何が起きたか
Diligent Robotics(Serve Robotics傘下)は2026年8月17日、米国の医療機関向けにMoxi 2.0の展開を開始したと発表した。Moxi 2.0は、25以上の病院での5年間の運用実績に基づき開発された次世代プラットフォームで、独自の世界モデルを搭載する。認識速度は従来比10〜15倍に向上し、1日最大18時間の稼働が可能。まずEndeavor Health Edward Hospital、Providence Saint John’s Health Center、Children’s Hospital Los Angelesで導入される。
詳細
Moxi 2.0は、NVIDIA Isaac SimオープンシミュレーションフレームワークとNVIDIA Cosmosオープンワールドモデル(3Dライダートークナイザーなど)を用いて開発された。NVIDIA A2000コンピュートを搭載し、混雑した廊下やエレベーターのドア、歩行者などの動的な環境を従来比10〜15倍の速度で認識・解釈する。オンボードコンピュートは10倍に強化され、1回の充電で最大9時間、1日最大18時間稼働する。充電速度は30%向上した。また、学習フライホイールと呼ばれる独自の世界モデルを導入し、フリートの経験から継続的に学習する。クラウドトレーニング基盤はAmazon Web Services(AWS)と共同構築され、Amazon SageMaker HyperPod上で世界モデルを訓練する。T-Mobile for Businessは複雑な病院環境でのネットワークアクセス確保に協力し、将来のプライベート5G展開を計画している。安全性と自律性の動作はすべてオンボードで実行され、Wi-Fiがなくてもタスクを完了できる。
Key Facts
| Diligent Roboticsは2026年8月17日、Moxi 2.0の展開開始を発表した。 | [1] |
| Moxi 2.0はNVIDIA Isaac SimとNVIDIA Cosmosを用いて開発され、NVIDIA A2000コンピュートを搭載する。 | [1] |
| Moxi 2.0の認識速度は従来比10〜15倍、オンボードコンピュートは10倍に向上した。 | [1] |
| Moxi 2.0は1日最大18時間稼働し、1回の充電で最大9時間動作する。 | [1] |
| Moxi 2.0はEndeavor Health Edward Hospital、Providence Saint John’s Health Center、Children’s Hospital Los Angelesで導入される。 | [1] |
本紙の見方
今回のMoxi 2.0展開は、Diligent Roboticsが2026年にServe Roboticsの傘下に入った後の初の大型製品刷新となる。Serve Roboticsは歩道配送ロボットで知られるが、2026年にDiligentを買収し、屋内サービスロボット分野に進出した。Moxi 2.0はその戦略の核となる製品で、病院内の物流を自動化する。 本紙の過去報道では、Serve Roboticsが2026年8月17日にGrubhub提携とDoorDash拡大を発表し、病院ロボットMoxi 2.0の展開も同時に発表していた。今回のDiligentの発表は、そのMoxi 2.0の詳細を明らかにするもので、Serve RoboticsのCEO Ali Kashani氏が「歩道配送は始まりに過ぎない」と述べた戦略と整合する。Serve Roboticsは歩道配送から屋内サービスロボットへ事業を拡大しており、Moxi 2.0はその中核となる。 技術的には、Moxi 2.0はNVIDIAのIsaac SimとCosmosを活用し、世界モデルを搭載した点が特徴だ。NVIDIAは2026年8月17日にエッジ向け世界モデル「Cosmos 3 Edge」を公開しており、Diligentの世界モデルもNVIDIAのエコシステムに依存している。これにより、ロボットの認識速度が10〜15倍に向上し、動的な病院環境での安全性と効率が高まった。 業界構造への含意として、Diligentの学習フライホイールは、実世界の展開データをクラウドで学習し、世界モデルを継続的に改善する仕組みだ。これは、ロボットの性能が展開台数とデータ収集に依存することを意味し、データの量と質が競争優位を決める。Serve Roboticsは2,000台以上のロボットを展開しており、Diligentの25以上の病院での運用実績と合わせて、データ収集の規模で優位に立つ。 一方、Moxi 2.0の具体的な価格や販売台数は公表されておらず、今後の受注状況が焦点となる。また、世界モデルの学習データの詳細や、他社製ロボットへの応用可能性も未確定だ。
なぜ重要か
Moxi 2.0は、病院物流ロボットの性能を飛躍的に向上させるだけでなく、世界モデルと学習フライホイールにより、展開するたびに賢くなる新しいビジネスモデルを示す。Serve Roboticsの傘下で、歩道配送から屋内サービスロボットへの事業拡大が加速し、ロボティクス業界の競争軸が「ハードウェア」から「データと学習」へ移行することを象徴している。
日本への影響
日本の医療機関向けロボット市場では、Moxi 2.0のような世界モデル搭載ロボットの登場により、競争が激化する可能性がある。日本は高齢化に伴う医療従事者不足が深刻で、物流自動化の需要は高い。ただし、Moxi 2.0は米国市場向けに展開されており、日本での展開は未定。日本のロボットメーカーは、世界モデルや学習フライホイールのようなデータ駆動型の技術開発で遅れを取らないよう注視する必要がある。