何が起きたか

国際ロボット連盟(IFR)は2021年11月4日、2020年のサービスロボット市場をまとめた報告書『World Robotics 2021 – Service Robots』を発表した。プロ向けサービスロボットの売上高は67億ドル(前年比12%増)、販売台数は13万1800台(同41%増)に達した。消費者向けは売上高44億ドル(同16%増)で、家庭用ロボットが約1850万台販売された。

詳細

プロ向けサービスロボットの売上高67億ドルのうち、医療ロボティクスが55%を占め、売上高36億ドル(前年比11%増)だった。これは主に手術支援ロボットによるもので、医療ロボット供給企業の約75%は北米と欧州に所在する。分野別では、搬送・物流ロボット(AMR・配送ロボット)の売上高が11%増の10億ドル超で、販売台数の3台に1台が搬送用途だった。清掃ロボットは販売台数が92%増の3万4400台で、新型コロナウイルス禍の衛生需要を受け、50社以上のプロバイダーが除染ロボットを開発した。ホスピタリティロボットは売上高2億4900万ドル、飲食物準備ロボットは売上高が196%増の3200万ドルだった。消費者向けでは、家庭用ロボットが約1850万台(前年比6%増)、売上高43億ドルを記録した。

Key Facts

IFRは2021年11月4日、2020年のサービスロボット市場をまとめた報告書『World Robotics 2021 – Service Robots』を発表した。[1]
プロ向けサービスロボットの売上高は67億ドル(前年比12%増)、販売台数は13万1800台(同41%増)だった。[1]
医療ロボティクスはプロ向け売上高の55%を占め、売上高36億ドル(前年比11%増)だった。[1]
清掃ロボットの販売台数は92%増の3万4400台で、50社以上のプロバイダーが除染ロボットを開発した。[1]
消費者向けサービスロボットの売上高は44億ドル(前年比16%増)で、家庭用ロボットは約1850万台(前年比6%増)、売上高43億ドルだった。[1]

本紙の見方

今回のIFR報告書は、2020年のサービスロボット市場が新型コロナウイルス禍で大きく変容したことを示す。プロ向けの販売台数が41%増の13万1800台に達した一方、売上高は12%増の67億ドルにとどまった。台数の伸びが売上高の伸びを大きく上回る構図は、単価の低い清掃・搬送ロボットがけん引したことを示唆する。実際、清掃ロボットは台数が92%増、搬送ロボットは売上高が11%増と、感染対策需要が直接的な追い風になった。 本紙の過去報道(2020年10月28日付『SERVICE ROBOTS Record: Sales Worldwide Up 32%』)では、2019年のサービスロボット販売台数が前年比32%増と記録的だったと報じた。今回の2020年データは、その勢いがコロナ禍でも維持されたことを示す。ただし、2019年の台数は約10万台(32%増の前年比から逆算)だったのに対し、2020年は13万1800台と41%増で、伸び率はさらに加速した。これは、パンデミックが非接触・自動化需要を喚起し、サービスロボットの普及を前倒ししたとみられる。 一方、医療ロボティクスは売上高で55%を占める最大分野だが、伸び率は11%増と全体平均を下回る。手術支援ロボットは高額だが、コロナ禍で手術件数が抑制された影響が考えられる。供給企業の75%が北米・欧州に集中する構造は、地域偏在のリスクを示す。 業界構造への含意として、清掃・搬送ロボットの需要急増は、部品サプライチェーンに変化をもたらす。特に、除染ロボットを50社以上が開発したことは、センサー・UVランプ・噴霧装置などの部品需要を喚起したとみられる。また、ホスピタリティ分野の飲食物準備ロボットが196%増と急拡大したのは、非接触調理へのシフトを反映する。 今後確認すべき点は、①2021年以降の市場がコロナ特需の反動減に陥るかどうか、②医療ロボティクスの地域偏在が是正されるか、③消費者向けロボットの普及が継続するか、の3点である。特に、IFRが2021〜2024年の清掃ロボットの年平均成長率を二桁と予測するが、その実現性は需要の持続性に依存する。

なぜ重要か

サービスロボット市場は、コロナ禍を機に清掃・搬送など実用的な分野で需要が急拡大した。この報告書は、ロボット産業の成長が特定分野に偏るリスクと、地域偏在の課題を浮き彫りにする。今後の市場動向を占う上で、2021年以降のデータが重要になる。

日本への影響

日本のロボット産業は、産業用ロボットで強みを持つが、サービスロボット分野では医療・清掃などで存在感を示す。IFR報告書で医療ロボット供給企業の75%が北米・欧州に集中するとされたことは、日本企業にとっては市場参入の余地を示す。ただし、具体的な日本企業の動向は本報告書では言及されていない。