何が起きたか
リトアニア・ビリニュス拠点のLITILITは2026年8月18日、リトアニア国営開発銀行ILTEから800万ユーロの融資を受け、フェムト秒レーザーのモジュール型システムFEMODAを開発すると発表した。プロジェクト総額は1000万ユーロで、商業化は2029年下半期を予定。同社はビリニュスに大規模なフェムト秒レーザー施設の建設も開始している。
本紙の見方
今回の融資は、LITILITがフェムト秒レーザーを「高価値の小部品加工」から「大規模産業の量産工程」へと適用範囲を広げるための布石とみられる。CEOのNikolajus Gavrilinas氏は、金属工具の量産や航空機・自動車ボディのような大面積への特殊コーティング形成など、既存の大規模産業での新応用を挙げる。FEMODAの特徴は、単一ビームに集中させるのではなく、10〜20の独立チャンネルに出力を分配する点にある。これにより、複数の加工点を同時に処理でき、大型部品や複数生産ラインへの対応が可能になる。従来のフェムト秒レーザーは高精度だが低出力で、小部品加工に限られていた。FEMODAは平均出力1000Wを目標とし、産業用としてのスケーラビリティを追求する。 本紙の過去報道との接続を考えると、[本紙の関連記事]には具体的な過去記事が挙げられていないため、直接の連続性を論じることはできない。ただし、公開情報では、フェムト秒レーザー市場は医療、電子機器、自動車、航空宇宙などで需要が拡大しており、高出力化と低コスト化が課題とされる。LITILITの特許技術は、量産を可能にし産業システムへの統合を簡素化する点で、この課題への回答となり得る。 業界構造への含意として、FEMODAのモジュール設計は、レーザーシステムの導入障壁を下げる可能性がある。従来の産業用レーザーは、制御電子機器、光学系、冷却を個別に統合する必要があり、専門知識とコストがかかった。FEMODAはこれらを単一ユニットに統合することで、自動車、航空宇宙、電子機器、半導体製造などの業界での導入を容易にする。これは、レーザー加工のサプライチェーンにおいて、システムインテグレーターの役割を変える可能性がある。また、出力を複数チャンネルに分配する方式は、従来の単一ビーム方式と異なり、加工の並列処理を可能にする。これにより、生産性が向上し、大面積加工や量産工程での適用が現実的になる。 一方で、未確定の論点も残る。第一に、FEMODAの具体的な仕様、特に各チャンネルの出力やパルス幅、繰り返し周波数などの詳細は公開情報では確認できない。第二に、2029年下半期の商業化に向けて、量産体制やコスト目標が明らかでない。第三に、航空宇宙や防衛サプライチェーンでの応用が示唆されるが、具体的な顧客や導入事例は公表されていない。これらの点が今後の焦点になる。
なぜ重要か
フェムト秒レーザーは高精度加工に不可欠だが、高出力化と産業導入の複雑さが普及の障壁だった。LITILITのFEMODAは、モジュール化とマルチチャンネル出力でこの課題に挑むもので、成功すれば自動車や航空宇宙など大規模産業でのレーザー加工の常識を変える可能性がある。
日本への影響
日本の工作機械・レーザー加工産業は世界有数の競争力を持つが、フェムト秒レーザーの分野ではドイツや米国勢が先行する。LITILITのモジュール型システムが確立されれば、日本の製造業が導入する際の選択肢が広がる一方、国内レーザーメーカーにとっては競争圧力となる可能性がある。