何が起きたか

JD.comは2025年8月8日に開催された世界ロボット会議で「智能ロボット産業加速計画」を発表し、今後3年間で100億元(約2000億円)超をロボット分野に投資すると表明した。同計画では100のロボットブランドの販売支援を目指すとしている。また、同社は2025年7月にLimX Dynamicsなど3社の身体性知能ロボット企業への戦略的出資を主導した。物流子会社のJD Logisticsは、自社開発の智能倉庫システム「智狼」を北京、広州、成都、福州などの主要都市の倉庫で全国規模で展開している。

詳細

JD.comの2025年第2四半期決算(8月14日発表)によると、純収入は3567億元(前年同期比22.4%増)、JD Retailの営業利益率は4.5%と過去最高を記録した。JD Logisticsは2025年上半期に米国、英国、フランス、ポーランド、韓国、ベトナム、サウジアラビアなどに海外倉庫を新設し、6月末時点で保税倉庫・直郵倉庫・海外倉庫を合わせ130以上、管理面積は130万平方メートル超、23カ国・地域に展開する。「智狼」システムは搬送ロボット、階段昇降ロボット、立体ラックなどを統合し、倉庫の12メートル高を活用した高密度保管を実現する。JD.comは4月15日、AIグラスや身体性知能ロボットなどの新興カテゴリーの販売を強化する「一歩先・加速更新プログラム」を開始した。

Key Facts

JD.comは2025年8月8日、世界ロボット会議で「智能ロボット産業加速計画」を発表し、今後3年間で100億元超を投資し、100のロボットブランドの販売支援を目指すと表明した。[4]
JD.comは2025年7月21日、LimX Dynamicsへの戦略的出資を主導した。[3]
JD.comの2025年第2四半期の純収入は3567億元で、前年同期比22.4%増。JD Retailの営業利益率は4.5%と過去最高。[1]
JD Logisticsは2025年6月末時点で、保税倉庫・直郵倉庫・海外倉庫を合わせ130以上運営し、管理面積は130万平方メートル超、23カ国・地域に展開。[1]
JD Logisticsの智能倉庫システム「智狼」は、北京、広州、成都、福州などの主要都市の倉庫で全国規模で展開されている。[1]

本紙の見方

JD.comのロボット分野への参入は、販売と物流の実装という二つの軸で構成される。100億元超の投資計画の主軸は「100のロボットブランドの販売支援」であり、これは同社の小売・EC基盤を活かした販売チャネルとしての役割に重点を置く。一方、物流子会社のJD Logisticsは「智狼」システムを全国展開し、倉庫内の搬送・仕分けを自動化する実装を進める。この二つの動きは、ロボットを「売る」ことと「使う」ことを同時に進める戦略とみられる。 本紙が既報の通り、中国のロボット産業は2026年上半期に935億元超の資金調達が行われ、身体性AIが転換点を迎えている。JD.comの投資は、この流れの中で販売・流通という川下の役割を担うものだ。Unitreeの上海上場で時価総額が約660億ドルに達するなど、ロボット企業の評価が高まる中、JD.comは自社の物流網と販売網を活用して、ロボットの普及を加速させる立場を取る。 この戦略の含意は、ロボット産業のバリューチェーンにおいて、販売・流通・保守といった川下の機能が重要性を増すことだ。JD.comは物流倉庫での実装を通じて運用ノウハウを蓄積し、それを販売支援に活かす可能性がある。また、100ブランドの販売支援は、ロボットの標準化や互換性の課題を浮き彫りにする。 一方で、JD.comの投資は製造や基盤技術への直接投資ではなく、販売・応用シーンに限定される。LimX Dynamicsなどへの出資は戦略的だが、出資比率や経営関与の度合いは不明だ。今後は、この投資計画が実際にどのブランドにどのような形で支援されるのか、また物流倉庫でのロボット導入が生産性向上にどの程度寄与するのかを確認する必要がある。

なぜ重要か

JD.comの100億元超の投資は、中国のロボット産業が製造から販売・流通へと重心を移す転換点を示す。同社の物流網と販売網がロボット普及のインフラとなるかが、今後の業界構造を左右する。

日本への影響

JD.comの物流倉庫でのロボット実装は、日本の物流業界にとっても競争圧力となる。特に「智狼」システムのような高密度保管・高速仕分け技術は、日本の倉庫自動化の水準と比較される可能性がある。ただし、日本市場への直接的な影響は現時点では限定的であり、今後の展開を注視する必要がある。