何が起きたか

国際ロボット連盟(IFR)は2023年5月3日、インドの2021年産業用ロボット設置台数が前年比54%増の4,945台で過去最高となり、世界第10位に浮上したと発表した。稼働台数は33,220台で、2016年以降の年平均成長率は16%に達する。

本紙の見方

今回のIFR発表は、インドが産業用ロボットの新興市場として存在感を高めていることを示す。設置台数4,945台は世界全体の約1%に過ぎないが、前年比54%増という成長率は、中国が2021年に記録した44%増(24万3,300台)を上回る。稼働台数が5年で倍増した背景には、製造業の拡大がある。世界銀行データによれば、インドの製造業付加価値は2021年に4,439億ドルで、世界第5位の製造大国となっている。 本紙の過去報道と照合すると、IFRは2022年9月20日に中国の設置台数が24万3,300台で過去最高と報じたが、インドはその約50分の1の規模だ。しかし、成長率の高さは中国の初期段階を想起させる。中国は2010年代に年平均30%前後の成長を遂げ、世界の半分を占めるに至った。インドも同様の軌道を描く可能性があるが、現時点では自動車産業への依存度が高い。自動車が31%を占める構造は、中国の2021年(自動車が5万700台、全体の約21%)と比べても偏りが大きい。 また、本紙が2026年8月10日に報じた米国市場の成長(2025年設置台数38,000台、前年比11%増)と比較すると、インドの市場規模はまだ小さい。ただし、インドの成長率は米国の約5倍であり、今後の拡大余地を示唆する。IFRが2026年1月27日にヒューマノイドロボットの統計調査を開始したことも、市場の多様化を映す。インドではまだヒューマノイドの導入は確認できないが、一般産業での需要が伸びれば、新たな分野への波及も考えられる。 業界構造への含意として、インドの成長はロボットメーカーにとって新たな販売先となる。自動車産業の設備投資が牽引する構図は、日本や韓国と似ており、部品サプライチェーンの構築が焦点になる。一方で、インド国内のロボット製造基盤は未成熟で、多くを輸入に依存しているとみられる。関税や規制の動向次第で、現地生産の動きが加速する可能性がある。 今後確認すべき点は、第一に、2022年以降の設置台数の推移。世界的な景気減速がインドの投資に与える影響を注視したい。第二に、自動車以外の産業(電気電子、金属など)での導入拡大が続くかどうか。第三に、インド政府のロボット普及政策(補助金や関税優遇)の有無と内容だ。これらの点が明らかになれば、インド市場の持続性を評価できる。

なぜ重要か

インドは世界第5位の製造大国でありながら、ロボット密度は低く、成長余地が大きい。今回の記録は、自動車産業を起点にした需要拡大が始まったことを示す。日本企業にとっては、インド市場への参入戦略を再考する契機となる。

日本への影響

インドのロボット需要拡大は、日本の部品メーカーにとって供給機会となる。特に自動車産業向けの溶接・組立ロボットは、日本の得意分野であり、インドの自動車投資が増えれば、部品輸出や現地生産の拡大につながる可能性がある。ただし、インド政府が国産化を進める場合、関税や規制が障壁になり得る。