何が起きたか
智元創新(上海)科技股份有限公司は2026年9月9日、原生世界—動作模型(World Action Model、WAM)「GE-Act 2.0」を発表した。訓練データを300時間、1,200時間、5,000時間、30,000時間の4段階で拡大し、100項目の原子タスク、20類技能、2種類のロボット本体で真機ゼロショット検証を行ったとしている。発表によると、データを100倍に増やすと、折りたたみ毛巾、嵌套纸杯、拔插笔盖、插花などの新しい精細動作が可能になった。
詳細
同社は、GE-Act 2.0の全モデルパラメータをランダム初期化から学習し、既存の動画生成モデルを流用せずに、具身操作データから世界表現、未来生成、動作予測を一体で訓練したとしている。真機の評価では、場面、背景、光照、物体実例が訓練に含まれないゼロショット条件を採用し、G1-OPとG2-90Dの2本体で検証した。 発表資料では、最後の学習段階において300/1,200/5,000/30,000時間の4档データを使い、G1-OPでは非ゼロ成功のタスク数が39項目から76項目へ、G2-90Dでは24項目から72項目へ増えたとしている。総合成功率はG1-OPが17.1%から44.1%、G2-90Dが13.4%から31.1%に上昇したと説明している。また、データの構成では、3.9万時間の「指令—動画」データ、3.2万時間のロボット軌跡データ、3万時間の「指令—動画—動作」完全データを段階的に用いたとしている。
Key Facts
| 智元創新(上海)科技股份有限公司は2026年9月9日、GE-Act 2.0を発表した。 | [1] |
| 学習データは300時間、1,200時間、5,000時間、30,000時間の4段階で拡大された。 | [1] |
| 真機ゼロショット検証は100項目の原子タスク、20類技能、2種類のロボット本体で行われた。 | [1] |
| G1-OPでは非ゼロ成功のタスク数が39項目から76項目へ、総合成功率が17.1%から44.1%へ上昇した。 | [1] |
| G2-90Dでは非ゼロ成功のタスク数が24項目から72項目へ、総合成功率が13.4%から31.1%へ上昇した。 | [1] |
本紙の見方
今回の発表の核心は、GE-Act 2.0という名称そのものよりも、300時間から30,000時間までデータを4段階で増やしたときに、真機ゼロショットの到達範囲がどう変わるかを定量的に示した点にある。単なる性能紹介ではなく、原生世界—動作模型が「どの規模のデータで、どの種類の技能が立ち上がるか」を検証した点が新しい。一方で、全モデルをランダム初期化から学習し、動画生成モデルを流用しないという設計は、世界予測と動作制御を具身データから同時に獲得するという既定路線の延長でもある。 智元子会社の临界点、世界人形機器人運動会で7個の金メダル や 智元、ロボット運動会で金8・銀5・銅6を獲得 公式発表は限定的 が示したのは、智元が量産機の実戦投入や競技成績を通じて本体性能を前面に出していることだが、今回はその主戦場がハードの出来映えから、データ規模と学習法の説明に移っている。つまり、運動会で示した「できる」を、GE-Act 2.0では300時間、1,200時間、5,000時間、30,000時間という学習曲線に落とし込んだ形であり、実演から基盤モデルへと主語が移ったと読める。 構造面では、このモデルは単なる認識・制御の二分法ではなく、3.9万時間の「指令—動画」データで世界の変化を学び、3.2万時間の軌跡データで逆動力学を学び、3万時間の完全データで両者を結ぶ設計である。ここから見えるのは、ロボットの能力が本体単体ではなく、動画、軌跡、失敗データ、ロールアウトをどう束ねるかで決まるという点だ。とくにG2-90Dのデータ比率が2%未満でも性能が伸びたという説明は、少量本体への転移の可能性を示す一方で、どの本体構成がどこまで共有可能なのかを今後の焦点にする。 業界への含意としては、ロボットの競争軸が「モデルの賢さ」だけでなく、「どれだけ多様な具身データを、どの本体にまたがって学習できるか」に置かれつつある点が大きい。世界予測と動作生成を統合するWAMでは、データ収集の設計、失敗軌跡の扱い、ゼロショット評価の条件設定がそのまま製品化の制約になる。次に確認すべきは、30,000時間規模の学習を支えるデータの内訳、2種類の本体の仕様差、そしてこのモデルが実際の量産機や外部の開発環境にどう接続されるかである。
なぜ重要か
智元創新は、300時間から30,000時間への拡張で真機ゼロショットの成功率と対象タスク数がどう変わるかを示した。これは、ロボットの性能評価が単発のデモではなく、データ量と本体差を含む学習曲線で見られる段階に入ったことを示す。発表元によれば、G2-90Dは訓練データ比率が不足2%でも性能改善を示しており、少量本体への転移条件が論点になる。
日本への影響
日本企業にとっては、個別のロボット本体の出来よりも、動画・軌跡・失敗データを束ねた学習基盤をどう作るかが競争条件になり得る。とくに、異なる本体にまたがる転移やゼロショット評価が前面に出ているため、単一機種向けの制御だけでは説明しにくい領域が広がる。