何が起きたか
Comma.aiは2026年8月19日、車載コンピューター「comma four」にデスクトップGPUを接続するためのeGPUドック「Chestnut」を発表した。価格はドックのみの「tiny chestnut」が249ドル(約4万円)、AMD Radeon RX 9060 8GBにケーブルと取り付け金具が付属する「Chestnut “ready to drive”」が799ドル(約13万円)。電力上限を従来の約10Wから約100Wに引き上げ、openpilotの大型モデルを実行できるようにする。
詳細
Chestnutは、助手席の足元または助手席の下にGPUを取り付け、付属ケーブルをcomma fourまで配線し、車の12V電源に接続して使用する。Chestnutクラスの新シリーズ第1弾となるドライビングモデル「openpilot 0.11.2」では、パラメータ数が30倍、FLOPsが100倍になる。Comma.aiは、comma fourとChestnutの組み合わせにより、テスラの車載コンピューティングプラットフォーム「HW4」と同程度の計算能力を持つと見込んでいる。Chestnutのコントローラーを駆動するC言語のソースコード「tinygrad」がGitHubで公開されている。
Key Facts
| Comma.aiは2026年8月19日、eGPUドック「Chestnut」を発表した。 | [1] |
| 「tiny chestnut」は249ドル、「Chestnut “ready to drive”」は799ドルで、後者にはAMD Radeon RX 9060 8GBが付属する。 | [1] |
| Chestnutにより電力上限を約10Wから約100Wに引き上げる。 | [1] |
| openpilot 0.11.2ではパラメータ数が30倍、FLOPsが100倍になる。 | [1] |
| comma fourとChestnutの組み合わせで、テスラのHW4と同程度の計算能力を持つとComma.aiは見込む。 | [1] |
本紙の見方
今回の発表は、Comma.aiが車載AIの計算基盤を外付けGPUで拡張する新たなアプローチを示した点で注目される。従来のcommaシリーズは約10Wの電力範囲でopenpilotのAIモデルを動作させていたが、AIモデルの大型化に伴い計算能力が不足していた。Chestnutはこれを解決するため、車載PCにデスクトップGPUを接続し、電力上限を約100Wに引き上げる。これにより、パラメータ数30倍、FLOPs100倍の大型モデルを実行可能にし、テスラのHW4と同程度の計算能力を実現するとしている。 本紙の過去報道では、AMDが物理AI向けにRyzen AI EmbeddedプロセッサやKria AIソリューションを発表し、エッジからデータセンターまでをカバーするフルスタック戦略を強化していることを報じた。ChestnutはAMDのRadeon RX 9060を採用しており、AMDのエッジAI戦略と軌を一にする。ただし、ChestnutはAMDの公式パートナーシップに基づくものではなく、Comma.aiが独自に選択したものである点に留意が必要だ。 業界構造への含意として、車載AIの計算基盤が専用SoCから汎用GPU+外付けドックへとシフトする可能性が示唆される。従来、車載AIはテスラのHW4のような専用プラットフォームが主流だったが、Chestnutはオープンソースのopenpilotと組み合わせることで、既存車両に後付けで高性能なAI計算能力を追加できる。これは、自動運転の民主化を進める一方、車載コンピューティングの標準化や電力管理、熱設計などの課題も浮き彫りにする。 未確定の論点として、Chestnutの実際の販売台数や、openpilot 0.11.2の実運用での性能、車種ごとの適合性、安全性の検証などが挙げられる。また、Chestnutが対応するGPUの範囲や、将来のモデルでの拡張性も確認が必要だ。
なぜ重要か
Chestnutは、車載AIの計算能力を後付けで拡張する新たな選択肢を提供し、自動運転技術の民主化を加速させる可能性がある。同時に、専用ハードウェアに依存しないオープンなエコシステムの重要性を示しており、今後の車載AI市場の競争構造に影響を与えるだろう。
日本への影響
日本の自動車メーカーや部品サプライヤーにとって、Chestnutのような後付けeGPUドックの登場は、車載AIの計算基盤を巡る競争に新たな変数をもたらす。特に、日本の強みである車載電装品や熱管理技術は、外付けGPUの車内設置における課題解決に貢献できる可能性がある。ただし、現時点で日本市場への具体的な展開は発表されておらず、今後の動向を注視する必要がある。