何が起きたか

中国のEU・英国向け直接投資(FDI)は2024年に100億ユーロに達し、2023年の歴史的低水準から47%増加した。これは2016年のピーク(500億ユーロ)には及ばないものの、同年以降で初めての顕著な回復となる。投資の主軸はEVバッテリー工場で、CATL、Envision AESC、SVOLTなどがドイツ、ハンガリー、英国、フランスでの工場建設を進めている。

詳細

MERICSとRhodium Groupの報告書『EV battery investments cushion drop to decade low: Chinese FDI in Europe – 2022 update』(2023年5月9日公表)によると、2022年の中国の欧州向けグリーンフィールド投資は45億ユーロで、中国の欧州向けFDI全体の57%を占めた。これは2008年以来、M&A(34億ユーロ)を初めて上回る規模である。投資の88%はドイツ、ハンガリー、英国、フランスの4カ国に集中しており、これらの国々はグリーンフィールド投資とM&Aの両方で主要な受け入れ先となった。2022年の中国のEU・英国向けFDI総額は79億ユーロで、前年比22%減、2013年水準にまで落ち込んだ。

Key Facts

中国のEU・英国向けFDIは2024年に100億ユーロに達し、前年比47%増加した(MERICSとRhodium Groupの報告による)。[3]
2022年の中国の欧州向けグリーンフィールド投資は45億ユーロで、中国の欧州向けFDI全体の57%を占めた。[2]
2022年の中国のEU・英国向けFDI総額は79億ユーロで、前年比22%減、2013年水準に落ち込んだ。[2]
2022年の中国の欧州向け投資の88%はドイツ、ハンガリー、英国、フランスの4カ国に集中した。[2]
CATL、Envision AESC、SVOLTなどの中国バッテリー大手が欧州での工場建設を主導している。[2]

本紙の見方

今回の報告は、中国の欧州向け投資が「買収型」から「グリーンフィールド型」へと構造転換したことを示す。2022年のデータでは、グリーンフィールド投資が45億ユーロで全体の57%を占め、M&A(34億ユーロ)を初めて上回った。この転換は、EVバッテリー工場の建設が主導しており、CATL、Envision AESC、SVOLTといったバッテリー大手がドイツ、ハンガリー、英国、フランスに工場を建設している。投資の88%がこの4カ国に集中している点は、欧州内での地域的偏在を示す。 本紙の過去報道では、跨维智能が「Physical Token経済学」を提唱し、物理AIの規模経済を阻む構造的制約を指摘した。今回の中国のバッテリー投資は、まさにその「規模の経済」を実現するための生産基盤の構築とみることができる。また、CATLとGalbotの協力力覚センサー企業へのCATL系出資など、CATLはロボット分野にも投資を拡大しており、今回のバッテリー工場投資はその一環と位置づけられる。 業界構造への含意として、中国のバッテリー企業が欧州で生産拠点を構築することで、欧州のEVサプライチェーンにおける中国の存在感が一層高まる。これは、欧州の自動車メーカーにとっては調達先の多様化圧力となる一方、中国企業にとっては欧州市場へのアクセス強化につながる。また、グリーンフィールド投資はM&Aに比べて規制審査を受けにくいとMERICSのMax J. Zenglein氏は指摘しており、今後の投資拡大の余地を示唆する。 未確定の論点としては、2024年の100億ユーロの内訳(グリーンフィールドとM&Aの比率、国別・セクター別の詳細)が報告書本文では明らかにされていない。また、2022年以降の投資動向が持続するかどうかは、現在進行中のプロジェクト完了後の動向次第とみられる。

なぜ重要か

中国の欧州向け投資がバッテリー工場を中心に回復したことは、欧州のEV産業における中国のサプライチェーン依存を強める可能性がある。欧州の政策立案者や自動車メーカーにとっては、域内生産の拡大と中国企業との協調・競争のバランスが今後の焦点となる。

日本への影響

中国のバッテリー企業が欧州で生産拠点を拡大する一方、日本企業は欧州でのバッテリー生産投資が相対的に遅れている。この動きは、日本企業にとって欧州市場での競争力維持に向けた戦略見直しを迫る可能性がある。ただし、具体的な日本企業への影響は本報告書では言及されていない。