何が起きたか

2026年6月初旬にウィーンで開催されたICRA 2026で、中国のロボット企業6社(速騰聚創、帕西尼感知、光輪智能、智元機器人、天機智能、非夕科技)が講演し、感知・操作・データ・シミュレーション・基礎モデル分野の最新進展を共有した。講演内容から、感知の基盤、接触の「最後の1ミリ」問題、データとモデルの関係という3つの共通点が浮かび上がった。

本紙の見方

今回のICRA 2026での中国企業6社の講演は、具身智能が研究段階から工程落地とシステム能力構築の段階へ移行しつつあることを示す。各社の技術は異なるが、感知の基盤、接触の「最後の1ミリ」、データとモデルの関係という3つの交差点で収斂している。 まず、感知の基盤では、速騰聚創がセンサーレベルでのRGB-D融合を進め、後処理による誤差蓄積を回避する。一方、帕西尼と天機智能は触覚センサーで視覚の盲点を補い、力フィードバックで位置誤差を能動的に解消する。これは、単一のセンサーでは物理世界の認識が不十分であり、多様なセンサーを統合する必要性を示す。 次に、「最後の1ミリ」問題は、高精度な位置決めが実環境の微細な変化で無効化されることを指す。各社は力制御、柔順制御、全身多点接触感知でこの問題に対処しており、ロボットが初期位置の正確なキャリブレーションに依存せず、物理接触中に安定性と適応性を維持することを目指す。これは、実用化に向けた重要な技術的課題である。 最後に、データとモデルの関係では、光輪智能のシミュレーション基盤と智元の「部署即訓練」が、データ蓄積と戦略改善の速度がロボットの能力限界を決めるという共通認識を示す。特に智元のアプローチは、実環境での継続学習を重視し、基礎モデルの訓練パラダイムを変える可能性がある。 本紙の過去報道(2026年8月17日付『Diligent Robotics、Moxi 2.0の米国展開を開始』)では、世界モデルと計算能力の向上が病院ロボットの性能を高めたと報じた。今回の中国勢の取り組みは、同様にデータとモデルの重要性を強調しており、ロボットの能力向上には計算資源と実世界データの蓄積が不可欠であるという点で共通する。 業界構造への含意として、中国勢は感知ハードウェア(速騰聚創、帕西尼)と力制御(非夕、天機)で差別化を図り、データ基盤(光輪)と基礎モデル(智元)で競争している。これは、ロボット産業が垂直統合から専門化へと進む可能性を示す。特に帕西尼の触覚データ工場は、データ収集の産業化を目指すもので、他社が追随する可能性がある。 未確定の論点としては、各社の技術が実際の製品にどの程度反映され、市場で受け入れられるかが挙げられる。また、触覚データ工場の規模やデータ品質、智元の「部署即訓練」の実効性は、今後の実証が待たれる。

なぜ重要か

ICRA 2026での中国企業の講演は、具身智能の競争が単なるハードウェア性能から、データ収集・モデル訓練・実環境での適応能力へとシフトしていることを示す。これは、ロボット産業の競争軸が変わりつつあることを意味し、日本企業もデータ基盤と継続学習の重要性を認識する必要がある。

日本への影響

中国勢が触覚センサーや力制御、データ基盤で進展する中、日本はモーターやセンサーなどの部品産業に強みを持つが、今回の講演で示されたデータ収集とモデル訓練の重要性は、日本のロボット産業がハードウェアだけでなくソフトウェアとデータの面でも競争力を高める必要があることを示唆する。