何が起きたか
LGは2026年8月13日、NVIDIAと物理AI分野での協力拡大に関するMOUを締結した。これに基づき、NVIDIA Isaac GR00Tを搭載した次世代二足歩行ヒューマノイドを2027年第1四半期に公開する。ロボットのハードウェアはLG Electronics製アクチュエータ、LG Innotek製センサー、LG Energy Solution製バッテリーで構成される。また、LGは2026年6月30日にCEO直轄のロボット事業センターを設立し、ソウル楊才(ヤンジェ)R&Dキャンパスに大規模データファクトリーを建設、年内稼働を予定している。
詳細
LGとNVIDIAのMOUは、カリフォルニア州サンタクララのNVIDIA本社で締結され、LG Corp会長の具光謨(ク・グァンモ)氏とNVIDIA CEOのジェンスン・フアン氏が出席した。ロボットはNVIDIA Isaac GR00T(推論)、NVIDIA Jetson Thor(オンボード計算)、NVIDIA Halos(安全性)を採用する。LGはまた、テネシー州の洗濯機工場で車輪型ロボットLG CLOiDを今年中に検証し、AIファクトリー参照サイトをNVIDIA DSXとNVIDIA Vera Rubinで構築、NVIDIA DRIVE Hyperionを用いた次世代AI定義車両プラットフォームも開発する。LGのロボット事業センターは2026年7月1日付で発足し、Song Si-yong氏が率いる。データファクトリーはロボット訓練用の高品質データを収集し、LGのRobot Foundation Model(RFM)を高度化する。LGは60年以上のモーター技術を活かし、アクチュエータの国内生産を準備している。
Key Facts
| LGは2026年8月13日、NVIDIAと物理AI分野でのMOUを締結し、NVIDIA Isaac GR00Tを搭載した二足歩行ヒューマノイドを2027年第1四半期に公開する。 | [4] |
| ロボットのハードウェアはLG Electronics製アクチュエータ、LG Innotek製センサー、LG Energy Solution製バッテリーで構成される。 | [5] |
| LGは2026年6月30日、CEO直轄のロボット事業センターを設立し、2026年7月1日付で発足する。 | [3] |
| LGはソウル楊才R&Dキャンパスに大規模データファクトリーを建設し、年内に稼働を開始する。 | [3] |
| LGは60年以上のモーター技術を活かし、アクチュエータの国内生産を準備している。 | [3] |
本紙の見方
LGの今回の動きは、ロボット事業を単なる家電の延長ではなく、物理AIの中核と位置づけた戦略転換を示す。2026年6月のロボット事業センター設立は、CEO直轄の組織を4ヶ月前倒しで発足させる異例の措置であり、ロボットへの経営資源の集中を明確にした。さらに、データファクトリーを年内に稼働させ、Robot Foundation Model(RFM)を高度化する計画は、ロボットの知能を自前で獲得する姿勢の表れだ。 本紙の過去報道との接続では、NVIDIAが2026年8月に公開したCosmos 3 Edge(4Bパラメータのオムニモデル)が、Jetson Thor上で動作し、ロボット制御のためのポストトレーニングを可能にした点が重要だ。LGのヒューマノイドがJetson Thorを採用することは、Cosmos 3 Edgeのようなエッジ推論モデルを活用する土台を持つことを意味する。また、NVIDIAが日本でCosmos Coalitionを拡大したこと(2026年8月6日のブログ)は、世界モデルのオープン化が進む中で、LGがNVIDIAのエコシステムに深く組み込まれる戦略を取ったことを示唆する。 業界構造への含意として、LGはアクチュエータ、センサー、バッテリーをグループ内で調達し、さらにアクチュエータの国内生産を準備している。これは、ロボットの主要部品を内製化する垂直統合の動きであり、サプライチェーン全体を掌握しようとするものだ。特に、アクチュエータはロボットの動作精度を左右する核心部品であり、60年以上のモーター技術を活かすという点で、LGの製造業としての強みが活きる。一方、NVIDIAのIsaac GR00TやJetson Thorといった計算基盤は外部に依存するため、LGはハードウェアとソフトウェアの境界で協業と内製を巧みに使い分けている。 未確定の論点としては、ヒューマノイドの具体的な仕様(身長、可搬重量、価格)や量産計画が明らかでない。また、データファクトリーの規模(データ量、ロボット台数)や、LG CLOiDのテネシー工場での検証結果が、今後の展開にどう影響するかも注目される。さらに、Cosmos 3 Edgeのポストトレーニングには約17.4K GB200時間の計算資源が必要とされ、LGが自前で計算基盤を持つのか、NVIDIAのクラウドを利用するのかも焦点だ。
なぜ重要か
LGがNVIDIAと組み、ヒューマノイドを2027年に公開する計画は、家電大手が物理AI分野で本格的に参入する象徴的な出来事だ。部品内製化とデータファクトリーの垂直統合戦略は、ロボット産業の競争構造を変える可能性があり、他社の追随を促すだろう。
日本への影響
LGのアクチュエータ内製化は、日本の部品メーカーにとって競争圧力となる。特に、モーター技術を基盤とするアクチュエータは、日本企業が強みを持つ分野であり、LGが国内生産を進めることで、価格競争や技術競争が激化する可能性がある。また、NVIDIAのCosmos Coalitionが日本に拡大したことは、日本のロボット・製造業が世界モデルを活用する機会を広げる一方、LGのような垂直統合型の競合が出現することの脅威も示す。