何が起きたか
国際ロボット連盟(IFR)は2020年8月6日、ポストコロナの回復期におけるロボット技能需要に関する報告を発表した。IFRは2022年までに世界の工場で約400万台の産業用ロボットが稼働すると予測し、ロボットとインテリジェント自動化システムを扱う適切な技能の提供に政府と企業が注力する必要があると訴えた。エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)の「自動化準備指数」によると、成熟した教育政策を持つ国は韓国、エストニア、シンガポール、ドイツの4カ国のみで、日本、米国、フランスは「発展途上」、中国は「新興」と評価された。
詳細
IFRのミルトン・ゲリー会長は「政府と企業はロボットとインテリジェント自動化システムを扱う適切な技能の提供に注力する必要がある」と述べ、ポストコロナの回復がロボット導入をさらに加速させるとの見解を示した。IFRのスザンヌ・ビエラー事務総長は「既存労働者の再訓練は短期的な対策に過ぎず、学校や学部教育のカリキュラムを産業界の需要に合わせる必要がある」と指摘し、技術的・デジタル技能に加え、問題解決や批判的思考などの認知的技能の重要性を強調した。IFRは2020年12月9日にミュンヘンで開催される自動化・ロボット技術の見本市「automatica」で、エグゼクティブ・ラウンドテーブル「次世代労働力 - ロボットのためのスキル向上」を開催する予定。
Key Facts
| IFRは2022年までに世界の工場で約400万台の産業用ロボットが稼働すると予測している。 | [2] |
| EIUの「自動化準備指数」で、成熟した教育政策を持つ国は韓国、エストニア、シンガポール、ドイツの4カ国のみ。 | [1] |
| 日本、米国、フランスは「発展途上」、中国は「新興」と評価された。 | [1] |
| IFRのミルトン・ゲリー会長は、ポストコロナの回復がロボット導入をさらに加速させると述べた。 | [1] |
| IFRは2020年12月9日にミュンヘンの「automatica」でエグゼクティブ・ラウンドテーブルを開催する。 | [1] |
本紙の見方
今回のIFRの報告は、ポストコロナの経済回復をロボット導入の加速要因と位置づけ、それに伴う技能需要の高まりを国際的な政策課題として提起した点で、2020年時点のロボット業界の認識を示すものだ。注目すべきは、EIUの「自動化準備指数」で日本が「発展途上」と評価されたことである。本紙が2023年11月に報じたIFRの日本向け提言では、2024年問題へのロボット活用が謳われており、日本が物流分野でのロボット導入を急ぐ背景には、こうした教育・技能基盤の遅れが影響している可能性がある。 また、IFRが2026年1月にヒューマノイドロボット市場の統計調査を開始したことと併せて考えると、今回の報告はロボット導入の「量」の拡大だけでなく、それを支える「人材」の質的整備が業界の持続的成長に不可欠だという認識を早い段階から示していたことになる。2026年8月の本紙報道では、北米のロボット導入がパイロット段階から量産展開への移行で停滞しており、その要因の一つに技能不足が挙げられる。今回のIFRの報告は、その問題が2020年時点で既に警告されていたことを示している。 業界構造への含意として、ロボットメーカーは単にハードウェアを販売するだけでなく、教育プログラムやトレーニングを通じて顧客の導入障壁を下げる役割を期待されている。IFRがロボットサプライヤーによる実践的な訓練支援を報告に含めたのは、この点を意識したものだ。 未確定の論点としては、今回の報告で示された「成熟した教育政策」の具体的な内容や、各国の政策が実際にロボット導入率にどの程度寄与したかの検証が挙げられる。また、2020年時点の予測である400万台の稼働台数が、実際の2022年の統計とどの程度一致したかも確認すべき点だ。
なぜ重要か
この報告は、ロボット導入の成否が技術開発だけでなく、教育・技能政策に依存することを示している。日本が「発展途上」と評価されたことは、今後のロボット活用戦略を考える上で重要な示唆を与える。
日本への影響
EIUの指数で日本が「発展途上」と評価されたことは、日本のロボット産業の競争力に警鐘を鳴らすものだ。本紙が2023年に報じたIFRの提言では、日本の物流分野でのロボット活用が推奨されており、技能基盤の整備が遅れれば、こうした分野での導入が停滞する可能性がある。