何が起きたか

ee.ofweek.comが報じたところによると、立訊精密(002475.SZ)は6月30日にH株のグローバル発売を正式に開始し、約240億港元の調達を目指す。上場は7月9日予定で、香港取引所のコードは2475。

本紙の見方

立訊精密のH株上場は、同社が「果链之王」から「AI链」への転換を図る象徴的な出来事である。調達資金の配分を見ると、35%が生産能力拡張と生産拠点のアップグレード、30%が技術研究開発とスマート製造に充てられる。この配分は、従来の消費電子中心から、自動車電子とAIデータセンターへのシフトを明確に示している。 本紙の過去報道では、中国の半導体設備国産化率が50%を超え、輸出規制強化を受けて中国企業が設備の国産化を加速していると報じた。立訊精密のAIインフラ投資も、こうした中国全体のサプライチェーン自立化の流れと軌を一にするものとみられる。同社は高速コネクタ、高速ケーブル、光モジュール、データセンター相互接続製品を展開し、通信・データセンター事業の2025年売上は245.68億元、粗利率は18.1%に達した。これは消費電子の10.3%を大きく上回り、収益性の高い成長分野として位置づけられる。 また、自動車電子事業は2023年の3.9%から2025年には11.8%へと拡大し、3年間の複合成長率は106%に達する。2025年7月にはドイツの莱尼のワイヤーハーネス事業を約5.25億ユーロで買収し、世界の自動車ワイヤーハーネス市場でシェア7.6%の第4位に浮上した。さらに、聞泰科技のODM/OEM関連事業を45億元超で買収し、ノートPC組立能力を獲得した。これらの買収は、消費電子の精密製造能力を基盤に、自動車電子と通信データセンターという2つの高成長分野へ事業を拡張する戦略の一環である。 一方で、アップルへの依存度は2023年の75.2%から2025年には56.7%に低下した。それでもなお売上の半分以上を占めており、依存度の低減は道半ばである。また、米中関税政策の不確実性がリスクとして挙げられ、ベトナム生産の関税優位性が希薄化する可能性が指摘されている。 今回のH株上場で注目すべきは、調達資金の使途が明確にAIと自動車に向けられている点だ。立訊精密は、単なるアップル向け受託製造企業から、AIインフラとスマート自動車のサプライチェーンを担う「グローバル精密製造プラットフォーム」への脱却を目指している。しかし、その成否は、AIデータセンター向け高速相互接続製品の受注拡大と、自動車電子事業の収益化にかかっている。今後の決算で、これらの事業がどの程度の成長を遂げるかが焦点となる。 なお、本稿の詳細な数値や経営戦略については、原典(ee.ofweek.comの記事)を参照されたい。

なぜ重要か

立訊精密のH株上場は、中国の大手EMS企業がAIインフラと自動車電子に軸足を移す転換点を示す。同社の動向は、アップル依存からの脱却と新たな成長分野への投資が、中国製造業の構造変化を映す鏡となる。

日本への影響

立訊精密の自動車電子事業拡大は、日本の自動車部品サプライヤーにとって競争圧力となる可能性がある。特に、莱尼買収により欧州・アフリカ・米州の製造ネットワークを獲得したことで、グローバルなワイヤーハーネス市場での競争が激化するとみられる。