何が起きたか

アクセンチュアは2026年6月10日、プライベートエクイティ(PE)のデューデリジェンスに関する調査レポートを公表した。調査によると、PEリーダーの75%が過去5年間で投資案件が複雑化したと回答し、83%が現在のデューデリジェンスに大きな改善余地があると認識している。また、PEリーダーは平均して取引総額の約1%を関連活動に投じており、今後5年間で約800億ドル規模の投資が見込まれる。

詳細

アクセンチュアのレポートは、従来型のデューデリジェンスを機動的かつ価値創出型へ進化させる3つのアプローチを提示する。生成AIはデューデリジェンス作業の最大30%を自動化し、さらに20%を高度化できる可能性があるとし、リーダーの約3分の2(62%)がアナリティクスや生成AIがディールスクリーニングやデューデリジェンスを根本的に変革すると考えている。また、ポートフォリオ企業のケイパビリティ、プロセス、テクノロジーに想定外のギャップが見つかることを最重要課題の一つに挙げる回答者が40%に上る。リーダーシップ不足を上位3つの課題に挙げるのは47%、組織カルチャの変革準備不足を主要課題とするのは36%。テクノロジー活用経験のあるCEOの5年間の売上年平均成長率は23.9%で、非経験者の1.4倍と分析している。

Key Facts

PEリーダーの83%が現在のデューデリジェンスアプローチに大きな改善余地があると認識している(アクセンチュア調査)。[1]
生成AIはデューデリジェンス作業の最大30%を自動化し、さらに20%を高度化できる可能性がある(アクセンチュア)。[1]
PEリーダーは平均して取引総額の約1%を関連活動に投じており、今後5年間で約800億ドル規模の投資が見込まれる(アクセンチュア)。[1]
リーダーの約3分の2(62%)が、アナリティクスや生成AIがディールスクリーニングやデューデリジェンスを根本的に変革すると考えている(アクセンチュア)。[1]
テクノロジー活用経験のあるCEOの5年間の売上年平均成長率は23.9%で、非経験者の1.4倍に達する(アクセンチュア分析)。[1]

本紙の見方

アクセンチュアの調査は、PE業界におけるデューデリジェンスの位置づけが「リスク評価」から「価値創出の起点」へと移行していることを示す。特に注目すべきは、生成AIによる自動化・高度化の可能性を具体的な数値(最大30%自動化、20%高度化)で示した点だ。これは、デューデリジェンスが単なるチェック作業ではなく、競争優位の源泉として再定義されつつあることを意味する。 本紙の過去報道との接続はないが、この調査結果はPE業界の構造変化を浮き彫りにする。投資案件の複雑化(75%)と改善余地の認識(83%)が同時に高まる中、デューデリジェンスへの投資額が取引総額の約1%(今後5年で800億ドル)に達するという数字は、この分野が新たな成長市場であることを示唆する。アクセンチュア自身がコンサルティング企業として、この流れを後押しする立場にあることも考慮すべきだ。 業界構造への含意として、まずデューデリジェンスの対象範囲がテクノロジー、オペレーション、リーダーシップ、サステナビリティへ拡大している点が挙げられる。これにより、従来の財務・法務中心の専門家に加え、テクノロジーや組織変革に精通した人材の需要が高まるだろう。また、生成AIの活用は、デューデリジェンスのスピードと深度を飛躍的に向上させる可能性があり、中小規模のPEファームにとっては参入障壁の低下につながる一方、大手ファームはより高度な分析で差別化を図る構図が生まれる。 未確定の論点としては、生成AIによる自動化・高度化が実際のディール成果にどの程度寄与するかが挙げられる。調査は可能性を示すにとどまり、具体的な成果指標(IRR向上など)との関連は明示されていない。また、800億ドルの投資額がデューデリジェンスのみに限定されるのか、関連活動全般を含むのかも曖昧だ。さらに、テクノロジー活用CEOの成長率(23.9%)は、デューデリジェンスの評価基準に影響を与える可能性があるが、因果関係までは示されていない。

なぜ重要か

PE業界がデューデリジェンスを競争優位の源泉と位置づけ、生成AIを活用した変革を進めることで、投資判断の精度とスピードが大きく変わる可能性がある。これは、資金調達を検討する企業にとっても、評価プロセスがより高度化・迅速化することを意味し、経営戦略に影響を与える。

日本への影響

アクセンチュアの調査は、日本のPE市場にも示唆を与える。日本ではPEファンドによる事業承継や成長投資が活発化しており、デューデリジェンスの高度化は、買収後のバリュークリエーションを成功させる鍵となる。特に、テクノロジー活用経験のあるCEOの成長率が高いという分析は、日本企業の後継者選定や経営人材の評価にも応用できる可能性がある。ただし、調査はグローバルなものであり、日本固有の状況にそのまま当てはまるわけではない点に留意が必要だ。