何が起きたか

ギアなどの自動車部品を製造する武蔵精密工業は今年、人工知能(AI)システムの外販に乗り出す。自社設備として研究開発してきたAI外観検査システムなどを販売する。同社は検査と搬送の工程にAIを導入し、2020年には自律走行搬送車(SDV)の発売を予定している。

詳細

同社がAIによる自動化をまず提案するのは、検査と搬送の工程だ。大塚社長は「ざっくり言えば工場の労力の2割を搬送、6割を加工、残る2割を検査が占める。加工は付加価値を高める工程で対価が得られるが、搬送と検査は付加価値を生みづらい。まずはここからAIで自動化する」と話す。 検査工程向けにはAI画像検査システムを外販する。これは自社で既に使用実績のあるもので、自動車部品メーカーの日鉄精圧品(愛知県半田市、川上浩一郎社長)の工場にも今年納入し、実証実験を開始した。実証実験の結果は現在のところ良好で、今年中に本格販売を開始する。既に引き合いも複数あるという。同社の自動車部品(ベベルギア)の不良発生率は0.002%で、ほとんど発生しない不良品を探すのは負荷が高い作業とされる。 搬送では、AIを使った自律走行車(SDV)を開発する。工場内でワークを運搬する屋内用だけでなく、屋外のトラックまで荷物を迎えに行く屋外型も開発する。AIを活用することで車両が自らの位置を把握し、自律的に目的地までのルートを作成できる。将来的には天井から複数の車両の位置をチェックし、一つのAIで全体を最適にコントロールするシステムなども開発する。発売は2020年を予定する。 検査と搬送をAIで自動化した後は、加工のさらなる高付加価値化にもAIを活用する。切削で言えば一つの被削材に対しても加工条件は無数にあり、切削工具の刃先の形状をわずかに変えるだけで加工効率が変わることもある。「たくさんの組み合わせの中から最適なものを見つけるのはAIの最も得意とするところ」と大塚社長は話す。

Key Facts

武蔵精密工業は今年、AI外観検査システムの外販に乗り出す。[1]
同社のAI外観検査システムは、日鉄精圧品(愛知県半田市、川上浩一郎社長)の工場に今年納入され、実証実験を開始した。[1]
実証実験の結果は現在のところ良好で、今年中に本格販売を開始する。[1]
同社の自動車部品(ベベルギア)の不良発生率は0.002%。[1]
同社はAIを使った自律走行車(SDV)を開発し、発売は2020年を予定する。[1]
大塚浩史社長は「製造業がAIを取り入れるのは必然。今のパソコンのように、10年後にはどの企業も当たり前に使うものとなる」と述べている。[1]
工場の労力のうち、搬送が2割、加工が6割、検査が2割を占める。[1]
AIの実装にはJetson TX2を使用し、モデルの学習にはDGXを使用している。[2]
開発したAIは、POC(概念実証)において人と同じ速度・精度に達していることが確認された。[2]

なぜ重要か

武蔵精密工業のAI外販は、製造業におけるAI活用の具体的な事例を示すものだ。同社は検査と搬送という付加価値を生みづらい工程を自動化することで、従業員をより創造的な業務へシフトさせることを目指している。また、AIが今後10年で産業インフラになるとの見通しは、製造業全体の方向性を示唆している。