何が起きたか

韓国貿易協会(KITA)国際貿易通商研究院は2026年1月25日、報告書『グローバルロボット産業の変化と韓日供給網比較からの示唆』を発表した。韓国は産業用ロボット設置台数で世界4位、ロボット密度(製造業従事者1万人当たりのロボット数)で世界1位だが、中核部品の国産化率は約40%に留まる。永久磁石の88.8%を中国に依存し、精密減速機やコントローラーも日本・中国からの輸入割合が高い。ロボット出荷の71.2%が国内市場向けである一方、日本は出荷の70%超を輸出しており、供給網構造の差が国際競争力の差につながっていると分析した。

詳細

報告書は、韓国がロボット需要側(完成品・システムインテグレーション)では強い一方、上流(原材料・素材)と中流(核心部品・モジュール)の弱さが蓄積していると指摘。日本は資源が乏しいものの、廃車モーターからのレアアース回収などの資源リサイクル技術や特殊鋼・精密磁石の素材加工を内製化し、減速機・モーターなどで世界シェア60〜70%を握る企業が垂直統合型の供給網を構築していると対比した。KITAは企業向けに需要側と供給側の共同研究開発による部品国産化、ロボット単体販売から制御システム・保守を組み合わせたパッケージ型輸出への転換を提言。政府には国産化初期リスクの分担、公共需要創出による実証機会の拡大、資源リサイクル制度の高度化などの政策支援を求めた。報告書の著者であるKITAの陳実(ジン・シル)上級研究委員は「韓国はロボット活用能力は優れているが、核心部品の海外依存という構造的限界が明確だ」と述べ、「製造・活用中心から供給網安定化を優先する戦略的転換がなければ、日本などとの競争格差はさらに広がる」と警告した。

Key Facts

韓国貿易協会国際貿易通商研究院は2026年1月25日、報告書『グローバルロボット産業の変化と韓日供給網比較からの示唆』を発表した。[1]
韓国は産業用ロボット設置台数で世界4位、ロボット密度で世界1位。[1]
韓国の中核部品の国産化率は約40%で、永久磁石の88.8%を中国に依存。[1]
韓国のロボット出荷の71.2%が国内市場向けである一方、日本は出荷の70%超を輸出している。[1]
日本は減速機・モーターなどで世界シェア60〜70%を握る企業が垂直統合型の供給網を構築している。[1]

本紙の見方

今回の報告書の核心は、韓国ロボット産業が「活用大国」でありながら「部品小国」に留まっているという構造的なアンバランスを、数値で明確にした点にある。ロボット密度世界1位という華々しい指標の裏で、中核部品の国産化率が約40%に停滞し、永久磁石の88.8%を中国に依存するという事実は、生産拡大がそのまま輸入増加に直結する「悪循環」を意味する。これは、本紙が2025年7月22日に報じたワールドITショーで韓国政府が「人工知能3大強国」を掲げ、物理AIに焦点を当てたことと表裏の関係にある。政府が掲げるビジョンは需要側の拡大を促すが、供給側の基盤が脆弱なままであれば、物理AI時代の主戦場であるロボット産業で、韓国は「作る国」ではなく「使う国」に留まるリスクがある。 さらに、本紙が2025年10月6日に報じた韓国ロボット産業の再編動向と重ねると、今回の報告書は「AIを前面に打ち出した再ブランド化」が、実は供給網の弱点を覆い隠す可能性があることを示唆する。政府支援とAI技術の融合が投資を呼び込む一方で、部品の海外依存が続けば、収益性の高いAIロボット企業の育成も、結局は海外部品メーカーへの利益移転に終わりかねない。 業界構造への含意として、注目すべきは日本との対比だ。日本は資源が乏しいにもかかわらず、リサイクル技術と素材加工の内製化、そして減速機・モーターで世界シェア60〜70%を握る企業群によって、原材料から完成品までを一貫して掌握する垂直統合型の供給網を築いている。韓国がこの構造的差を埋めるには、単なる部品国産化ではなく、素材段階からの技術蓄積と、需要側と供給側の共同研究開発による「共進化」が必要になる。KITAが提言するパッケージ型輸出への転換も、単なる販売形態の変更ではなく、制御システムや保守まで含めた「システムとしての競争力」を構築する試みと捉えられる。 未確定の論点としては、報告書が示した国産化率40%という数値の算定基準や、具体的な部品ごとの依存度の詳細が挙げられる。また、韓国政府がこの報告書を受けて具体的な政策を打ち出すかどうか、そして企業レベルでの共同研究開発が実際にどの程度進むかが、今後の焦点になる。物理AI時代の競争は、ロボット本体の性能だけでなく、それを支える部品・素材・データの生態系全体で決まる。韓国が「活用」の強みを「製造」の強みに転換できるか、その成否が問われている。

なぜ重要か

韓国ロボット産業の構造的弱点が、世界一のロボット密度という成功の陰で顕在化した。物理AI時代の競争は、ロボット本体の性能だけでなく、それを支える部品・素材・データの生態系全体で決まる。韓国が「活用」の強みを「製造」の強みに転換できるか、その成否が問われている。

日本への影響

日本は減速機・モーターなどで世界シェア60〜70%を握る企業群を擁し、垂直統合型の供給網を構築している。韓国の部品国産化が進めば、日本部品メーカーにとっては韓国市場でのシェア低下圧力となる一方、日本のリサイクル技術や素材加工の優位性は、韓国が国産化を急ぐ際のベンチマークとなる。