何が起きたか

国際ロボット連盟(IFR)は2021年10月28日、世界の産業用ロボット市場に関する年次報告書『World Robotics 2021』を発表した。米国の工場で稼働する産業用ロボットは約31万700台で前年比6%増となり、過去最高を記録した。新規販売は2020年に8%減と2年連続の減少となったが、電気電子産業向けは7%増の3,700台、自動車産業向けは19%減の1万500台だった。世界全体では稼働台数が300万台を超え、2020年の新規販売は38万4,000台で前年比0.5%増となった。

詳細

IFRの報告書によると、米国は北米の産業用ロボット設置台数の84%を占める。北米全体では、米国(31万700台)に次いでメキシコが約4万2,600台(前年比6%増)、カナダが約2万9,400台(同3%増)となっている。米国のロボットの多くは日本、韓国、欧州から輸入されており、北米のロボットメーカーは少数だが、システムインテグレーターは多数存在する。世界全体では、2020年の新規販売38万4,000台のうち中国が市場を牽引し、他市場の減少を補った。IFRは2021年から2024年にかけて年平均成長率が中一桁台になると予測し、世界の年間設置台数が2024年に50万台に達すると見込んでいる。

Key Facts

米国の工場で稼働する産業用ロボットは約31万700台で、前年比6%増の過去最高を記録した(IFR発表、2021年10月28日)。[1]
2020年の米国での新規ロボット販売は8%減で、8年間の成長後に2年連続の減少となった。[1]
米国の電気電子産業向け設置は7%増の3,700台、自動車産業向けは19%減の1万500台だった。[1]
世界全体の産業用ロボット稼働台数は300万台を超え、2020年の新規販売は38万4,000台で前年比0.5%増だった。[2]
IFRは2024年までに世界の年間設置台数が50万台に達すると予測している。[1]

本紙の見方

今回のIFR報告書は、米国市場がパンデミック下でも稼働台数で過去最高を更新したことを示す。一方で新規販売は8%減と2年連続の減少で、稼働台数の増加は既存設備の累積による部分が大きい。注目すべきは内訳の変化だ。自動車産業向けが19%減の1万500台に落ち込む一方、電気電子産業向けは7%増の3,700台と堅調で、米国製造業のロボット需要の主軸が自動車から電気電子へシフトしつつあることを示唆する。これは本紙が2026年8月10日に報じた米国市場の2025年動向(食品業界が30%増で成長牽引)と対比すると、需要セクターの多様化が2020年時点で既に始まっていたと読める。 世界全体では稼働台数が300万台を突破し、新規販売は38万4,000台と微増に留まった。中国が他市場の減少を補った構図は、サプライチェーンの地域的再編を反映している。IFRは国際サプライチェーンの混乱が「リショアリング(国内回帰)」を促し、新たな生産能力構築にロボットが活用されると指摘する。これは本紙が2026年8月7日に報じたFCCによる外国製ロボットの輸入制限(移動型ロボット対象)と合わせると、米国がロボット調達を国内・同盟国中心にシフトさせる動きの初期段階と位置づけられる。 ただし、米国のロボットの多くは日本、韓国、欧州からの輸入に依存しており、北米のロボットメーカーは少数だ。この構造は、FCC規制が製造国ベースで適用される場合、米国企業の海外生産品にも影響し得る点で、今後の調達戦略に不確実性をもたらす。IFRの予測では2024年に世界の年間設置台数が50万台に達するが、これは2020年の38万4,000台から年率約9%の成長を意味し、中一桁台の年平均成長率というIFR自身の見通しよりやや楽観的だ。 未確定の論点として、米国市場の新規販売がいつ回復に転じるか、電気電子産業の成長が持続するか、そしてリショアリングが実際にロボット需要を押し上げるかが挙げられる。IFRの報告書は2021年時点のデータであり、パンデミック後の需要回復の実態は今後の統計で確認する必要がある。

なぜ重要か

米国は世界第2位の産業用ロボット稼働国であり、その市場動向はロボットメーカーや部品サプライヤーの戦略に直結する。電気電子産業向け需要の伸びは、半導体や電子機器の生産自動化が進むことを示し、日本のロボット部品産業にとっては輸出機会の拡大につながる可能性がある。一方、輸入依存の構造は、地政学リスクや規制強化の影響を受けやすく、サプライチェーンの再編が今後の焦点となる。

日本への影響

米国のロボットの多くが日本から輸入されている事実は、日本のロボットメーカーにとって米国市場が引き続き重要であることを示す。電気電子産業向け需要の増加は、日本の精密部品やセンサー技術の強みが活きる分野であり、輸出拡大の余地がある。一方、FCCの規制強化やリショアリングの流れは、日本企業が米国市場で現地生産や提携を検討する圧力となり得る。