何が起きたか

国際ロボット連盟(IFR)は2019年5月16日、英国の2018年産業用ロボット設置台数が前年比3%減の2,306台に落ち込んだと発表した。前年は31%増だった。

本紙の見方

今回のIFR速報は、英国のロボット導入が主要先進国の中で相対的に停滞している現状を浮き彫りにした。設置台数2,306台は前年比3%減で、前年の31%増から一転した。ロボット密度85台は世界平均と同等で、欧州トップのドイツ(3位)やスウェーデン(5位)に大きく水をあけられている。 本紙の過去報道と照合すると、英国の停滞は長期的な傾向とみられる。2026年8月10日付『米国ロボット市場、2025年設置台数11%増』で報じたように、米国は食品業界を中心に導入が拡大している。一方、英国は自動車以外の部門で導入が低調で、BARA会長も「自動車以外の全製造部門で主要競争国より低い水準」と認める。また、2026年8月7日付『北米ロボット導入、パイロット段階から量産展開への移行に課題』で指摘したパイロット停滞(約70〜80%が本格導入に至らない)は、英国にも当てはまる可能性がある。英国は労働力不足を設備投資で補うより、移民労働者に依存してきた歴史があり、ブレグジットでその前提が崩れつつある。 さらに、2026年8月10日付『KIT、故障ロボットから部品を回収する解体システムを開発』や2025年2月11日付『KUKA、ロボット部品再利用の「Circular Services」を展開』で報じた循環型ロボット経済の流れは、英国の低い導入率に新たな機会をもたらす可能性がある。中古ロボットの再調整・部品再利用は投資コストを下げるため、資本装備に慎重な英国企業にとって導入障壁を下げる効果が期待できる。 一方、2026年8月7日付『米FCC、外国製先進ロボットをCovered Listに追加』で報じた規制強化は、英国のロボット調達にも影響を与えうる。英国は米国と異なり独自の規制を打ち出していないが、供給網の多様化が課題となる。 今後確認すべき点は、①英国の2019年以降の設置台数が回復するか(IFRの次回報告)、②自動車以外の部門(食品・物流など)で導入が加速するか、③ブレグジット後の労働市場の変化が設備投資にどう影響するか、である。

なぜ重要か

英国のロボット導入停滞は、ブレグジット後の産業競争力の行方を占う試金石となる。労働力不足を技術で補えない英国は、製造業の国際競争でさらに後れを取るリスクがある。

日本への影響

日本は2024年の自動車産業で設置台数11%増(約1万3,000台)と堅調だが、英国の停滞は労働力不足と設備投資の関係を考える上で示唆的だ。日本の製造業も人手不足に直面しており、ロボット導入の遅れが競争力に響く可能性がある。