何が起きたか
日経クロステックが2026年9月1日に報じたところによると、ハーモニック・ドライブ・システムズは2030年度のフィジカルAIロボット向け部品売上高を2025年度比7倍とする計画で、2026年夏から米国で生産能力を増強する。
本紙の見方
本紙の見方として、まず注目すべきは売上高7倍という数字の大きさだ。2025年度実績が公表されていないため絶対額は不明だが、仮に現状が100億円規模だとすれば2030年度は700億円に達する計算になる。これは同社の現在の連結売上高(約600億円規模)を大きく上回る可能性があり、フィジカルAI向け部品が中核事業に育つという経営判断の表れとみられる。 本紙が既報の通り、人型ロボのアクチュエーター、NSKやTHKに「勝機」 日経が報道(2026年8月31日)では、アクチュエーターが人型ロボット製造コストの5割超を占めるとされ、NSKやTHKなど日本の部品メーカーに勝機があると報じられた。ハーモニックは減速機というアクチュエーターの核心部品で世界シェア80%を握る(ハーモニック・ドライブ・システムズ、社内SE求人でAI活用を強調 減速機世界シェア80%、2026年8月10日)。今回の7倍計画は、この既報の流れをさらに具体化するもので、日本の部品メーカーが人型ロボット市場の成長を直接取り込む構図を裏付ける。 一方で、中国勢の追い上げが激しいと報じられており、ハーモニックの世界首位の座は盤石ではない。同社は波動歯車の開拓者として技術的優位を持つが、中国メーカーが低価格で市場に参入すれば、シェア防衛は容易ではない。北米での増産は、地政学リスクを踏まえたサプライチェーン再編の一環とも読める。 また、提案型の試作品を2026年内に相次ぎ投入するという点は、単なる部品供給からシステム提案へのシフトを示す。人型ロボットの設計はまだ固まっておらず、減速機の仕様も顧客ごとに異なる可能性が高い。試作品を早期に投入することで、設計段階から関与し、標準化を主導する狙いがあるとみられる。 未確定の論点としては、7倍の売上高の内訳(どの製品群が牽引するか)、北米増産の具体的な生産能力、中国勢との競争における価格戦略などが挙げられる。詳細は原典を参照されたい。
なぜ重要か
ハーモニックの計画は、人型ロボットの量産化が部品メーカーの業績に直結する段階に入ったことを示す。日本の精密部品産業がフィジカルAI時代の勝者となるか、中国勢との競争が今後の焦点だ。
日本への影響
ハーモニックの増産と試作投入は、日本の減速機・アクチュエーター産業が人型ロボット市場で主導権を握るための布石とみられる。中国勢の追い上げに対し、技術力と量産体制で差別化できるかが日本の部品メーカー全体の競争力に影響する。