何が起きたか

中国の高所作業ロボット企業Robot++は、数億元規模のシリーズC調達を完了したと発表した。ラウンドは浙江系国有資本の強港資本と光トランシーバー大手・中際旭創(300308.SZ)が共同リードし、広西投資集団資本、国海証券、君通資本などが参加、既存投資家の復星鋭正資本が追加出資した。同社は船舶さび除去ロボットで国内外100以上の大型造船所に納入し、市場シェア70%超を握る。過去5年で売上高は約10倍に成長し、海外売上高は前年比4倍となった。

詳細

Robot++は2015年創業、2017年に高所作業ロボット事業へ本格参入した。創業者の徐華陽氏は1990年生まれで、清華大学機械工学科で博士号を取得した。同社の船舶さび除去ロボットは10万トン級以上の貨物船1万隻以上でさび除去作業を完了し、船体表面積の98%以上をカバーする。人手と比べ効率は5〜6倍、コストは30〜50%削減できるという。同社は2百万時間超の実地データと数万点のセンチメートル級3Dシーンを蓄積し、480件超の知的財産権を保有する。技術仕様では、ペイロード対重量比3:1(100kgの本体で300kgを運搬)、表面適応半径0.5m、約5cmの垂直障害物を越える能力を持つ。調達資金は、具身知能とAIの統合、グローバル展開、量産納品、産業エコシステム構築に充てる。

Key Facts

Robot++は数億元規模のシリーズC調達を完了した。ラウンドは強港資本と中際旭創が共同リードし、広西投資集団資本、国海証券、君通資本などが参加、既存投資家の復星鋭正資本が追加出資した。[1]
同社の船舶さび除去ロボットは国内外100以上の大型造船所に納入され、市場シェア70%超を握る。10万トン級以上の貨物船1万隻以上で作業を完了し、船体表面積の98%以上をカバーする。[1]
同社は2百万時間超の実地データと数万点のセンチメートル級3Dシーンを蓄積し、480件超の知的財産権を保有する。[1]
技術仕様では、ペイロード対重量比3:1(100kgの本体で300kgを運搬)、表面適応半径0.5m、約5cmの垂直障害物を越える能力を持つ。[1]
過去5年で売上高は約10倍に成長し、海外売上高は前年比4倍となった。[1]

本紙の見方

今回のシリーズC調達の主役は、資金規模そのものよりも、投資家構成と事業の収益性にある。リード投資家の強港資本は港湾・海運業界に深く関与し、中際旭創は光トランシーバー世界大手で「AI+スマート製造」の融合を見込む。産業資本が主導する今回のラウンドは、Robot++の技術と港湾・海運という応用現場の結びつきを評価したものだ。同社は2020年のシリーズAでも数億元を調達しており、産業資本と国有資本の継続的な支援を受ける稀有な存在である。 事業面で注目すべきは、売上高シェア70%超という数字だ。船舶さび除去というニッチ市場で、同社は実質的な独占状態に近い。これは「デモ段階」に留まるロボット企業が多い中で、安定した商業クローズドループを確立していることを示す。さらに、2百万時間超の実地データは、単なるロボット販売ではなく、データ蓄積による参入障壁を築いている。米国の高所作業ロボット企業Gecko Roboticsが約20億ドルの評価を受けた背景にも、同様のデータ蓄積とAI予測能力がある。Robot++も同じ論理で評価される可能性がある。 業界構造への含意として、同社の「垂直世界モデル」構想は、具身知能の実装経路として注目される。業界ではVLAや世界モデルの議論が先行するが、Robot++は「実地データ蓄積→マルチモーダル垂直大モデル事前学習→仮想と実機の融合シミュレーション→実機強化学習」という閉ループを構築中だ。これは、一般用途の汎用ロボットではなく、特定産業に特化した垂直統合のモデルであり、具身知能の産業応用がまず専門分野から始まるという創業者の予測と整合する。 一方で、未確定の論点もある。調達額の正確な数字や、投資家ごとの出資比率は公表されていない。また、垂直世界モデルの開発進捗や、海外売上高比率を3年以内に3分の1、5年以内に半分とする目標の達成可能性は、今後の業績次第だ。さらに、同社の技術が他社に模倣されるリスクや、市場拡大に伴う競争激化も注視すべき点である。

なぜ重要か

Robot++の調達は、具身知能の産業応用が「ヒューマノイド」ではなく、高所作業というニッチな現場から始まることを示す。同社の70%超のシェアと2百万時間のデータは、ロボット企業の価値がハードウェアではなく、現場データとAI予測能力にあることを物語る。投資家に産業資本が名を連ねたことは、具身知能への資金流入が金融資本から産業資本へシフトしつつある兆候と言える。

日本への影響

日本は造船・化学プラント・風力発電など高所作業の需要が大きい産業を抱えるが、高所作業ロボットの国産化は進んでいない。Robot++の海外展開は、日本市場にも影響を与える可能性がある。同社は既にオランダのRoyal Vopakやサウジアラムコなどと取引があり、海外売上高を拡大中だ。日本の造船所や化学プラント事業者は、同社のロボットを導入する選択肢が生じる一方、国内のロボットメーカーにとっては競争圧力となる。特に、船舶さび除去分野でのシェア70%超は、日本企業が参入する際の高い壁となる。