何が起きたか

2016年4月1日、カルガリー大学の臨床神経科学科とHotchkiss脳研究所で、64歳の患者に対し、MRI誘導型手術ロボットNeuroArmを用いた脳動静脈奇形の手術が行われた。執刀医のGarnette Sutherland医師は別室から3D画像を見ながら遠隔操作で手術を行い、ロボット支援手術の実施数は70件を超えた。

本紙の見方

今回の手術は、MRI誘導下で動作する手術ロボットNeuroArmを用いた実臨床例として報じられた。NeuroArmは、カルガリー大学のSutherland医師らが開発を主導してきたロボットで、MRIの強磁場環境下で動作するように設計されている点が特徴だ。通常の手術ロボットはMRIの磁場の影響を受けるため、MRIガイド下での手術は困難とされてきたが、NeuroArmはこの課題を克服し、術中にリアルタイムで画像を取得しながら手術を進めることを可能にしている。 本紙の過去報道との関連では、[本紙の関連記事]として挙げられた記事は存在しないが、公開情報によれば、NeuroArmは2007年頃から開発が進められ、2010年代に臨床試験が開始されたとされる。今回の報道は、その臨床応用が進み、実績が積み上がっていることを示すものだ。 業界構造への含意として、手術ロボット市場では、Intuitive Surgicalのda Vinciシステムが腹腔鏡手術で広く普及しているが、脳外科領域ではMRI対応のロボットは限られている。NeuroArmのようなMRI誘導型ロボットは、脳腫瘍や血管病変の手術において、術中画像を活用した正確な操作を可能にするため、今後の普及が期待される。ただし、da Vinciと比較すると、NeuroArmの臨床実績はまだ少なく、コストや操作性の面で課題も残る。 また、Sutherland医師の「100年後には人間が人間を手術しなくなる」という発言は、ロボット手術の将来像を示すものだが、現時点では完全な自動化は遠いとみられる。現状のロボット手術は、医師が遠隔操作で行うマスタースレーブ方式が主流であり、AIによる自律手術はまだ研究段階だ。 今後確認すべき点としては、第一に、NeuroArmの臨床試験の詳細な結果(合併症率や成功率など)が挙げられる。第二に、NeuroArmのコストや導入施設の拡大状況が焦点となる。第三に、MRI誘導下での手術がどの程度の精度向上につながるのか、従来の手術との比較データが待たれる。

なぜ重要か

MRI誘導型手術ロボットの実臨床例は、脳外科手術の精度向上と遠隔手術の可能性を示すものであり、手術ロボット市場における新たな競争軸となる。また、医師の遠隔操作による手術は、医療アクセスの改善につながる可能性がある。