流れの延長線上にあり、今回のG5 Series投入により小型から大型までのラインアップが揃う。一方、LC2000は従来の研削盤にはない新たな価値として、表面処理工程の内製化と補修・再生機能を備える点で、既存のラインアップ刷新とは性格を異にする。 本紙の過去記事(2022年10月17日付『オムロンのモバイルロボットが経済産業大臣賞を受賞 40か国3,000台超の実績評価』)は、オムロンのモバイルロボットが受賞したという別企業の話題であり、ジェイテクトの今回の発表とは直接の関連はない。ただし、両者に共通するのは、製造業における労働人口減少や熟練作業者不足への対応という課題認識である。オムロンのモバイルロボットが物流現場の省人化を担うのに対し、ジェイテクトのG5 Seriesは「誰でも簡単熟練加工」というコンセプトで、熟練作業者のカンコツに依存しない高精度加工を目指す。LC2000も同様に、熟練技能を要する表面処理工程を自動化・内製化することで、技能継承問題への一つの解を提示している。 業界構造への含意として、LC2000の登場は表面処理工程のサプライチェーンに影響を与える可能性がある。従来、めっきなどの表面処理は外部委託が一般的であり、めっき事業者の減少や長納期化が課題となっていた。LC2000により表面処理工程を内製化できるようになれば、めっき業界への依存度が低下し、工作機械メーカーが工程全体を掌握する垂直統合の動きが進むとみられる。また、六価クロムの規制強化に対応する点で、環境規制への適合という観点からも競争優位性を持つ。 一方、G5 Seriesは大型ワークの加工ニーズに対応するが、センタ間距離4,000mm、負荷重量1,500kgという仕様は、鉄鋼・電池・製紙等のロールや工作機械・建設機械向けの長尺・重量ワークを想定したものである。これらの分野では、自動化ニーズが高い一方で、ワークのサイズや重量から作業者の負担が大きく、自動化の導入が進みにくい領域でもある。G5 Seriesの自動化パッケージは、こうした領域での省人化を可能にする点で、導入効果が大きいとみられる。 未確定の論点としては、G5 SeriesとLC2000の具体的な販売価格や販売台数目標が公表されていない点が挙げられる。また、LC2000のレーザークラッド技術が、既存のめっき技術と比較してどの程度のコスト優位性を持つのか、具体的な数値は示されていない。さらに、両製品の量産体制や納期についても、今後の発表が待たれる。
なぜ重要か
ジェイテクトの今回の発表は、円筒研削盤のラインアップを完成させると同時に、表面処理工程の内製化という新たな加工プロセスを提案するものであり、工作機械業界における垂直統合の動きを示す。特にLC2000は、環境規制への対応と技能継承問題の解決を同時に図る点で、製造業の課題に対する具体的なソリューションとなる。
日本への影響
日本の工作機械産業は、熟練技能に依存する工程が多いことが課題とされてきた。ジェイテクトのG5 SeriesとLC2000は、こうした技能継承問題に対し、自動化と内製化によって対応するものであり、日本の製造業の競争力維持に寄与する可能性がある。特に、表面処理工程の内製化は、めっき事業者の減少という国内の構造問題に対する一つの回答となり得る。