何が起きたか
中核となる「視触覚ハンド」はベンチャーが開発し、力覚センサーなしで触覚を追加する。データ収集用デバイスも開発中で、今後の課題はデータの歩留まり率30%の改善とされる。
詳細
3社が目指すのは、VLAに触覚を加えた「VTLAモデル」の構築。鍵を握る技術は「視触覚」で、カメラ映像から触覚や滑りを判断する。中核の「視触覚ハンド」はベンチャーが開発しており、力覚センサーを使わずに触覚を追加する点が特徴。データ収集用のデバイスも開発されている。現状の課題として、データの歩留まり率が30%であることが挙げられ、その改善が求められている。
本紙の見方
今回の動きは、産業用ロボット大手3社がフィジカルAIの実用化に向けて、視覚と言語に加えて触覚という新たなモダリティを取り込もうとする点で画期的だ。従来のVLAモデルは画像とテキストから行動を生成するが、実際の製造現場では部品の把持や組み立てにおいて触覚情報が不可欠であり、これを力覚センサーに頼らずにカメラ映像から推定する「視触覚」技術は、コストと耐久性の面で実用的な解となり得る。本紙の過去報道では、川崎重工が2026年5月に米サンノゼに「Kawasaki Physical AI Center San Jose」を開設し、エヌビディアなどと協業してヘルスケア分野での社会実装を目指すと報じた。今回のVTLAモデル構築は、同センターでの取り組みを製造現場に拡張する動きと位置づけられる。また、ファナックは2026年8月に「5軸インテグレーテッド・イニシアティブ」を開始しており、工作機械とポストプロセッサの最適化を進めている。これらの取り組みは、ロボット単体の性能向上ではなく、現場データを活用したAIモデルの構築と、それを支える製造プロセス全体の最適化を志向しており、業界の競争軸が「ハードウェアの精度」から「AIモデルとデータの質」へ移行しつつあることを示唆する。業界構造への含意として、視触覚ハンドをベンチャーが開発する点は重要だ。大手3社が自社開発ではなく外部のベンチャー技術を中核に据えることで、ロボット部品のサプライチェーンに新たなプレイヤーが参入する余地が生まれる。また、データ収集用デバイスの開発は、実世界データの取得がAIモデルの性能を左右することを物語っており、データの歩留まり率30%という数字は、現状のデータ品質が実用化のボトルネックであることを示す。未確定の論点としては、視触覚ハンドの具体的な性能(どの程度の触覚を再現できるか)や、VTLAモデルの実証実験のスケジュール、3社の役割分担(どの企業がどの工程を担当するか)が挙げられる。また、データの歩留まり率を改善する具体的な手法も明らかでない。
なぜ重要か
産業用ロボット大手3社が触覚をAIモデルに組み込む動きは、製造現場におけるフィジカルAIの実用化を大きく前進させる可能性がある。視触覚技術が確立されれば、力覚センサーに頼らない低コストな触覚認識が可能となり、ロボットの適用範囲が拡大する。また、ベンチャーとの協業は、ロボット産業のエコシステムに変化をもたらすだろう。
日本への影響
日本の産業用ロボット大手3社が共同でVTLAモデルを構築する動きは、日本のロボット産業がフィジカルAIの分野で主導権を握るための布石となる。特に、視触覚ハンドをベンチャーが開発する点は、日本のスタートアップエコシステムにとって新たなビジネス機会を生む可能性がある。また、データ収集用デバイスの開発は、製造現場のデータ活用を促進し、日本の製造業の競争力強化につながる。